
2025年7月28日(月)に開催された「Talent Acquisition Conference 2025」。その幕開けとして行われたOpening Sessionでは、TalentX代表・鈴木が登壇し、「採用の未来はマーケティングで変わる」をテーマに講演を行いました。本記事では、その内容を詳しくご紹介します。
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https://mytalent.jp/lab/article_talent_acquisition_conference2025_vol1/
採用の未来はマーケティングで変わる
~「リクルーティング」から「タレントアクイジション」へ~

「採用」は日本社会でとり残された重要課題
現在、日本は労働人口の減少や人材獲得競争の激化に直面しており、2025年新卒採用の充足率は約70%、キャリア採用ではわずか42%と、採用の難易度が年々高まっています。さらに、経団連加盟企業の将来的な経営リスクに関するアンケートでは、約50%の経営者が人材獲得が経営の最重要課題であると述べています。このように、日本企業は従来の採用活動から脱却すべき時期を迎えていると言えます。

これまで、日本は高度経済成長期から「失われた30年」と呼ばれる期間において、労働人口、経済成長は安定しておりました。そして労働集約型産業を中心に、労働力確保を主目的とした採用活動が展開されてきました。新卒一括採用をベースとした終身雇用、欠員補充型キャリア採用が典型例です。
現在、労働人口は減少を余儀なくされて、経済成長は停滞しています。このような中で事業構造の転換に向け、各社でジョブ型雇用や、成果重視の人事制度へのアップデートが進められている一方、「採用」は従来と同じような手法を継続している企業様が、まだまだ日本には多く存在しております。「採用」は日本社会でとり残された課題と言えるでしょう。
日本独特の課題を打破する「採用」の抜本的アップデートが求められる
このような状況を打破するためには、日本独特の課題を捉えたアプローチが必要です。大きく2つの観点で説明させていただきます。
まず1点目は、転職潜在層へのアプローチです。日本は諸外国と比較して、雇用の流動性がそこまで高くない市場です。労働人口7,000万人のうち、1年間で転職する層は労働人口の約5%、約300万人に留まります。一方、潜在的に転職を希望している転職潜在層は1,000万人を突破していると言われています。いかにしてこの潜在層にアプローチするかが、一つの問いとなるでしょう。
2点目は、採用活動の生産性です。企業は、従業員の賃金を上げながらも利益を意識しなければなりません。その際、採用コスト増大も経営を圧迫する一因となります。当然、スカウトサービスや人材紹介サービス、広告サービスというのも非常に便利なサービスですが、日本は人材紹介の手数料が35%という水準です。例えば米国などでは15~20%が一般的で、日本の採用市場はコストが高くかかっていると考えております。
企業は潜在層にアプローチするため、既存の手法を見直し、新たな手法を用いながら事業成長に貢献できる人材を獲得していく必要があります。そのため、経営と人事部門が一体となり、中長期にわたって経営目標と連動した採用戦略、質を重視する考え方が、今日本においても求められていると考えております。

採用課題を解決に導く「タレントアクイジション」
そこで、「タレントアクイジション」が日本企業の採用のアップデートに重要な役割を果たします。
「タレントアクイジション」とは
中長期的に会社を成長させるために転職潜在層に対して、マーケティング思考を取り入れながら、戦略的にアプローチして競合他社とバッティングせずに人材を獲得する新たな概念
米国と日本では、採用におけるトレンドに10年ほどの時間差があると言われています。2013年頃「タレントアクイジション」という言葉が、米国の主要企業の経営会議で議論され始めました。
欠員が出てから人材を短期的に補充する「リクルーティング」に対し、「タレントアクイジション」は、将来の事業成長を見据えて必要な人材を定義し、ブランディングや母集団形成を行い、マッチしなかった人もタレントプールするなど、中長期にわたって人材を獲得します。当時の米国でこの活動が広く普及しました。

日本版タレントアクイジション推進モデル「戦わない採用モデル」とは

米国で普及した「タレントアクイジション」のフレームワークは、既にいくつか存在していますが、これらを日本にローカライズし、採用戦略として再定義する必要があると考えています。そのフレームワークが当社が提唱する「戦わない採用モデル」です。「Attract(惹きつける)」、「Nurture(関係を築く)」、「Engage(信頼でつなぐ)」の3つのステップを活用し持続的なアプローチをするモデルで、日本の「タレントアクイジション」において重要なポイントになります。

