
TalentXは2025年7月28日(月)、「タレントアクイジション」をテーマに据えた日本初*の大型イベント「Talent Acquisition Conference 2025」を開催しました。当日は約350社、約400名の企業の役員、採用ご担当者の方々にご参加いただき、大盛況となりました。本記事では、日本最大級の「タレントアクイジション」のカンファレンス開催模様をレポートします。
(*当社調べ/2025年6月までに「タレントアクイジション」を冠にオンライン/オフラインで同時開催した大型イベント)
なぜ今「タレントアクイジション」なのか──350社が集う日本最大級のカンファレンス

■イベント概要
「Talent Acquisition Conference 2025」は、激化する人材獲得競争に対応すべく、「タレントアクイジション」という新たな採用の概念とその重要性を広く発信し、日本の採用マーケティングの未来をともに考える場として開催されました。
日本は労働人口の減少や価値観の多様化、採用市場の構造的変化によって従来の採用活動では人材を惹きつけづらくなっています。潜在的な転職希望者に対してマーケティング思考を取り入れ、戦略的にアプローチする「タレントアクイジション(優秀な人材獲得)」の重要性が高まっています。
本イベントでは、リファラル採用やタレントプール、採用ブランディングなどを実践・検討する企業の役員や採用担当者に向けて、学びと気づきを得られる場を創出。さらには、採用を「単発的な充足活動」ではなく、「Attract(惹きつける)」「Nurture(関係を築く)」「Engage(信頼でつなぐ)」という新たな採用戦略のフレームを示しました。
イベント名:Talent Acquisition Conference 2025
日時:2025年7月28日(月) 15:00~18:00
URL:https://mytalent.jp/taconference2025/
主催:株式会社TalentX
Opening Session
株式会社TalentX 代表取締役社長 鈴木 貴史

冒頭、TalentX代表・鈴木 貴史より、「なぜ今、日本にタレントアクイジションが必要なのか」について講演いたしました。
鈴木は、現在の日本が抱える構造的なミスマッチを指摘しました。「現在、日本では労働人口が減少する一方で、求人数は増加しています。企業の成長にとって、採用は今や戦略的な意味を持つ経営レベルの重要テーマになりつつある。」と強調しました。
「さらに、グローバルで注目されているタレントアクイジションの概念をそのまま日本に導入するのではなく、日本独自の採用文化に合わせてローカライズする必要があります。」と述べ、戦わない採用モデルを提唱しました。
TalentXではこれを採用をマーケティングに転換するプロセスとして捉えています。

「その鍵となるのが、SNSやオウンドメディアを介して潜在層にマーケティングを行う『Attract(惹きつける)』、接点を持った採用候補者に対して中長期的にファン化を促す『Nurture(関係を築く)』、入社後はアンバサダーとしてリファラルを推進する『Engage(信頼でつなぐ)』という三つのステップです。これは単なる手法論ではなく、候補者との中長期的な関係構築を前提とした、新たな採用戦略のフレームでもあります。」
最後に、「タレントアクイジション」を科学的に推進するため、AIを活用したプロダクトのアップデートにも触れ、「多くの企業と併走しながら、採用の未来を共につくっていきたい」と語りました。
「Myシリーズ」で実現する「タレントアクイジション」──先進企業によるライトニングトーク
続いて、「Attract」「Nurture」「Engage」という「タレントアクイジション」の考え方を実践する先進企業3社が登壇。自社の採用活動における具体的な取り組みや、その裏側について詳しく語っていただきました。
三井住友海上火災保険株式会社様は「MyTalent」と「MyBrand」を掛け合わせた採用ブランディング、株式会社ニチイ学館様は「MyTalent」を活用したタレントプール採用、積水ハウス株式会社様は「MyRefer」を活用したリファラル採用の事例をそれぞれ発表しました。

