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2024.08.08更新

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EVPとは?タレント人材獲得のフレームワーク「WORCS」をおさえよ【前編】

人材獲得競争がますます激しくなる中、採用マーケティングの核となる考え方として「EVP(Employee Value Proposition)」が注目されています。

一方で、日本ではまだまだ本格的に自社のEVPを設計し、採用マーケティングに取り組んでいる会社は少ないのではないでしょうか。

今回は、採用マーケティングの第一歩となるEVPについて、定義から活用方法までご紹介します。そして、本記事でお伝えするEVPのフレームワーク「WORCS」を使って実際にEVPの設計を開始することをおすすめします。

EVPとは

EVPとは、「Employee Value Proposition(エンプロイー・バリュー・プロポジション)」のことで、従業員価値提案という意味です。企業が従業員に提供できる価値を言語化するものになります。

従来は「Employee Branding(エンプロイー・ブランディング)」、つまり採用ブランディングを定義することのほうが一般的でした。しかし、候補者が企業に抱くブランドイメージでいうと、「大手だから福利厚生が充実していそう」「若手から活躍できそう」など、やや抽象的になってしまいます。

EVPは、よりその会社で働く従業員の具体的なメリットが提示されているものです。候補者が抱くブランドイメージとは異なり、社内の従業員に対して提供しているリアルな価値と、社外の候補者に対して発信する価値を一貫して設計していくことが重要なポイントになります。

EVPが注目される背景

昨今EVPがより注目されるようになった背景は2つあります。

雇用の流動性が高まっている

一つは、終身雇用が崩壊して雇用の流動性が高まっていることです。これまでは新卒一括採用からの終身雇用が前提だったため、学生に対して企業の認知と各社のブランドイメージを伝えることができれば、人材を確保できた時代でした。

転職が当たり前になった今は、社内の従業員にも常に「この企業であなたが働く意味」を提供し続ける必要性が増してきています。そして、社外の候補者にも「この企業が何を提供してくれるのか」をよりリアルな価値として伝えなければ、数ある会社の中から選んでもらうことはできません。

ソーシャルメディアによるクチコミが増加している

もう一つは、ソーシャルメディアが利用される中で、リアルな情報がどんどん広がっていることです。転職のクチコミサイトも盛り上がりを見せ、知人・友人を通じて会社の情報を集めることも当たり前になっています。

たとえ求人広告でいいことを書いたとしても、実際に入社してギャップがあれば、それが瞬く間に広まってしまう世の中です。ただ良いブランドイメージを作り上げるよりも、従業員に提供している価値と一貫性を持って候補者に発信することが求められているのです。

EVPを設計することは企業にどんなメリットがあるのか

EVPを設計することのメリットとしては、「優秀な人材の獲得」や「人材流出の防止」があげられます。さらに、より深い意義でいうと、企業の競争力が上がることで企業価値の向上につながると考えています。

人的資本経営の推進

昨今、日本でも人的資本経営の必要性が叫ばれる中、会社を構成する要素の中でも「人的資本」の価値が高まっています。その人的資本を獲得し、維持するためのブランドポジションの核となるのがEVPだと言えます。

例えば、マーケティングにおいては商品のブランドポジションを定めて、商品開発から販売、ユーザーサポートまで一貫性を持って設計されていると思います。同じように、人事制度や採用についても、一貫した価値を定めて設計していくことが重要なのです。

会社のスタンスに一貫性があると従業員のエンゲージメントも高まりますし、求人広告で書いていることから人事制度や従業員のスタンス含めて全て一貫しているほうが候補者から見ても信頼が持てるでしょう。自社は従業員に対してどのような価値を提供するのかを定義することで、一貫性をもって人的資本経営を推進していくことができます。

優秀な人材の獲得

昨今ますます人材獲得競争が激しくなっています。従来のようにマスに対して社格や事業内容だけを伝えても、採用に結びつかないケースが出てきていると思います。有効求人倍率が高騰して売り手市場が進むなかでは、候補者が会社に対して求めることもより多様化が進んでいます。文化や人に惹かれる人もいますし、報酬やキャリア、成長機会を求める人もいます。営業職やエンジニアなどそれぞれの職種でもさらに求めるものが複雑になっているのです。

