鈴木 貴史(スズキ タカフミ) | |
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パーソルキャリア株式会社(旧社名:株式会社インテリジェンス)入社後、 |
「MyRefer(マイリファー)」とは、2015年9月にリリースされたWEBサービスで、国内最大規模のリファラル採用ツール※1です。
本サービスのプロデューサー・事業責任者である鈴木貴史(スズキ タカフミ)氏にお話を伺いました。
- ※1:リファラル採用
- リファラル採用とは、社員の知人や友人を紹介・推薦してもらい、選考をする採用手法のこと。
パーソルキャリアの社内ベンチャーとして立ち上がったMyRefer
何故、パーソルキャリアで新規事業の立上げをされたのですか?
私自身、もともと世の中のインフラとなるような事業を創りたいと考えており、将来的には起業を視野に入れてパーソルキャリアに入社したという経緯があります。
その延長線上で、パーソルキャリアのリソースを活用して社内で新規事業を創るベンチャー制度"チャレンジファンド(現0to1 ※1)"の存在を認識しており、3年以内にこの制度を利用して事業を創ろうと考えておりました。
MyReferは私が2014年度の0to1にて提案したサービスであり、パーソルキャリア社内から数百の事業計画を勝ち抜き、大型の社内出資を得て、ゼロベースから開発されたリファラルリクルーティングです。
- ※1:「0to1(ゼロトゥワン)」
- 2011年より始まった社内ファンド制度。入社1年目からでも経営者として事業立ち上げのチャンスを提供する社内ファンド制度であり、これまでにi-common、新卒紹介、MyRefer 、MIIDASなどの複数事業が誕生している。
MyRefer立ち上げの経緯
これまでの簡単なご経歴とMyRefer立ち上げの経緯を教えてください。
パーソルキャリアに入社してからはIT・Web系業界の中途採用コンサルタントとして従事していました。サービス開発をするうえでは顧客の声と、社内でチャンスを勝ち取るうえでの圧倒的な実績が必要だということで、寝食を問わず夢中でコミットしていたことを記憶しています。
結果的に1年目はパーソルキャリア全社の新人賞をいただき、その後大手Web・コンサル系企業様を中心の企画コンサルティング営業をした後に2年目後半には同期250名中最速でマネジメント業務を経験させていただきました。その経験と実績を踏まえ、2014年度の0to1(チャレンジファンド)にエントリー、今の事業を立ち上げたという経緯です。現在はサービスをリリースして1年3か月を迎え、攻めの事業推進でより市場を広げようというタイミングです。
これまで従業員数100,000名を超える大手企業様から3名のスタートアップ企業様まで幅広くサポートさせていただきましたが、今の日本の採用・転職市場は、本当の意味での「最適なマッチング」が生まれていないこと、また多くの企業は、大事な採用戦略や人材選定を「エージェント任せ」にしてしまっているケースが多数見受けられ「持続可能性がない」ことに課題認識を持っていました。
そもそも、
- 自社の事業戦略を踏まえたうえで、どの候補者を採用すべきなのか
- 採用競合の動きを踏まえ、どのような訴求をすべきなのか
- どのような条件でクロージングをすべきなのか
といった採用戦略の根幹を担う情報が外部頼りになっているケースが多く、エージェント担当が変わると急に推薦が上がってこなくなる、人事担当者が変わった瞬間なかなか採用ができなくなる、といったような持続可能性がない一過性の採用戦略を多々見てきました。
そこから、「人と人との繋がりを活用した転職・採用」の意義を感じ、そのインフラを創れないかと考えたことがきっかけです。
大手の人材会社にいるからこそ、現状の採用の在り方に課題認識があったんですね。
勿論全ての企業様に課題認識を持っていたわけでもありませんし、そもそも今のエージェントの在り方を形成して来たのは、我々のような大手人材会社でもあるので責任を感じていました。
また、人事もミッションとして採用数(KPI)の達成を求められるため致し方ないとは思いますが、エージェントに言われた通り募集要項の対象範囲を広げ、採用出来そうな人を採用してしまっているケースは多分にしてある様に感じておりました。
経営資源の重要な要素の1つである「ヒト」の採用が、エージェントの情報や思惑で動かされてしまうことは、企業様としても、また、転職する候補者にとっても良くないと考え、「企業様と転職候補者双方が、最も互いを理解し合った上で出会える新たな手法はないのか?」を検討するようになったのです。
そのような中で浮かんだアイディアが、
「人と人の繋がりを活用した転職・採用活動で、持続可能かつ本質的なマッチングを生み出す」
と言うものでした。
実は最初に構想していたのは、リファラルリクルーティングでは無く、自社の社員のみでなく世の中の人間全てをエージェント化して、人と人との繋がりのみで転職・採用を完結させるクラウドリクルーティング型のサービスでした。(以下、クラウドリクルーティング)
