コロナ禍による深刻な影響を受けてきた航空業界ですが、最近は再び需要が戻り、以前のような活気を取り戻しています。そのなかで日本航空株式会社様は、従来から柱としていたFSC(フルサービスキャリア)事業以外の領域も強化すべく、事業構造改革に取り組んでいらっしゃいます。そこで重要となるのが、多様な人財の確保です。キャリア採用を積極的に進める日本航空様では、業務企画職(総合職)において、リファラル採用やタレントプール構築、転職潜在層へのナーチャリングといった、従来にない採用手法に取り組み始めています。
そこで今回、人財本部 人事部 採用グループの高橋且泰 様、岡本冬美 様にインタビューを実施。採用方針や戦略、具体的な取り組み、そして「MyRefer」「MyTalent」に対する期待などについて詳しく聞きました。
日本航空株式会社
従業員数:連結36,039人、単独12,969人(2023年3月現在)
事業概要:定期航空運送事業及び不定期航空運送事業、航空機使用事業、その他附帯する又は関連する一切の事業
人財本部 人事部 採用グループ グループ長 高橋 且泰 氏
人財本部 人事部 採用グループ 岡本 冬美 氏
テーマは、「多様性」と「変革」。日本航空が取り組む人的資本経営時代の採用戦略
はじめに、貴社の事業内容と方針について教えてください。
高橋氏:
主力事業は、イメージ通りかと思いますがFSCを中心とした航空運送事業です。コロナ禍により一時は需要が落ち込んでいましたが、収束に伴い昨年から業績も回復傾向にあります。また、FSC事業以外にも、貨物郵便やLCC事業、そしてマイル・ライフ・インフラと呼んでいる航空以外の事業領域の拡大にも積極的に取り組んでいます。事業の多角化により収益の柱を増やすことで、コロナ禍のような事態が起こった場合にも、より安定的な経営ができると考えています。
次に、採用方針と目標についてお話しいただけますか。
高橋氏:
採用方針は、「多様性」と「変革」の2つをキーワードとして掲げています。多様な価値観を尊重し、新たな価値創造に挑戦して変革を起こすということです。
採用目標としては、今年度の業務企画職では、コロナ禍直前を上回る規模の採用人数を目指しています。新卒採用とキャリア採用の内訳は、近い将来に50%ずつにしていきたいと考えています。従来のJALには、新卒採用中心というイメージがあるかもしれません。しかし「多様性」と「変革」を実現するためには、多様な価値観を取り入れて革新につなげていくことが必要です。そのため、新卒採用だけではなく、キャリア採用を強化することが重要なミッションとして、採用変革を推進しています。
これまで、どのような採用手法をとられていましたか?
岡本氏:
新卒採用は、採用ホームページからのエントリーがメインで、大まかなキャリアの方向性を示す「コース」のみを選ぶオープン型の採用を実施しています。キャリア採用では、新卒と同様のコース別オープン型と、初期配置におけるジョブディスクリプションを明示し、そこに当てはまる人財をピンポイントで採用する職務指定型という2つの形式で採用を行っています。
さまざまな採用手法を模索するなかで感じていらっしゃる採用課題を教えてください。
高橋氏:
大きな課題としては、転職顕在層にアプローチし続ける既存の採用方法に限界を感じていたことです。雇用の流動化は少しずつ進んではいるものの、日本において「転職」を明確に考えている人はまだまだ多くありません。労働人口が6,970万人いるなかで、転職顕在層はわずか288万人と言われています。労働人口のわずか4%ほどの転職顕在層を競合他社と奪い合う採用には、限界があると以前から感じていました。
岡本氏:
キャリア採用においては、当社が採用を強化しているということが世の中にあまり伝わっていないことも課題でした。先ほど高橋が話したように、JALは新卒採用中心というイメージを持たれがちです。それが応募に対するハードルになっていたり、そもそも経験者を募集していることを知らないため、応募先の候補に入らなかったりという事象が起こっていたのだと思います。
「MyRefer」と「MyTalent」で、転職潜在層にアプローチ。自社独自のつながりで “戦わない採用”を推進する
採用変革を進めるなかで、リファラル採用を始めた背景を教えてください。
高橋氏:
リファラル採用は、転職潜在層にもアプローチできる採用手法です。先ほどお話したデータによると、転職顕在層は労働者人口のわずか4%であることに対し、転職潜在層は90%以上を占めています。リファラル採用を活用すれば、これまで手が届いていなかった潜在層にアプローチできます。
もうひとつは、社員全員で仲間集めをする文化づくりのためです。雇用の流動化が進む世の中において、「採用は人事部が行うもの」という考えから脱却し、「全社一丸となって採用をし、社員一人ひとりが一緒に働く仲間を探す」という意識にアップデートすることが必要です。そのように、全社一丸となって仲間を探すための取り組みのひとつが、リファラル採用だと考えています。
岡本氏:
JALがキャリア採用を強化していることや、新規事業を積極的に展開していることを知ってもらうには、当社で実際に働いている社員からのリアルな口コミが一番だと考えたからです。
