こうした背景から注目を集めているのが、内定者に後輩や友人を紹介してもらう「内定者リファラル採用」です。「花とみどりを通じて、真に豊かな社会づくりに貢献する。」という企業理念のもと、フラワーショップやオンラインストア、ウェディングサービスを運営する花屋業界大手の日比谷花壇様は、20卒内定者と一緒にリファラル採用に取り組み、21卒内定者の20%が紹介経由で内定につながっています。
去る9月25日、内定者リファラル採用についてオンラインセミナーを行い、同社人事部の向江様、竹内様に詳しい成功事例を伺いました。今回は、そのセミナーレポートをお届けします。
株式会社日比谷花壇 | |
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従業員数: | 1,399名(2020年3月)※一部関連会社出向者含む |
事業概要: |
バンケット事業、フラワーショップ事業、法人事業、PPP事業 |
人事部副部長 向江 正智 氏(右) 人事部 竹内 美香 氏(左) |
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第一部 学生に会えない時代の新卒採用「内定者リファラル採用」とは
セミナーの冒頭では、MyReferのAccouting Conssultant国が登壇。22卒新卒採用の動向と内定者リファラル採用について説明しました。
22卒新卒採用の動向
株式会社MyRefer 国(以下 国):
まず22卒の新卒採用の動向についてですが、みなさまご存知の通り、対面型のイベントや説明会が自粛となり、オンライン化がどんどん進んでいます。しかし、なかなかオンラインでは学生と企業の相互理解が深まらず、魅力を伝えにくい状況です。
さらに22卒の学生は90%以上がインターンに参加意欲を示しており、1人当たり約8社へ参加することが見込まれています。インターンに参加してもらうだけでは、企業の差別化は難しくなっているのです。
オンライン化によって縦横のリアルな繋がりをなかなか作ることができないため、学生たちはTwitterなどSNSで就活用のアカウントを作って情報交換をする傾向にあります。
さらに、21卒の内定者に対する調査では、70%以上が就活の時に先輩に相談をしており、そして90%以上が後輩の就活相談に乗りたいという結果が出ています。
こうしたオンライン環境下こそリファラル採用は効果的です。一般的なインターンや求人媒体だけでなく、内定者や若手社員に自社のファンになってもらい、彼らに学生のコミュニティに対してリアルな情報を発信してもらうことが、非常に重要になります。
リファラル採用のあるべき姿とメリット
国:
我々が考えているリファラル採用のあるべき姿を説明いたします。従来型のリファラル採用はインセンティブを社員の方にお支払いするかわりに、半ば強制的に紹介をさせる手法となってしまっていました。しかし、我々は、内定者や社員が自発的に自社をお勧めしたいと思えるような意向醸成を行い、紹介したいと思える仕組みづくりしながら、リファラル採用を促進する形を“リファラル採用3.0”と定義しております。
国:
こうしてリファラル採用3.0を促進していくことによる4つのメリットを紹介します。
1つ目は、口コミによる母集団形成ができることです。自社のリアルな情報や、自社へ共感する想いを持っている内定者からの口コミによって、さまざまな学生のコミュニティにアプローチすることができます。
2つ目は、学生の見極めができることです。オンライン化によって候補者の情報を人事でインプットすることがなかなか難しくなりますが、リファラル採用では推薦者から候補者がどんな方か、推薦コメントを頂くことができるため、多角的な情報をもとに選考を進めることが可能になります。
3つ目は、マッチング率が高く、候補者の質が高いということです。リファラル採用による決定率は、求人広告の約20倍、人材紹介の約4倍というデータもあります。
そして最後の4つ目は、内定者のエンゲージメント向上です。リファラル採用では、内定者が後輩に対して自社の情報を「語る」機会を作ることになるため、そこで当事者意識が生まれてエンゲージメントが向上します。
以上が内定者リファラル採用についての概要です。この後、日比谷花壇様にお話を伺います。
第二部 日比谷花壇のリファラル採用~21卒内定者の20%が後輩紹介~
「花とみどりで、新しいビジネスへ挑戦する人」を求める日比谷花壇の新卒採用
株式会社日比谷花壇 向江氏(以下 向江氏):
日比谷花壇は、花とみどりの総合商社を標榜し、「花とみどりを通じて、真に豊かな社会づくりに貢献する。」という企業理念のもと、社会貢献性の高い事業を推進しています。
事業内容としては、フラワーショップやブライダルがメインですが、法人事業や、指定管理として公共施設を管理・運営する事業も行っています。また最近は、ドネーション事業として、下北沢にハンバーガーショップをオープンしました。そこはハンバーガー1食ご購入いただくごとに、アフリカの学校へ給食1食分を支援するという仕組みで運営しております。
新卒採用としては、「花とみどりで、新しいビジネスへ挑戦する人」と求める人物像として、毎年60~70名を採用しております。21卒はコロナ禍により、最終的に46名となりました。内訳としては、エリアや職種を限定しない「総合職正社員」で22名、勤務エリアが限定される「地域正社員」は24名です。そして、46名中11名、約20%がリファラル採用での内定者となります。
導入背景:お花屋のイメージで男性が集まりにくい。内定者のつながりで求める人材に
さっそく1つ目の質問です。なぜ、新卒採用で内定者リファラル採用を始めたのでしょうか?