従来のようなエージェントや転職サイトを使って転職活動をする世界感から、個人をエージェント化することにより、まずは身近な友人に相談をして繋がりで転職をする世界観を妄想し、「最も自分を知る友人が、自分の転職先を探してくれるサービスはどうだろう?」と考えました。ちょうど今から2年前になりますが、当時はリファラルリクルーティングの存在を知らなかったこともあり、先に構想したのがこの仕組みだったのです。
ただ、ビジネスモデルを検証していくなかで課題認識を持ち始めました。
日本には職業安定法第40条の縛りがあり、個人がエージェントとして紹介活動を行ううえでのハードルが大きいこと、また、紹介者が友人の理解はしていても、転職先である企業側の理解が浅い中で転職先を紹介されても、双方を理解した上での本質的なマッチングでは無いと感じました。
改めて、「人と人との繋がりを生かして本質的なマッチングを創出できる方法はないか?」と考えるなかで、既存の人材紹介や、クラウドリクルーティングの様に、自分と紹介先企業のリアルを知らない第三者から転職先を紹介して貰うのでは無く、「信頼する自社社員が、友人に自社をおすすめすることで、自社にマッチする友人を連れてくる」というリファラルリクルーティングに行き着いたのです。
当時2014年は日本では聞き慣れていない言葉でしたが、GoogleのWork・rules!という書籍にもあるように、米国では約85%の企業がリファラルリクルーティングを導入しており、過去10年を見ても最も取り入れられている採用手法であることを知りました。
米国と日本とでは転職文化や生涯の転職回数も異なるため、一概には言えませんが、「自分の会社を最も良く知る社員が、友人を連れてきてくれたら、互いを深く理解し合える本質的なマッチングになる」と考え、大手人材会社として業界のインフラを担っている我々がこのルールを創ろうとMyReferを立ち上げたのです。
日系企業がゼロベースで社員紹介制度を創り、浸透させることができるMyRefer
従来のマッチング・企業の採用活動の在り方に課題認識を感じ、社員紹介サービスのMyReferを立ち上げたとのことですが、特にどのようなポイントを意識されましたか?
社員紹介制度(以下、リファラル採用)は、日本の80%ほどの企業様にとって新しいチャレンジになります。
また、日本にはそもそも現場社員が採用活動を主体的に行うという文化もないため、「一過性の促進ではなく、中長期的にリファラル採用を根付かせる仕組み」にこだわりました。
MyReferではリファラル採用をゼロベースで仕組化できる機能を備えており、かつ、人事が必死で告知しなくとも半自動で組織にリクルーティング情報を共有できる設計となっております。
また、MyReferは制度の仕組化、戦略的に促進するサービスとして提供させていただくだけではなく、各企業に一人ずつサポート担当を付けています。
「リファラル採用のインセンティブ設計をどうしたら良いのか?」という状態からサポートをしており、導入前の制度構築、導入時における現場への広報、導入後の運用と、人事と伴走しながらリファラル採用を浸透させています。
リファラル採用を促進するための起爆剤ツールではなく、仕組化・浸透させるということが違うのですね。その他、MyReferのサービス開発においてのこだわりはありますか?
人事と社員側双方において、シンプルで工数の掛からない仕組み作りを追求しています。
例えば、DODAのシステムやATSとシームレスに連携をすることが可能になっており、人事としても二重管理にならずにタイムリーに全社員へ求人を告知できるので、負荷なく継続的に運用できるような設計にしております。また、社員に対しては「いつでもどこでも求人を確認し、ワンクリックで友人にシェアできる仕組みを提供することで、社員紹介を習慣化できる」ような設計となっております。
実は、我々がサポートしている取引企業様からアンケートを取った結果、社員紹介は80%近くがプライベートシーンで起こることが判明しました。つまり、社員と友人の方が1対1で、たまたまお会いしたタイミング(飲み会やお茶をしているなどのシーン)で、偶発的に、「最近どう?」という話の流れから、自社の募集を思い出し、求人をシェアするという流れであることが分かりました。
簡素な設計や仕組みを用意するだけでは中長期的な浸透や文化醸成には不十分だと考え、プライベートシーンでも「即時的に必要な情報が分かり、即時的に友人に紹介できるよう」スマートフォンでの利用を前提とした設計を心がけました。
リファラルツールのなかで、スマートフォンでの利用を前提としたサービスは国内では初となります。
いつでもどこでも自社の求人情報を閲覧することができ、友人へ求人情報を伝え、その場で応募意志を取れるような、「自然と、社員紹介を自分事化させる」そういった思想で開発をしています。
強制ではなく、自分事化してもらうことで自然なシーンで利用してもらうということですね。実際にMyReferを活用してリファラル採用をスケールさせるうえで、上手く進んでいる会社、失敗する会社の傾向などありますでしょうか?
