人材不足が続く、介護業界。ハローワークだけではなく、折込チラシや求人媒体、さらには人材紹介など、様々なチャネルを活用しながらも、採用目標に到達しないという声も聞こえてきます。同時に、採用コストの高騰も大きな課題でしょう。
名古屋市内で、医療・介護・保育施設を運営している医療法人としわ会様は、リファラル採用制度をつくって職員の85%が協力していることで介護士の採用単価を1/3にすることができたそうです。
去る10月14日、介護業界でのリファラル採用についてオンラインセミナーを行い、介護業界で先進的にリファラル採用に取り組む医療法人としわ会の安達様に詳しい取り組みをお伺いしました。今回は、当日の様子をセミナーレポートとしてお届けします。
医療法人としわ会 | |
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従業員数: | 320人 |
事業概要: |
医療・介護・保育の施設運営 |
事務部相談課 課長 安達 匡倫氏 |
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第一部 介護業界の採用新潮流「職員紹介採用」とは
セミナーの冒頭では、Account Consulting部 ゼネラルマネージャー 兼 アカウントエグゼクティブ関が登壇。介護業界での採用動向と職員紹介採用について説明しました。
少子高齢化により、年々採用が厳しくなる介護業界
株式会社MyRefer 関(以下 関):
まずは、私から介護業界全体の採用動向をお話しいたします。少子高齢化が進む日本では、2025年に高齢化率が30%に到達し、その後も右肩上がりに上がっていきます。それに伴い、介護施設や定員数は年々増加しており、職員も必要になっている状況です。介護関係職種での有効求人倍率は2019年には3.9倍となりました。これは、全職種平均の1.61倍と比較してもかなりの数字です。
また、採用の難しさだけではなく、離職率の高さも課題です。やはり人の命に対峙する精神的ストレス、職員間の人間関係、若手の介護離れなどから、せっかく採用できたとしても職員の離職が多くなっています。すると、さらに採用コストがかさむ、そして人手が足りないことから既存の職員さんに業務負荷がかかることでエンゲージメントが下がる。こうした負のスパイラルが生まれています。
こうした状況下で、介護業界では人材紹介材紹介経由での転職が年々増加しているようです。また、派遣会社を活用する事業者様も少なくないでしょう。
職場のリアルを伝える職員紹介採用
関:
そんななか、転職者がどんな情報を求めているのかに関するアンケ―ト調査から「そこで働く人の声」「職場の雰囲気」など、リアルな情報が必要とされていることが分かりました。これらから我々は職員紹介採用が有効な手段の一つだと捉えています。
職員紹介採用(リファラル採用)とは、信頼できる社内外の人脈を介して、一緒に働く仲間を集めていく採用活動のことです。よく、ハンティングのように能動的に声を掛けるようなイメージを持たれますが、実際には8割はプライベートなシーンで受ける仕事に関する悩み相談などがきっかけになっています。
とはいえ、報奨金がなければ紹介してくれない、思われるかもしれません。しかし、実際に友人に紹介をした理由を調査したところ、「友人・知人・後輩の力になりたいから」と回答した方が半数以上で、報奨金などを理由に挙げた方は1割強にとどまりました。やはり、紹介に至る理由は、相手にいい情報を伝えたいというような“ヒト起因”だということです。そのため、実際に友人・知人から職場や仕事について問いかけがあった時、職員の方にしっかりと情報発信の起点になって自社を語ってもらえるような状態を整えることが重要です。
職員紹介採用のメリットと懸念
関:
介護業界におけるリファラル採用の価値は、「質」「量」「費用」「愛着」の4つです。
まず、「質」の観点では、現場を良く知る職員を経由する紹介であるため決定率が高いですし、事前に仕事や職場のリアルな状況が伝わりやすく、定着率も高くなります。次に「量」については、転職市場に顕在化していない層にもアプローチできるため、リーチできる総量が増えます。そして「費用」面でも、職員の人脈を通した採用であるため、媒体料金や紹介フィーが必要なく、採用コストの削減につながります。最後に「愛着」ですが、リファラル採用活動により、職員の方々が自社を知り、友人・知人に自社の魅力について語る中で、自社に対する愛着や帰属意識がどんどん高まっていくといえます。
このようにメリットの多いリファラル採用ですが、「良い促進方法が分からない」「人事と各拠点との距離があってうまく連携できない」「広告でも人が集まらないのに、リファラルで採用できるイメージがない」など、ご懸念もあるでしょう。
