「グローバルな保険・金融サービス事業を通じて、安心と安全を提供し、活力ある社会の発展と地球の健やかな未来を支えます」というミッションのもと、国内損害保険事業など5つの事業を展開している三井住友海上火災保険株式会社様。
同社は「企業価値向上の原動力は人財である」という考えのもと、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の推進やスマートワークの取り組みを通じて、多様な社員全員が成長し、活躍する会社の実現を目指しています。そうしたなか、2022年からはキャリア採用を強化しており、多様な人財を獲得するために採用活動の変革を推進しています。
今回は人事部 採用チーム チーム長の 鵜飼 氏と同キャリア採用ユニットリーダーの黑川 氏に、MSファストパス制度やタレントプール構築など、採用変革の取り組みについて伺いました。
三井住友海上火災保険株式会社
・従業員数 :12,143名(単体) 20,393名(連結)
・事業概要 :損害保険業(保険引受、資産の運用)、他の保険会社の保険業に係る業務の代理または事務の代行、債務の保証、確定拠出年金の運営管理業務、自動車損害賠償保障事業委託業務
・取材対象者:人事部 採用チーム チーム長 鵜飼 雄介 氏
人事部 採用チーム キャリア採用ユニットリーダー 黑川 健人 氏
経営戦略と連動した人財戦略を推進する三井住友海上火災保険──サステナブルな会社経営を実現するため、キャリア採用強化に大きく舵を切る
まず、貴社の事業内容や特徴を教えてください。
鵜飼氏:
当社は、国内の損害保険事業を中心に、国内の生命保険事業、海外での生損保事業、デジタル・リスク関連事業、金融サービス事業という5つのドメインで事業展開しているMS&ADインシュアランス グループの中核企業です。現在は国内だけにとどまらず、欧州、北米、アジアを中心に海外41カ国・地域で事業を行っています。
「中期経営計画(2022-2025)」では、「未来にわたって、世界のリスク・課題の解決でリーダーシップを発揮するイノベーション企業」を目指す姿としています。この実現に向けて、社会と当社のサステナビリティを同時実現する「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」を進めており、主な4つの社会課題(地球環境との共生、革新的テクノロジー、強靭性・回復力、包摂的社会)の解決に資する事業に取り組んでいます。
次に、人財戦略や採用戦略をお伺いできますか。
鵜飼氏:
中期経営計画を達成するためには、経営戦略と人財戦略の連動が不可欠だと考えています。企業価値向上の原動力である多様な人財を活かすため、最適なポートフォリオ構築や社員の能力・スキル・意欲を最大限発揮できる環境づくりを通じて、エンゲージメントと生産性向上に取り組んでいます。
多様な人財の活躍を推進するなか、社外のカルチャーを経験した方の意見を取り入れサステナブルな会社経営につなげるために、従来のような新卒一括採用だけでなく、キャリア採用を強化する採用方針に大きく舵を切りました。
キャリア採用の採用目標を教えてください。
鵜飼氏:
2022年からキャリア採用を強化しており、2022年度は約100名、2023年度は約300名の方にご入社頂きました。2024年度も2023年度と同程度の採用を見込んでいます。
キャリア採用の目標が3倍以上に増えている理由は、より多様な経験やスキルを持った人財が必要になっているためです。一般的にイメージしやすい保険の開発・販売だけでなく、防災・減災をはじめとした補償前後のサービス強化など事業領域の拡大を進めていて、社内の人財だけでは新たな領域に対応しきれないこともあります。事業戦略上、必要な経験・スキルを持った人財を獲得するためにキャリア採用の人数が飛躍的に増えています。
我々も推進する立場として、外部からの人財確保を積極的に進めており、こちらにいる黑川さんも含め、キャリア採用担当は半数以上が他業界から参画頂いています。人事部全体を見渡しても、企画や研修など各セクションにおいて、あらゆる業界からの出身者が増えており、多様な価値観・背景を持った社員と新卒入社の社員がフラットでオープンな議論を進めている様子が見受けられるようになってきました。
「攻めの採用」に変革するため、タレントプールを構築し「MyTalent」を導入
これまで取り組んできた採用手法とその中での課題を教えてください。
黑川氏:
キャリア採用を本格的に始めて約1年が経ちましたが、私が入社した当時はあまりノウハウもありませんでしたので、採用経路のボリュームゾーンはエージェント経由での採用が中心となっていました。
そのなかで浮き上がってきた課題は大きくふたつあります。ひとつはコスト面です。エージェント経由での採用が半数以上を占めておりましたので、限りある事業費をより効率的・効果的にアロケーションしていく必要性を感じています。