リファラル採用を浸透させるためには、社員に認知をして貰い、行動に移すまでの継続的な働きかけが出来る力、つまり、人事の巻き込む力は非常に重要だと思います。
具体的な例を挙げると・・・
- なぜリファラル採用を設け採用活動を始めるのか、事業課題に紐づく背景から説明をし、社員に働きかけが出来ること
- 協力すべき管理職の方々に積極的な姿勢が見えない時には、その理由を知ろうと働かけられること
- 単なるタスクの依頼だけではなく、依頼したことに対する協力者が現れた際には賞賛をし、現状の状況を定期的に伝える働きかけをする
など、自社の文化や状況に合わせ、各社員の巻き込み方を科学出来る人事は、早期にリファラル採用を社内に浸透させることに成功している印象があります。
実際にMyRefer導入企業においては、社員の90%以上が社員紹介へ協力してくれている企業様もあります。MyReferではサービス導入時に、顧客の従業員数や業界問いません。社員へのリファラル採用の浸透や運用のサポートに至るまで、人事と伴走することを大事にしています。
失敗する企業様の事例は上記とは逆になりますが、やはりリファラル採用を単なる依頼や要望で留まる企業ではないでしょうか。
無機質にタスクだけを依頼し、紹介した友人の状況が分からず、単なるメールでの求人発信に留まる一過性の仕組みでは、社員も大切な友人を紹介することに不安に感じるでしょうし、協力したいという気持ちも起こりません。文化を醸成するという点で、リファラル採用を促進するうえでの、人事の振る舞い方や取り組む姿勢は非常に重要な要素かと思います。
転職・採用市場のマッチングの在り方を変えていきたい
ありがとうございます!最後に、今後のMyReferの世界観を教えて下さい。
人と人との繋がりを生かした採用・転職の概念を日本に浸透させ、雇用の最適配置と流動化を実現することが我々のミッションです。
現在、MyReferは導入企業約350社に至っており(2017年10月時点)、会社規模も様々で、大手完成車メーカーから社員数15名のスタートアップ企業までさまざまで、また、業界もメーカー系、外食系、IT系、医療系、サービス系、福祉系など多岐に渡ります。有り難いことに開発から2年を経て、リファラル市場で国内最多の導入実績を有するに至りました。一方で、日本では新しい取組みであるため、社員の方が当たり前のように友人を誘い、仲間を連れてくる文化の醸成にはまだまだ至っておりません。
また、人事の方も
- 日々忙しい社員に採用をお願いするのは気が引ける
- 報酬を設定しようにも、職業安定法第40条の観点から反対されてしまう
- 企業のロイヤルティが低いため成功イメージが無い
- プライベートな時間に採用活動をしていると思われたくない
- 既存の採用手法を回すだけで手一杯で新しい事へチャレンジする余裕がない
など、日本ならではの法律的なハードルや慣習、考えが強く、なかなか前向きにチャレンジし辛い状況ではあります。このような会社としての考え方や人事の人員体制に、社員紹介制度の導入が左右されてしまうケースもあるため、MyReferは単なるクラウドサービスの提供者としてではなく、企業のリファラル採用を根幹からサポートするパートナーとしての責任を持っております。
人事が中長期的な目線で会社を捉え、外部エージェント頼りにならずに自社リソースのみで採用が完結するような持続可能な採用力を付けること。そして、候補者は自分に最もマッチする企業かを判断するために、転職サイトではなく、企業で働く友人から生の情報を得て転職活動をすること。
このような、持続可能かつ本質的なマッチングを支援することがMyReferの提供価値です。MyReferを通じて人と人との繋がりを生かしたリファラル採用・転職の概念を日本に浸透させ、転職・採用市場のマッチングの在り方を変えていきたいと考えております。
監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
この記事は株式会社TalentXが運営するTalentX Lab.の編集部が監修しています。TalentX Lab.は株式会社TalentXが運営するタレントアクイジションを科学するメディアです。自社の採用戦略を設計し、転職潜在層から応募獲得、魅力付け、入社後活躍につなげるためのタレントアクイジション事例やノウハウを発信しています。記事内容にご質問などがございましたら、こちらよりご連絡ください。