また、職員の方々からすると、現在自身が働いている事業所がどんな募集をしているのか、誰に相談すればいいのか、というように制度内容や進め方をご存じないケースが多いのではないでしょうか。さらに、友人に紹介しても不合格だったらどうしようなど心理的な不安から紹介をしないことも多いと推察します。
そこでここから、としわ会の安達様にご登壇いただき、こうした課題があるなかで、どのような取り組みや工夫をされたのか、伺っていきたいと思います。
第二部 医療法人としわ会の職員紹介採用~介護士の採用コストを1/3に~
名古屋の医療法人としわ会では、4施設の職員を年間40~50名採用
医療法人としわ会 安達氏(以下 安達氏):
はじめまして、医療法人としわ会の安達と申します。私は2012年に入職し、はじめは相談員をしていました。実際に採用活動に関わり始めたのは、今から3年ほど前からです。現状、施設全体の求人の管理全般を担当しております。
まず、医療法人としわ会について紹介いたします。としわ会は、名古屋市内で、医療・介護・保育施設を運営しています。職員数は320名、施設数は4つ、1つは診療センタークリニック、他の3つは介護施設です。募集職種は、介護士、看護師、理学療法士、作業療法士、ケアマネジャーなど10職種以上です。新卒・中途で、年間だいたい40~50名を採用しています。
導入背景:あらゆる採用チャネルでも人がとれず、職員紹介にトライ
まずは、なぜ職員紹介を始めたのか、導入背景を教えていただけますでしょうか。
安達氏:
もともと採用チャネルはハローワーク、求人媒体、人材紹介、新聞折り込みなど、できることは全部していました。しかしそれでも目標の採用人数には届かないことがあり、採用コストもかさんでいたのです。私は採用担当になって日が浅く、「採用とは何か」から勉強を始めました。そこで色々な本で「リファラル採用」という言葉を目にすることが増え、MyReferに相談をして導入を決めたという背景があります。
リファラル採用で期待していたことはどのようなことでしょうか。
安達氏:
まずは採用単価が下がることです。高い時には採用単価が70万~80万円/人と膨らんでいました。次に、職員紹介ということから、採用決定に繋がりやすい人からの応募がくるということです。そして、以前働いていた経験者の出戻り採用も期待していました。
展開方法:細やかな工夫で施設・職員へしっかりと浸透させる
続いて2つ目の質問です。2018年の8月からリファラル採用をスタートしたということですが、各施設や職員の方々に対してどのように展開したのでしょうか。まずは紹介求人について教えてください。
安達氏:
MyReferで簡単に求人を確認して紹介できるように、「介護士」「看護師」といった募集職種と、募集施設が写真も含めて一目でわかるように作成しています。また、10年以上の経験者については別枠で求人を立て、給与設定等を変えるなど、ターゲットによって細かく求人を分けて出しています。
職員紹介のインセンティブ制度についても教えてください。
安達氏:
職員の紹介で入社した方が3カ月勤務したら、正社員は10万円、パートは5万円を支給しています。金額についてはかなり悩みました。少し高いかとも思いましたが、当時は採用コストがかなりかかっていたため、最終的にはこの金額に設定しました。
制度の認知促進はどのようにされていったのでしょうか。
安達氏:
「リファラル採用」は馴染みのない言葉のため、まずは職員に制度を知ってMyReferに参加してもらうところから地道に始めました。最初は「職員紹介をなぜやるのか?」という声もありましたが、様々な場で説明をしたり、取り組み内容を配信したりするうちにかなり浸透したと思います。
具体的に、まずは各部署の代表者が集まる会議で、複数回アナウンスをし、そこから各部署への浸透を図りました。また、当法人では給与明細を毎月一人ひとりに手渡しします。その封筒に、MyReferのチラシを同封して、リファラル採用活動に参加してほしいと声を掛けていきました。そして、新入職員さんについては、入職手続きの段階で登録をお願いしました。このように、かなり地道な活動を継続することで、MyReferを使ってリファラル採用活動に参加する職員の数が増えていきました。
取り組みの工夫:定期的なニュース配信やアルムナイ採用との併用
3つ目の質問です。登録した職員の方々が紹介したくなるように、どのような取り組みをしたのか伺いたいです。
安達氏:
スタートして半年くらいは、あまり紹介の数が増えませんでした。そこで、「ボーナスポイント制度」を導入しました。具体的には、紹介してくれたMyReferポイントでランキングをつくり、3カ月に1度、上位3名20万円、10万円、5万円の商品券を贈呈するという制度です。これによって、新人や若手職員がよく紹介してくれるようになり、組織の若返りが期待できました。結果的に入社まで至らなくても、友人・知人に声を掛けて紹介することへの心理的なハードルは低くなったのではないかと思います。
社内ニュースの配信も積極的に行っていらっしゃいますね。
安達氏:
毎月のようにMyReferからニュースを配信しています。内容としては、「なぜMyReferを導入したのか」という共感を生む内容、再就職準備金などのお役立ち情報のほか、先ほどのボーナスポイント制度の表彰シーンも写真と共に配信しています。定期的に配信することにより、リファラル採用自体を身近に感じてもらえるようになっていると思います。
この社内ニュース配信においては、今井さんに毎月相談をしながら作っており、非常に助かっています。
ありがとうございます。MyReferでは社内ニュースの閲覧数を分析することができますが、職員さんの顔が見えるニュースは、多くの方に見てもらっていますね。また、としわ会様はアルムナイ採用、一度退職した職員さんに復職してもらう“出戻り”採用も積極化していらっしゃいますね。
安達氏:
あと、工夫点としては一度退職した職員さんの出戻り応募も可能にしています。介護職は、業界内での転職が多いです。色々な施設を渡り歩くうちに、一度退職した施設にまた戻りたいと思うこともあるでしょう。しかし、どういうルートを使えば戻れるのか、分からない人が多かったと思います。そこでアルムナイ制度を取り入れて、退職時にもMyReferに登録いただくようにしました。これにより、かなりの職員さんが復職しました。リファラル採用と併用しながら、アルムナイ採用もうまく活用できていると思います。
成果:決定率は5割超、採用コストは1/3に!
そして4つ目は、成果についてです。具体的に、どのような成果が上がりましたか?
安達氏:
15名の採用につながり、採用コストは1/3になりました。現在、職員320名のうち参加者は275名、約85%です。スマホやLINEを扱えない職員以外は、だいたいMyReferを使っています。さらに退職後も48名がMyReferに参加してくれています。
そして注目していただきたいのは、応募からの決定率が58%ということです。他の採用チャネルの決定率は10%未満ということからも、非常に高い数字だということがお分かりいただけると思います。
職員の方々は、どんなポイントを友人・知人の方々にお勧めしているのでしょうか。
安達氏:
働きやすさや、仕事のやりがいを勧めているケースが多いですね。職員の紹介コメントから本音が見えてきますし、他の媒体などでの打ち出しに活かすなど、大変参考になっています。
採用に至った方のエピソードも、ぜひ聞かせてください。
安達氏:
当法人で2年間勤務した後、他の施設でチャレンジしたいという理由で退職した職員がいました。しかし、1年ほどで「給与や休日、職場の雰囲気など、トータルで考えて、またとしわ会で働きたい」と、話してくれたのです。一度離れたものの、としわ会の魅力を再認識してアルムナイで戻ってきてくれたという事例です。
今後の展望:他の職種にもリファラル採用を展開
最後に、今後の展望を教えてください。
安達氏:
以前は、人が足りないから、その欠員を補填するためにとにかく採用するという、あまり良い循環ではなかったと思います。しかし、MyReferを導入することで、お互いに一緒に働きたいと思える人材が集まるような状況になってきました。介護士に関しては、この1年人材紹介は使わず、自社の求人だけで採用を行っています。この状態を、今後も続けていきたいと思います。
また、介護士だけではなく、看護師、ケアマネジャー、リハビリスタッフといった専門職は、媒体に出してもなかなか集まりません。こうした職種は横のつながりが大切だと思いますので、今後リファラル採用を積極的に展開していきたいと考えています。
安達様、ありがとうございました!今後も、採用を一過性のもので終わらせるのではなく、会社のファンづくりや一緒に働く仲間づくりといったところで、お役に立てれば幸いです。
編集後記
「リファラル採用とは何か」というところから、職員の方々に地道に丁寧に浸透させていくことだけではなく、ニュース配信や表彰を定期的に行うことで、興味を持ち続けてもらう工夫をしていることが、としわ会様の成功の秘訣だと感じました。また、介護業界では業界内での転職が多いことから、アルムナイ採用も有効に機能していると考えられます。
介護業界でのリファラル採用に興味をお持ちでいらっしゃれば、ぜひMyReferにお声がけください。
▼リファラル採用の教科書
https://mytalent.jp/lab/resource_1/
監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
この記事は株式会社TalentXが運営するTalentX Lab.の編集部が監修しています。TalentX Lab.は株式会社TalentXが運営するタレントアクイジションを科学するメディアです。自社の採用戦略を設計し、転職潜在層から応募獲得、魅力付け、入社後活躍につなげるためのタレントアクイジション事例やノウハウを発信しています。記事内容にご質問などがございましたら、こちらよりご連絡ください。