「Attract」は主に採用サイト、オウンドメディア、そして求人広告の制作となり、具体的なKPIとしては、コンテンツの閲覧数、サイトの訪問数、そこからの応募数となります。
「Nurture」では、そこから接点を持った潜在求職者をタレントプールとして蓄積し、そこに対してナーチャリングを行います。ここでは、ターゲット層のメールの開封率、そこからの反応率、コンバージョン数、そしてサイト訪問数といったものがKPIになるでしょう。
さらに「Engage」では、候補者が入社した後、自社のリファラル採用に参加し、新たな候補者を紹介していく、というサイクルです。ここでのKPIは、自社のリファラル採用への参加数、紹介数、声かけ数などがあげられます。このように「タレントアクイジション」全体を可視化するテクノロジーを活用して進めていくことが、活動の質を高める鍵になります。

採用DXプラットフォームがタレントアクイジションを加速させる
当社は採用DXプラットフォーム「Myシリーズ」で「Attract」、「Nurture」、「Engage」のプロセスを一貫して支援しています。これら3つのプロセスを効果的に連携させることが「タレントアクイジション」の推進にあたり、非常に重要となります。
例えばリファラル採用サービス「MyRefer」をご利用いただいている企業では、社員が紹介した潜在層の候補者が「MyTalent」にタレントプールとして登録されます。「MyTalent」では、リファラルに限らず、HP、エージェント、スカウトなど多様な経路の候補者データも資産として蓄積可能です。そこに対して「MyBrand」で作成した社員インタビューなどのコンテンツを「MyRefer」経由で社内に配信し、社員がSNSでシェアすることで、自社への共感を生む情報が自然と広がり、SEO効果も生まれます。
さらに、候補者が再びサイトを訪問した場合、その行動を検知し、「MyTalent」がAIによって個別にアプローチを提案する仕組みも備えています。「Myシリーズ」は、こうした一連の流れを一気通貫で支援しています。

今後はテクノロジーの進化とともに、AIの役割もますます重要になります。たとえば、MyTalentでは、登録された候補者のスキルや経歴情報をもとに、「この人は別ポジションやグループ会社の他職種にマッチするのではないか」といったサジェストをAIが提示する新機能のリリースを予定しています。
(※2025年8月1日「AI求人マッチング機能」をリリース)
労働人口の減少や経済成長の停滞が進む中で、日本の採用はこれまで取り残されてきました。その中で、採用活動をマーケティングに転換する「タレントアクイジション」が重要であり、これらを推進する上で「Attract」、「Nuture」、「Engage」の三位一体モデルが重要になると考えております。
本セッションの内容を踏まえた各社の先進的な事例や、有識者のセッションの様子はこちらよりご視聴いただけます。
▼Lightning Talk①【Attract】オウンドメディアを活用したタレントネットワーク戦略
登壇企業:三井住友海上火災保険株式会社 様
視聴はこちら:https://go.mytalent.jp/taconference2025_lt1_archive_input
▼Lightning Talk②【Nurture】候補者データを活用したナーチャリング戦略
登壇企業:株式会社ニチイ学館様
視聴はこちら:https://go.mytalent.jp/taconference2025_lt2_archive_input
▼Lightning Talk③【Engage】社員が自発的に動くリファラル採用の仕掛け
登壇企業:積水ハウス株式会社様
視聴はこちら:https://go.mytalent.jp/taconference2025_lt3_archive_input
▼Special Session:タレントアクイジションが導く経営価値とは
~採用は経営戦略の中核へ、人の力を”点”で終わらせない組織のつくり方~
登壇者:
株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ ディレクター 小野 壮彦 氏
株式会社人材研究所 代表取締役社長 曽和 利光 氏
株式会社TalentX 代表取締役社長 鈴木 貴史
視聴はこちら:https://go.mytalent.jp/taconference2025_ss_archive_input
▼イベント全体レポートはこちらからhttps://mytalent.jp/lab/article_talent_acquisition_conference2025_vol1/
監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
この記事は株式会社TalentXが運営するTalentX Lab.の編集部が監修しています。TalentX Lab.は株式会社TalentXが運営するタレントアクイジションを科学するメディアです。自社の採用戦略を設計し、転職潜在層から応募獲得、魅力付け、入社後活躍につなげるためのタレントアクイジション事例やノウハウを発信しています。記事内容にご質問などがございましたら、こちらよりご連絡ください。