リファラル採用と同時に、タレントプール構築と転職潜在層のナーチャリングの取り組みも始められましたが、その背景についてお聞かせください。
高橋氏:
当社の採用管理システムには沢山の候補者さまのデータが蓄積されています。しかし、これらのデータ分析や活用がこれまでほとんどできておらず、せっかく日本航空に興味を持ってくださった方々とのご縁を無駄にしているのではないかと感じていました。候補者さまとのつながりを活かすという目的で、タレントプール構築とナーチャリングの施策をスタートしました。
また、リファラル採用で転職潜在層へのアプローチを強化するということは「今すぐには転職を考えていなかった層」とのつながりが増えるということです。それならば「今回採用につながらなかったら終わり」という一過性の関係ではなく、中長期的でつながり続ける関係づくりが必要だと考えたことも、ナーチャリングを開始する理由の一つです。
リファラル採用サービス「MyRefer」と、採用MAサービス「MyTalent」を導入された理由にもそれぞれお聞かせください。
岡本氏:
リファラル採用をアナログで実施しようとしても、継続することは難しいと予想していました。長く続けていくには、リファラル採用を促進してくれるシステムが必要です。「MyRefer」は、日本のリファラル採用のトップランナーだと認識していたため、まずお話を聞かせていただきました。豊富な支援実績に裏打ちされたコンサルティングと、リファラル採用の活動状況が可視化できるツールが大きな魅力だと感じ、導入に至りました。
「MyTalent」も同じく、コンサルティングと可視化・分析できるツールが大きな特長です。これまで活用できていなかった大規模な候補者データを可視化・分析でき、継続した関係性を築くためのアクションまで伴走支援していただけることは、本当にありがたいですね。
高橋氏:
人的資本経営に対する関心が高まるなかで、当社もこれからの時代に適した戦略人事として、考え方や採用手法などをアップデートしていかねばなりません。TalentXは、次世代の採用変革を遂げるためのパートナーとして、しっかりと伴走してくれると確信しています。
全社一丸となって仲間づくりに取り組み、エンゲージメント向上へ――人的資本の最大化を実現する採用戦略
今後のリファラル採用の目標や展望について教えてください。
岡本氏:
まずは、業務企画職のキャリア採用で「MyRefer」を活用したリファラル採用を展開する予定です。JALでは、リファラル採用自体が初めてのことです。そのため、動き出しの効果を最大化するために、「リファラル採用は、こんなに簡単に取り組める」ということを社員に意識付けしていきたいと思います。そして取り組みを形骸化させないよう、コンサルティングとデータ分析を活用して、価値ある採用活動につなげていきたいです。
高橋氏:
「自分たちの仲間を自分たちで集める」という話をしましたが、リファラル採用を通じて社員エンゲージメントの向上につながることを期待しています。自社のことを友人・知人に語ることで、「自分は会社のこんなところを魅力だと感じていたのか」と、再認識するきっかけになるはずです。そして、自分が一緒に働きたいと思う人に直接声を掛け、仲間にしていくことができるリファラル採用は、やりがいにもつながっていくと思います。
タレントプールや転職潜在層のナーチャリングについての目標や展望も伺いたいです。
岡本氏:
「MyRefer」は社員のリアルな口コミを通じてJALに興味を持ってもらう入り口戦略であり、「MyTalent」は興味を持ってくれた方とつながり続けて応募・入社につなげるものだと位置づけています。せっかくJALに興味を持ってくださった方も、まったく面白くないコンテンツや的外れな内容の配信ばかりだったら、興味が薄れてしまうでしょう。適切なタイミングで適切なコンテンツを配信できるよう、PDCAを回していきたいと思います。(※MyTalent導入後、約2か月間の活用により、業務企画職オープン型採用の応募者数が、導入前と比較し約52.2倍増加)
最後に、採用や組織づくりについての展望についてお聞かせください。
高橋氏:
繰り返しになりますが、組織づくりにおいて「採用は人事がしてくれるもの」だという意識のままではなく、「社員一人ひとりが仲間を見つけにいく」意識を持つことが必要だと思います。それは、タレントプールも同じです。これまでは採用に興味を持っていなかった社員に対しても、「MyRefer」や「MyTalent」を活用した取り組みを進めるなかで興味を持ってもらい、自分たちの力で仲間をつくる活動を通して、エンゲージメントを向上させていくことが大きな目標です。
編集後記
新卒採用中心から経験者採用が半数へ。「採用は人事の仕事」から「全社一丸で仲間を増やす」姿勢へ。日本航空様が採用の変革に本気で取り組んでいらっしゃることがよくわかるインタビューでした。
採用競争が激化するなかで、転職潜在層にもアプローチすべく「MyRefer」を活用したリファラル採用と、「MyTalent」を活用したタレントプールの分析・活用を推進されています。 人的資本時代に求められる新時代の採用に変革されたいとお考えの方は、TalentXにお声がけください。