【Attract】オウンドメディアを活用したタレントネットワーク戦略
三井住友海上火災保険株式会社 様
三井住友海上火災保険様は、オウンドメディアとタレントプールを掛け合わせた独自の採用プラットフォーム「MSタレントネットワーク」を構築しています。過去の辞退者やイベント参加者、アルムナイ、リファラル登録者などを人材資産として捉え、中長期的な関係構築を行う“循環型タレントプール”として運用。運用開始から1年半で登録者数は5,000名を超え、将来的な採用基盤の構築が着実に進んでいます。
また、採用オウンドメディア「MS Story」では、社員のリアルな姿や仕事の魅力を週1本のペースで発信。候補者の関心フェーズに合わせた情報提供により、選考中の候補者にもポジティブな影響を与えるとともに、社内のエンゲージメント向上にも寄与しています。
相互の関連性がある「MyTalent」と「MyBrand」の連携で、「MSタレントネットワーク」登録者向けに限定ページを作成・案内したことで、候補者からの反応が向上するなど、着実な成果も見え始めています。今後は、こうした一連の取り組みをさらに発展させ、足元の採用成果だけでなく、将来に向けた人材資産の形成を目指していきたいと語られました。
【Nurture】候補者データを活用したナーチャリング戦略
株式会社ニチイ学館 様
ニチイ学館様は、選考辞退者、元社員、自社サイト訪問者、自社の講座参加者など、多様な接点を持った人材をタレントプールに登録し、運用開始から14か月で登録者数約3万人まで拡大、約350名の採用決定を創出しています。
採用候補者の保有資格や居住地といった属性に応じて個別最適化したコンテンツ配信と、アンケート結果や、「MyTalent」独自のスコアリングを活用し、転職意向が高まったタイミングでのアプローチという2つのポイントで、候補者の関心を継続的に高めるナーチャリング施策を実行しています。
その結果、タレントプール経由での入社決定者のうち、約40%が登録から2か月〜12か月で採用決定に至っており、中長期的な候補者接点の重要性を示しています。
また、介護業界における深刻な人材不足に対しても、採用活動にとどまらない広い視点で取り組みを進めています。ニチイ学館様は、資格取得講座によって介護従事者の裾野を広げる取り組みに加え、業界の現状を社会に正しく伝えることを重視しています。介護職の価値や、やりがいを広く発信することで、介護職の理解と関心を高め、将来的な人材確保につなげる姿勢を重視しています。
さらに、入社予定者だけでなく「今働いている人たちをどれだけ大切にできるか」という観点から、働きやすい職場環境づくりにも注力。足元の採用ニーズへの対応に加え、「業界全体への貢献」と「社内における定着と満足度の向上」という2つの軸を重視しながら、持続的な取り組みを進めていきたいと語られました。
【Engage】社員が自発的に動くリファラル採用の仕掛け
積水ハウス株式会社 様
積水ハウス様は、2022年より「MyRefer」を導入し、従来のリファラル採用を上回る規模での採用を実現しています。導入にあたり、全社レベルの会議体でのアナウンス、注力部門へのアプローチとして技術系の経営層からのメッセージ動画、また多くのリファラル事例やQ&Aを共有することで、導入から3か月で対象従業員の36%が「MyRefer」に登録しました。
また、キャリア入社者へのオンボーディングプログラムの一環として「MyRefer」への登録依頼と操作説明を実施。既存従業員に対しては、全体への告知に加えてオートメーション機能を活用した未登録者への登録促進を重ねて実施し、オートメーション機能導入前後で新規ログインリクルーター数はおよそ6倍に伸長。
積水ハウス様は、「わが家を世界一幸せな場所にする」というグローバルビジョンのもと、社員が幸せに働ける環境づくりを重視する姿勢があるようです。
加えて、企業理念である「人間愛」にも通ずる、「社員が働く環境に満足しているからこそ、自然と大切な人にも紹介したい」という気持ちが生まれているのかもしれません。こうした価値観が、インセンティブに頼らずともリファラルが活性化している一因となっている可能性があります。
このような企業文化の中で、社員一人ひとりの“想い”がリファラルの推進力となっている点が、同社の特徴として語られました。
「タレントアクイジション」の戦略実装が生む経営インパクト──有識者によるスペシャルセッション
Special Session|鈴木 貴史 × 小野 壮彦 氏 × 曽和 利光 氏