向江氏:
もともと、リファラル採用は中途領域から始めました。当社は、母の日が1年で最も売上が伸びる時期です。そこに向けて短期ARの方を250名ほど採用していたのですが、非常に大きなコストがかかっていました。さらに、せっかく250名を採用したのに、少数ですが一日で来なくなるなんてことも…。そしてもう一つの課題が、知名度の低いエリアなど採用難易度の高いエリアがあったことでした。
こうした、コスト、マッチング率、そして採用難易度の課題を、MyReferを活用することで解決できないかと考え、まずは2018年7月より、地元で働きたいという志向性が高そうな福岡エリアから、スモールスタートで導入しました。
そこから徐々に成功事例を作って全社へ浸透させたいと考えたのですが、「中途より新卒の方が効果的なのかも」と考えるようになりました。当社は花屋というイメージが強く、女性の母集団は形成しやすいです。しかし、ナビサイトや説明会だけでは男性が集まりにくいことがあり、男性限定のイベントに出展するなどをして男性の母集団を形成していました。
それを、もし内定者リファラル採用の仕組みを導入できれば、今年内定につながった内定者のつながりから出会いのきっかけを作ってもらえるのではと考えたのです。お互いのマッチングにも、採用効率にもつながり、そして内定者のエンゲージメントが高まる期待もあったので、2019年7月より新卒採用でもリファラル採用をスタートしたのです。
展開方法:20 卒内定者と研修に取り組みながら、特別座談会や説明会へ後輩を招待
続いて2つ目の質問です。内定者にどうやってリファラル採用を展開しましたか?
株式会社日比谷花壇 竹内氏(以下 竹内氏):
20卒の内定者は、対面形式で10月と12月に研修を行いました。10月の研修からMyReferのアプリを使ってもらい、3月末までの半年間一緒にリファラル採用の活動を行いました。MyReferに21卒の学生に向けた特別イベントの求人などを用意して、それをSNSなどで後輩に紹介してもらうという仕組みです。
イベントの具体的な内容としては、ワンデーインターンシップへの優先招待や、先輩社員との特別座談会、特別選考につながる企業説明会など。せっかくご紹介いただくので、こちらのイベントに参加すると、選考の際に書類選考やグループディスカッション免除という特典を用意していました。
また、内定者には、後輩の紹介コメントを記載してもらっています。21卒の学生をイベントに招待し、かつ紹介コメントも記載してくれた内定者には、感謝の気持ちも込めてAmazonのクーポンを配布しました。少額ではありますが、内定者への感謝を伝えつつ小さなモチベーションにもつながったのではないかと感じています。
人事のマンパワーが限られている中で、座談会など特別イベントを運営するのは、工数的にも大変ではなかったでしょうか。
竹内氏:
座談会やワンデーインターンシップでは、人事だけではなく若手先輩社員2~3名にも協力をしてもらっています。当社には協力し合う風土があるため、現場の皆さんが快諾してくれています。お手伝いいただけることで、現場の声も直接学生に伝えることができるため、学生にとっても非常に良い機会になっているのではないでしょうか。
取り組みの工夫:日比谷花壇のファンを増やそう。内定者研修で横のつながりも
3つ目の質問です。内定者が自発的に紹介したくなるような仕組みをつくるため、どのような工夫をしましたか?
竹内氏:
内定者に対して、リファラル採用について話す時に、「日比谷花壇のファンを増やしましょう。そして、日本一就活生に寄り添う企業を目指しましょう」というメッセージを伝えました。
また、ただリファラル採用をしようと内定者に伝えるだけでは、「やらされている」というネガティブなイメージを持つ人もいるかもしれません。そこで、「社会人の準備の研修として取り組むプロジェクト」という位置づけで、内定者研修の一環として実施したのです。
このリファラル採用プロジェクトを通じて内定者自身が目標設定や、PDCA、コミュニケーションスキルといった、社会人として必要なスキルを学生のうちに蓄えることにより、万全の状態で4月の入社日を迎えられるようにします。内定者研修でスキルをインプットし、リファラル採用プロジェクトでアウトプットするという流れで行いました。
具体的には、内定者5~6名単位のチームで活動をしてもらいました。PDCAやロジカルコミュニケーションなどさまざまなワークショップを通してスキルをインプットし、日比谷花壇の事業を紹介するワークショップも行いました。就職活動中に日比谷花壇の会社説明を聞いていたはずですが、いざ自分が人に説明するとなると、難しさを感じる部分もあったようです。
これにより、社会人としてのスキル開発とともに、日比谷花壇への理解も深めることで、内定者のエンゲージメント向上につながったのではないかと考えています。
チーム制には、どのようなメリットがありましたか?
