「知る力で、世界を、未来を変えていく」というビジョンのもと、グローバル市場で「見る・測る・分析する」という独自のコア技術を提供する株式会社日立ハイテク様(以下、「日立ハイテク」)。同社が今、人的資本経営の文脈において注力しているのが「リファラル採用」です。
なぜ、伝統ある大企業がリファラル採用を重視するのか―そこには、自社の働く魅力に触れる機会によって、新入社員と既存社員それぞれのエンゲージメントを向上させる秘訣がありました。
人事総務本部の梁本氏、関口氏、村田氏に、同社の描く採用と組織成長のストーリーを伺いました。

株式会社 日立ハイテク
・従業員 :連結:15,016名 単体:6,689名(2025年3月時点)
・事業 :ナノテクノロジーソリューション
ヘルスケアソリューション
コアテクノロジーソリューション
・取材対象者:人事総務本部 人財開発部 採用グループ 部長代理 梁本 昌希 氏
人事総務本部 人財開発部 採用グループ 主任 関口 智久 氏
人事総務本部 人財開発部 採用グループ 村田 朱音 氏
「目に見えない課題」を解決する日立ハイテクの組織づくり―その入口にある採用をミスマッチのないものにするために、社員の声を活かしたリファラル採用を強化

貴社の人的資本経営において、採用戦略をどのように接続させていますか。
梁本氏:
日立ハイテクの人的資本経営において、従業員の成長と組織の成長が相乗効果を生む「良いスパイラル」を描くべきだと考えていますが、そのスタート地点にある「採用」を重要な位置づけとして捉えています。社員が仕事とプライベートを両立させながら自身の能力を活かして幸せに働く「ウェルビーイング」が、結果として組織の成長につながる。この良い循環を回すためには、多様な人財が活躍できる風土作りも勿論重要ですが、その入り口である採用で適切な人財を迎えられなければ成り立ちません。
そのうえで、貴社がリファラル採用を進めることにどのような意義があるとお考えですか。
梁本氏:
当社はヘルスケアや半導体、環境、材料、産業・インフラなどの幅広い事業領域において、社会やお客様の課題解決に向けたソリューションを提供しています。私たちの存在意義は、お客様の目に見えない課題を見つけ出し、ともに解決策を創出することです。しかし、その事業特性ゆえに採用の側面においては業務内容や働く魅力が伝わりづらいという課題がありました。
その解決の鍵を握るのが、実際に働く社員の声を活かした「リファラル採用」です。
社員が自身の言葉で、知人や友人に「私の会社はこういうことをしているんだよ」と噛み砕いて説明することは、どんな求人票よりも説得力があり、信頼性のある貴重な情報です。これが応募喚起だけでなくミスマッチのない採用を実現し、企業の成長に大きく影響を及ぼすと考えています。
リファラル採用におけるリクルーター数や行動データは、会社の健康状態を把握する重要な指標