そのように多様化が進む中では、候補者の志向性にあわせて魅力付けする必要があります。EVPを設計すると、会社のコアとなる一貫性を保ちつつ、ターゲットごとに訴求する魅力を使い分けしやすくなります。候補者の志向性にあわせてコミュニケーションを取ることで、採用の優位性を担保することができるでしょう。

人材流出の防止

社内の従業員に対する価値を定めることは、もちろん人材流出の防止にもつながります。EVPを作る過程で新たに必要な人事制度が見つかることもあるでしょう。そのようにEVPを定めながら一貫性をもって従業員に価値を提供し、そして従業員体験を高める施策を見直していくことで、エンゲージメント向上にも寄与します。

EVPのフレームワーク「WORCS」とは

ここまででEVPの重要性をお伝えしてきましたが、実際にEVPを設計するにあたって、当社の提唱する「WORCS(ワークス)」というEVPのフレームワークを紹介します。

特に人材獲得競争の激化する中途採用においてコアとなるEVPについて、網羅性をもって整理したのが「WORCS」で頭文字を取った5つの要素になります。これらの要素をおさえて自社独自のEVPを定めることをおすすめします。

Strategy(事業・戦略)

一番コアとなるのが事業や戦略です。会社の規模やマーケットポジション、社会的信頼も魅力の一つ。パーパス経営が注目される中では市場での存在意義や社会貢献性も重要ですし、市場の成長性や顧客からの評価も欠かせません。

Culture(文化・人)

共通のゴールに向かってどんなチームが組成されているのか。テレワークにおいても社内の信頼や人と人との関係性はより重要性が高まっています。どういうバックグラウンドの人が多いのか、どんな人がマネジャー・リーダーになっているのかなども企業の特徴を表します。

Rewards(報酬・ベネフィット)

優秀な人材の獲得のために賃金の引き上げも重要な手段です。給与や賞与に加えて、さまざまな手当や保障、休暇制度などもベネフィットの一つです。

Opportunity(機会・キャリア)

会社に依存せず個人でスキルアップしていくことが求められる時代において、この会社での成長機会やキャリアアップがどれだけ見込めるかを重視する人も増えているでしょう。若手がどれだけ活躍できるか、最初の職種からどのようなキャリアパスがあるか。昇進率なども分かりやすい指標でしょう。

Work Environment(はたらく環境)

最後にはたらく環境です。テレワークも当たり前になった世の中で、きれいなオフィスのみでなく、出社率やテレワークでのコミュニケーション手段を気にする人も増えているでしょう。ワークライフバランスや育休取得の比率も会社を選ぶ重要なポイントです。

以上が「WORCS」のフレームワークです。EVPの設計で重要になるのは、自社のコアと紐づけて一貫性を保つことと、これら5つの網羅性を担保することです。従業員や候補者によってそれぞれ重視するポイントが違うため、5つ全てにおいて要素を洗い出して整理することが求められます。

*補足*

「WORCS」のEVPフレームワークは、新卒採用で活用されるフレームワークの「4P」とは役割が異なります。「4P」は主に新卒採用で候補者の志向を4タイプに大別してブランドイメージを整理するものとして有効です。一方で、昨今の中途採用では候補者のバックグラウンドもニーズも細分化しているため、より具体的でリアルな価値をEVPフレームワークの「WORCS」として落とし込むことをおすすめしています。

採用マーケティングは、EVP設計からはじめる         

今回は、人材獲得競争がますます激しくなる中で採用マーケティングの核となる考え方として「EVP(Employee Value Proposition)」についてご紹介しました。

EVPのフレームワーク「WORCS」をもとに、日本の会社の中でもいち早くEVPの設計に手をつけてみてはいかがでしょうか。人材の獲得と流出防止のみでなく、企業価値の向上に寄与する重要な指針となるでしょう。

下記資料では、EVPのフレームワーク「WORCS」や、
具体的な企業事例をピックアップし、EVP策定事例を紹介しています。

後編では、EVPの設計・活用方法やレッドブルの活用事例についてご紹介します。

監修者情報

監修 | TalentX Lab.編集部
この記事は株式会社TalentXが運営するTalentX Lab.の編集部が監修しています。TalentX Lab.は株式会社TalentXが運営するタレントアクイジションを科学するメディアです。自社の採用戦略を設計し、転職潜在層から応募獲得、魅力付け、入社後活躍につなげるためのタレントアクイジション事例やノウハウを発信しています。記事内容にご質問などがございましたら、こちらよりご連絡ください。

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