もうひとつは潜在的な意識の中で「私たちが本当に会いたい人と出会えていないのではないか」と感じていたことです。採用活動に日々従事するなかで、候補者のスタンスが変化していると強く感じていました。これまでのように自ら転職の意思表示をしてエージェントに登録し積極的に転職先を探すのではなく、スカウト媒体にとりあえず登録して企業からスカウトをもらい、興味があれば話を聞いてみるといった「待ち」の姿勢に変わっているイメージです。
先ほどお話した通り、当社はこれまで公募やエージェント経由での採用が中心で、言わば「待ち」の姿勢でしたので、現行のままだと『お互いに「待ち」の姿勢になっており、本当に会いたい人にリーチできない』という仮説のもと、当社が求める人財を自ら探しに行く「攻めの採用」に変革する必要性を感じていました。
こうしたなか、タレントプールを構築しようと思った理由を教えてください。
鵜飼氏:
「攻めの採用」として転職潜在層へアプローチしようと考えた時に、まず目をつけたのが「これまでの候補者」でした。新卒採用もキャリア採用も毎年約5,000~6,000名の方が弊社に興味を持って応募してくれています。こうした過去候補者とのつながりをしっかりとつなぎ留め、タレントプールすることができれば、大きな人的資産になるのではないかと考えました。
そこで、まずスタートしたのが「MSファストパス制度」です。MSファストパス制度は、最終面接を通過し一定条件を満たしたものの他社に入社した学生が3年以内にキャリア採用に応募してきた場合、最終面接から選考を開始できるという制度です。21~23年度の採用活動にさかのぼって適用し、対象者約60名に案内しました。
タレントプールを構築するなかで「MyTalent」を導入した理由を教えてください。
黑川氏:
「タレントプールを本格的に導入したいけれど、何から始めよう」と考えていた時に「MyTalent」に出会い、弊社がやりたいこととサービスの特長が非常にマッチしていると感じて導入しました。
鵜飼氏:
候補者情報を単純に貯めるだけであれば他のサービスでもできますが、タレントプールの掘り起こしやナーチャリングなども手厚くフォローしてくださることが魅力でした。採用チームもやることが多岐にわたるので、工数をなるべく減らしたいという組織マネジメント上のニーズにも大変マッチしていました。
黑川氏:
もうひとつ、システムのアップデートや改善に期待できたことも大きいです。導入の半年前に聞いていた「MyTalent」の機能や中身が、導入時にはさらに洗練されていると感じました。このスピードで中身がアップデートされるのであれば、より一層ブラッシュアップされて良いサービスになるだろうなと思いました。
全社で採用活動に取り組み、これからの時代に適した採用に変革する
「MyTalent」で、今後どのような取り組みや活用を検討されていますか。
黑川氏:
タレントプール数を増やすことと掘り起こしのふたつです。
まず、キャリア採用の内定辞退者やアルムナイのタレントプール構築もやっていきたいと思っています。加えて、MSファストパス制度は新卒内定辞退者向けでしたが、アプローチ対象をさらに広げていくことを検討しています。こうしたタレントプールを増やす動きとあわせて、今までプールしている人財の掘り起こしもしっかりとやっていきたいと思っています。
鵜飼氏:
地方での採用や、専門的な人財の採用でも活用したいと考えています。なかなか応募が来ない地域での採用が必要になった時、「MyTalent」を開けば過去に受けた方々が資産として蓄積されていてアプローチをできるというのは非常に良いですよね。
また、新たな事業を展開していくなかで専門的なスキルを持った優秀な人財がほしいとなった時に、タレントプールを見てマッチする人がいればスカウトできるというのは採用活動が効果的で効率的になると思います。
最後に、採用全体での今後の目標や展望を教えてください。
鵜飼氏:
これまで新卒一括採用がメインだったところから、キャリア採用を大々的に進めるなかで、新卒採用とキャリア採用をいかにうまく融合させて、これからの時代に適した採用に変革するのかということを進めている段階です。
もうひとつは、採用における人事の役割が今後変わってくると感じています。人事だけが採用に関わって人を採るのではなく、全社で採用活動に取り組むなかで、人事はハブになる役割だと思っています。こうした変化にも柔軟に対応できる採用体制づくりをしていきます。
編集後記
経営戦略に沿って多様な人財を獲得するために、人財戦略や採用活動の変革に取り組む三井住友海上火災保険様のインタビューをお届けしました。自社が求める人財に自らアプローチする「攻めの採用」を進めるなかで、これまでのつながりに着目し「MyTalent」を活用。過去候補者のタレントプールを構築し、中長期でつながり続ける持続可能な採用に変革しています。
タレントプールを構築し、潜在候補者へのアプローチを効果的に進めたいという方は、ぜひTalentXにご相談ください。