リファラル採用のデータは、経営指標としてどのように活用されていますか
梁本氏:
当社は、リファラル採用数やリクルーター登録数を、組織のエンゲージメントを測る重要な指標として見ています。 例えば、当社には高度な技能を持つ「直接員」と呼ばれる社員が多く在籍しています。直接員は当社のビジネスを支える重要なポジションであることから、彼らのエンゲージメント向上施策に注力しています。
その検討や分析に活用しているのが、リファラル採用への参加状況がわかる「MyRefer」のリクルーター登録数です。直接員の多くは社用アドレスを持っていないため、メール配信で参加を呼び掛けることが難しかったのですが、社内のチラシ掲示などで工夫をした結果、594名もの直接員が自発的にリクルーター登録をしてくれたのです。
「自ら友人・知人を紹介するアクションをとろうとしている」データは、社員のインサイトに触れることのできる貴重な情報と考えています。他にも、部署毎のエンゲージメントサーベイの結果とリファラル活動状況を比較するなど、社員の傾向分析にも「MyRefer」の活用は非常に効果的だと感じています。
関口氏:
普段は会社に対して厳しい視点を持つ社員が、実は積極的に友人を何人も紹介してくれている、というケースがあります。サーベイのスコアだけでは見えない深い愛着や帰属意識が、友人・知人の紹介という「行動」によって可視化されるのです。これはリファラル採用ならではの発見でした。
「MyRefer」の活用によって、他にもどのような効果や変化を実感されましたか。
関口氏:
「MyRefer」導入前は、正式に応募する可能性の高い方を紹介いただいたり、社員のつながりを活かした紹介の中でも、役職者中心のケースが多く、紹介するハードルが高かったのではないかと感じます。しかし「MyRefer」導入後は、若手社員を中心にまずはカジュアル面談から気軽に紹介してくれる人数が増えてきました。加えて、リクルーターである社員からリアルな情報を聞いているため、他の採用手法と比較しても会社への理解度が非常に高い状態で選考に進んでいただける候補者が増えています。
村田氏:
実は、私もリファラル採用で入社しました。入社前に良い点だけでなく懸念点についても率直に聞けたことで、納得して入社を決めることができました。友人が頻繁に有給休暇を取得して旅行を楽しんでいる姿を見ていたので、「本当に働きやすい環境なんだな」と実感できたことも大きかったですね。
梁本氏:
当社は年間20日以上の有給休暇取得を推奨しており、コアタイムなしのフルフレックス制度など、柔軟な働き方が可能です。こうした働きやすさが、社員の姿を通じて候補者に伝わることは、ミスマッチを防ぐ最大の要因になっています。
結果的に、「MyRefer」導入前の2021年はリファラル経由での入社が4名でしたが、導入年の2023年には25名、2024年度は48名と飛躍的に伸びています。紹介数も年間1,400件を超え、着実に文化として定着しつつあります。
こうした成果を含む採用全体の取り組みが評価され、社内の「経営革新賞」で表彰されました。リファラル採用は、その中でも特に大きなインパクトを与えた施策の一つです。
リファラル紹介は、社員にとって自社の魅力を「再発見」するきっかけに

リファラル採用は、紹介する側の社員にも変化をもたらすのでしょうか。
関口氏:
友人や知人に紹介する際、社員が自社の福利厚生や制度の内容を改めて確認することで、「うちの会社、意外と働きやすいんだ」と再認識するきっかけになっています。
梁本氏:
社内イントラのリファラル採用ページに、「友人に薦める時のポイント」や「当社に入社される方の転職理由の傾向」など客観的なデータを掲載しています。それを見ることで自社の良さに改めて気づく社員も多いようです。友人に自信を持って勧めるために自社を知る、そのプロセスが既存社員のエンゲージメント向上にも寄与していると感じます。
最後に、今後の展望と、リファラル採用に取り組む社員の皆様へのメッセージをお願いします。
村田氏:
今後は、社員がより紹介しやすい環境づくりに注力したいと考えています。具体的には、求人票のその背景にあるストーリーや現場の声を丁寧に発信し、「この友人なら合いそうだな」とイメージしやすい仕掛けをつくっていきたいです。 社員の皆様には、当社の良いところも、改善が必要なところも、率直にご友人に伝えていただきたいです。それが結果としてミスマッチのない、幸せな採用に繋がると信じています。
梁本氏:
ビジョンである「知る力で、世界を、未来を変えていく」の通り、私たちは常に変わり続けています。社員一人ひとりが自社の魅力を語り、新たな仲間を呼び込む。その循環が、個人の幸せと会社の成長を両立させる鍵になると確信しています。
編集後記
エンゲージメントサーベイの数値だけでは測れない、社員の深層にある「愛着」や「誇り」。それを可視化する装置としてリファラル採用が機能している点は、多くの企業にとって大きな発見ではないでしょうか。
さらには、リファラル採用の過程を通じて、既存社員も自社の魅力を再発見でき、そのリアルな情報によってミスマッチのない採用が実現できるという、まさに「知る力で未来を変えた」日立ハイテク様のお取り組みでした。
自社の採用課題やお悩みの解決策を知りたい、戦略的なリファラル採用の仕組みづくりや効果的な推進方法にご関心のある採用ご担当者は、ぜひ一度TalentXにご相談ください。貴社の事業特性や組織課題に合わせた最適なソリューションをご提案いたします。

➤従業員エンゲージメントとリファラル採用の関係性について、詳しく知りたい方はこちら
記事URL:https://mytalent.jp/lab/ex_referral/

➤専門人材の獲得に効果的なリファラル採用の取り組みについて語る、パナソニック オートモーティブシステムズ様のセミナーレポートはこちらから
記事URL:https://mytalent.jp/lab/report_automotive-panasonic/