竹内氏:
内定者同士の横のつながりを深めることができました。当社は全国で採用をしているため、同期であっても入社後はなかなか顔を合わせる機会がない人もいます。そこを、内定者の間にチームを組むことで、全国の内定者同士の絆が生まれたのではないでしょうか。また、チームを組むことによって助け合いもでき、一人でリファラル採用をする負担も減らせたのではないかと思います。
成果:21卒内定者の20%がリファラル採用で内定に
そして4つ目、21卒採用において、どんな成果につながりましたか?
竹内氏:
内定者58名がMyReferに参加して、合計852名の友人・知人に日比谷花壇のことを紹介してくれました。そこから実際に104名の方々にご応募をいただき、そのうち約90%の方がイベントに参加してくださいました。さらにそこから80%ほどの80名の方が選考へと進み、11名の内定につながりました。
応募者のうち9割がイベント参加というのは、非常に歩留まりが良いですね。
竹内氏:
内定者が紹介する時に、日比谷花壇の魅力やイベント参加の特典をしっかりと説明してくれていたからこそだと感じています。MyRefer内の自社のおすすめポイントをみると、お花屋さんだけではない多様な事業や成長できる環境をおすすめしてくれたようです。自然流入だけではアプローチできないような学生の方々にもお会いすることができて、やって良かったと思いました。
実際に、どのような人材の紹介があったのか、具体的なエピソードをお話しいただけますでしょうか。
竹内氏:
2つ事例をお話しします。1つ目は、幼馴染を紹介したという事例です。幼い頃からお互いをよく知っていて、学生時代には一緒にフットサルチームを立ち上げた仲間を紹介していただきました。チャレンジ精神が旺盛で、当社が求める人材にマッチしていました。内定者研修で、「自分が今後一緒に働きたい仲間をぜひ紹介してください」ということを伝えていたので、その軸で紹介してくれたようです。
もう1つは、内定者自身は直接の知人ではないのですが、友人の知り合いを紹介したという事例です。その内定者が元々紹介しようとしていた友人は応募に至らなかったのですが、その友人経由で、フラワーショップでアルバイトをしていた学生を紹介していただきました。「紹介の連鎖」と言っているのですが、MyReferを通じてLINEで簡単に特別イベントの情報を送信できるからこそ、生まれた出会いだと思います。
今後の展望:内定者と先輩社員の縦のつながりも活かして、リファラル文化を醸成へ
最後に、今後の展望を教えてください。
向江氏:
まずは内定者リファラル採用をより活性化することです。初年度は内定者だけで実施しましたが、今後は入社1年目社員と内定者が一緒に活動することで、内定者同士の横のつながりだけではなく、先輩社員との縦の繋がりも形成できるように工夫をしたいですね。それが続くことによってリファラル採用が社内に浸透し、同じ志を持った人がどんどん入社してくれることにつながると思います。
次に会社としての展望としては、極論ですが、求人媒体などは全部やめて、リファラル採用一本で採用ができるようにしていきたいです。それができれば、コストやマッチング率の面もさることながら、本当に日比谷花壇のことが好きな人が増えていくでしょうし、会社の基盤もより上がっていくはずです。そのためには、新卒採用から成功体験を積み重ねていくことが大切です。少し時間はかかると思いますが、社内でMyReferの文化を醸成していきたいと考えています。
おっしゃる通り、リファラル採用は短期的に成果が出るものではありません。長期的にさまざまな取り組みをして成功事例を積み重ねて、社内にリクルーターが増えて文化が醸成されて人が集まってくれる会社になるのだと思います。当社もそうした文化を創るために、ぜひ継続してご支援できればと考えています。本日はありがとうございました!
編集後記
日比谷花壇様は、単に「いい人を紹介してね」と投げかけるだけではなく、内定者自身が会社のファンになる仕組みを整えていらっしゃいました。リファラル採用を内定者研修の一環に組み込むことで、内定者が入社前に社会人スキルを身に着けながら、会社の理解を深めてより好きになり、さらには内定者同士の横のつながりも強固にする、こうした自発的に会社を紹介したくなる工夫があったからこそ、こうしたマッチング率の高さにつながったのだろうと考えられます。
内定者リファラルに興味をお持ちでいらっしゃれば、ぜひMyReferにお声がけください。
▼新卒リファラル採用サービス「MyRefer Campus」とは?
https://i-myrefer.jp/corp/download/11/input/
監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
この記事は株式会社TalentXが運営するTalentX Lab.の編集部が監修しています。TalentX Lab.は株式会社TalentXが運営するタレントアクイジションを科学するメディアです。自社の採用戦略を設計し、転職潜在層から応募獲得、魅力付け、入社後活躍につなげるためのタレントアクイジション事例やノウハウを発信しています。記事内容にご質問などがございましたら、こちらよりご連絡ください。