スペシャルセッションでは「タレントアクイジション」をテーマに、特に日本においてなぜ浸透が難しいのか、そして今後どのように浸透していくかについて、株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ ディレクター 小野 壮彦氏と株式会社人材研究所 代表取締役社長 曽和 利光氏をお招きしてディスカッションを行いました。
日本において「タレントアクイジション」が浸透しづらい背景として、いくつかの課題が指摘されました。主な要因として、経済合理性の欠如、採用担当者のリソース不足、中長期戦略への意識の希薄さ、さらに辞退者や不合格者、退職者を採用することへの心理的障壁などが挙げられました。
一方で、小野氏より「人事部門から独立した営業・マーケティング経験者をリーダーとする専門チームの設置が重要である」と強調されました。鈴木は、「また、経営層や現場の当事者意識の醸成、求める人物像の解像度を高めるデータ活用を行う必要がある。そして、企業は「選ぶ側」ではなく「選ばれる側」であるという視点を持ち、候補者個人を尊重する姿勢が求められます」と語りました。
曽和氏は、「タレントアクイジション」の可能性として、「企業のリーダー層の質が向上することで、経営の根幹が強化され、組織の生産性が向上する。また、これにより人事機能の価値向上、さらには見過ごされがちだった人材に新たな活躍機会を提供することができる」という点も強調されました。
セッションの最後では、登壇者三名から「タレントアクイジションは採用領域の変革にとどまらず、日本企業と社会全体の生産性と成長力を高める鍵になる」とのメッセージでセッションは締めくくられ、本カンファレンスは大盛況で幕を閉じました。
ご参加いただいた方からは登壇内容への共感や、明日からのアクションを見据えた前向きな声が数多くあがり、「タレントアクイジション」の概念が、これからの採用を変革する実践的なアプローチとして、多くの方々に受け止められたことを実感できる場となりました。
▼イベント参加者の声
- タレントアクイジションの可能性と必要性が理解できた
- タレントアクイジションの現在地や未来について解像度が上がった
- 日本の社会に人事が良い影響を与えられることや、もっとすべきことがたくさんあることを知り、明日からのモチベーションにも繋がった
- 他社様の事例を伺い、リファラル採用・TA、いずれにしても経営からのトップダウンが必要であるということを再認識できた
なお、本カンファレンスのオープニングセッション、スペシャルセッションの詳しい模様は、次回以降のレポートでご紹介いたしますので、ご期待ください。
編集後記
今回は「タレントアクイジション」をテーマに据えた日本初の大型イベント「Talent Acquisition Conference 2025」のレポートをお届けしました。採用マーケティングを推進する350社の人事の皆さまが一堂に会し、タレントアクイジションの最前線に触れる機会となった本イベント。会場では、セッション内容をきっかけに、参加者同士が自然に名刺交換や意見交換を行う様子が多く見られ、共通課題への共感や学び合いが生まれていました。
「タレントアクイジション」は「採用」そのものを変革する概念であり、人材確保にとどまらず、一人ひとりがより良い環境で力を発揮できる社会を実現する鍵となります。TalentXは、各プロダクトの提供を通じて、その概念と手法を日本に根づかせ、持続可能な人材戦略の実装を後押ししていきます。
監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
この記事は株式会社TalentXが運営するTalentX Lab.の編集部が監修しています。TalentX Lab.は株式会社TalentXが運営するタレントアクイジションを科学するメディアです。自社の採用戦略を設計し、転職潜在層から応募獲得、魅力付け、入社後活躍につなげるためのタレントアクイジション事例やノウハウを発信しています。記事内容にご質問などがございましたら、こちらよりご連絡ください。