
- 「そもそも、リファラル採用の紹介報酬(インセンティブ)制度は実施したほうがいいのか?」
- 「実施する場合どのような点に注意すればいいか?」
このようなご質問を当社にお問い合わせいただくケースも多々あります。Q&Aサイトでも同様の質問や回答が多く見れらます。
しかしながら、リファラル採用の報酬(インセンティブ)を検討するうえで、支給する意義から方法論まで体系的にまとまった情報は実はあるようでありません。
そこで今回は、
- これからリファラル採用の制度設計を進める中で、紹介報酬(インセンティブ)制度を検討したい
- そもそも紹介報酬(インセンティブ)制度は社員のモチベーションアップに寄与するのか知りたい
- 紹介報酬(インセンティブ)制度の法的課題と回避方法を学びたい
- 紹介報酬(インセンティブ)の相場金額を知りたい
と悩んでいる経営者様、人事責任者・担当者様がリファラル採用の構造を理解し、ゼロから簡単に紹介報酬制度の設計を行えるようにするための情報をお伝えいたします。
目次
そもそも、リファラル採用の紹介報酬(インセンティブ)制度はやったほうがいいの?
リファラル採用に対する紹介報酬(インセンティブ)にどのような意味を持たせるかによりますが、結論としてはあったほうが良いです。そもそも、紹介報酬(インセンティブ)制度の導入はリファラル採用の動機付け施策の一つであり、社員に積極的に友人や知人を紹介してもらうための取り組みです。
リファラル採用制度を運用して行く上で、紹介を促す動機付けの施策としては以下が挙げられます。
- ミッション(研修の一環としてリファラル採用を実施させる)
- 報酬・インセンティブ(紹介決定した場合、会食費・インセンティブを贈呈)
- ロイヤルティ(会社のビジョンから落とし、全社員採用をやる意義を説く)
- 面白さ・ゲーム性(ゲーミフィケーションの要素を取り入れる)
- 承認欲求(選ばれた人間のみのリクルーター制度など)
中でも②の報酬・インセンティブは、その他施策と比較して即効性が高く、比較的容易に検討から実施が可能な取り組みです。
一方で、紹介報酬制度を導入したからと言って、全社員が能動的に動いてくれるわけではありません。報酬制度のみで行動喚起される層は全体の1割、大半の層は報酬制度に加えて‟その他理由“で受動的に動きます。
リファラル採用した際の紹介報酬(インセンティブ)は合法?違法? 法的な位置づけ
リファラル採用時の報酬制度に関係する職業安定法と労働基準法のうち該当するのは、下記の条項です。
職業安定法 第30条(有料職業紹介事業の許可)
有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。
職業安定法 第40条(報酬の供与の禁止)
労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第36条第2項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。
労働基準法 第11条
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
以上の内容から、紹介報酬(インセンティブ)の付与方法や、報酬(インセンティブ)額に最大限気を付けて、紹介報酬(インセンティブ)制度を設計していきましょう。
リファラル採用の紹介報酬(インセンティブ)の相場金額はいくら?
実際にリファラル採用の紹介報酬制度を作る場合、一番気になるのは報酬・インセンティブの金額ではないでしょうか。インセンティブの金額は高ければ高いほうがいいというわけでもありません。業界や企業文化、社員の特性によっても適切な金額は変わってきます。
すでにリファラル採用を実施している会社では、リファラル採用の紹介報酬(インセンティブ)をどれくらいに設定しているのでしょうか? 「2023年度 リファラル採用 従業員規模別統計レポート」(※)より、紹介報酬(インセンティブ)の相場金額をご紹介します。
紹介報酬(インセンティブ)の相場金額
リファラル採用の成功時、入社に伴う社員への報酬金額は「5万円~20万円」に設定している会社が多くなっています。
紹介報酬(インセンティブ)の相場レンジ数
- インセンティブを設定していない :56.2%
- 1万円未満紹介報酬(インセンティブ) :3.9%
- 1~5万円未満の紹介報酬(インセンティブ) :5.6%
- 5~10万円未満の紹介報酬(インセンティブ) :11.7%
- 10~20万円未満の紹介報酬(インセンティブ):11.7%
- 20~30万円未満の紹介報酬(インセンティブ):1.7%
- 30万円以上の紹介報酬(インセンティブ) :8.8%
相場レンジとしては5~20万円が多くなっていますが、過半数を占めるのは報酬制度を設定していない企業群です。前述した通り、紹介報酬制度を導入したからと言って、全社員が能動的に動いてくれるわけではありません。報酬制度のみで行動喚起される層は全体の1割、大半の層は報酬制度に加えて「その他理由」で受動的に動くためです。また、一部の企業では50万円から100万円程度の高額インセンティブを設定するケースもSNSで散見されますが、他採用チャネルの人材紹介手数料などど比較しても採用コストは下げることが可能になっています。
総計調査は下記レポートをご参照ください。従業員規模によっても報酬レンジは異なる結果となっています。
※ TalentX調べ
紹介報酬(インセンティブ)制度の意義
実は、社員紹介の動機ランキングの上位は金銭などの報酬ではなく、『ホスピタリティ』や『当事者意識』です。これはリファラル採用が先行している米国においても同様の調査結果が出ています。
前者は、「友人のためになりたい」という利他意識であり、後者はロイヤルティやミッションなどで「自社採用を自分事化したい、自社でともに働く人材の選択に自分も関わりたい」という当事者意識です。
ですので、社員を強制的に動かすトリガーとして金銭などの報酬制度を設計しても、1割の社員にしか効果を発揮せず、上手くいきません。
インセンティブによって強制的かつ短期的に紹介促進するのではなく、紹介(採用に貢献)した社員を称賛するきっかけとして、当事者意識を持ってもらうための柔軟な紹介報酬制度の設計とコミュニケーションが重要です。
紹介報酬(インセンティブ)の金額を決めるための考え方
リファラル採用の報酬(インセンティブ)は社員へのコミュニケーションを意識しながら柔軟な設計をする必要があります。紹介活動としての費用、組織貢献としての費用、入社後のフォローとしての費用など、捉え方によりインセンティブの定義は変わりますが、具体例としては下記のような種別があります。
◆リファラル採用の紹介報酬(インセンティブ)の設計事例
- 友人に紹介を行う際の会食費を上限●円まで支給する
- 応募後の面談実施後に●円のインセンティブを支給する
- 入社時にor入社後●ヶ月後に●円のインセンティブを支給する
- 入社後●ヶ月間は毎月●円のインセンティブを支給する
- 内定後にフォローを含めた友人との会食費を上限●円まで支給する
- 入社者にお祝い金として●円を入社●ヶ月後に支給する
- 年間で応募数を最も多く獲得した社員にインセンティブ●円を支給する
- 営業の場合は●円、事務の場合は●円を支給する
上記のように、採用決定時の報酬のみでなく紹介フローの中で柔軟にインセンティブを設計したり、募集職種の採用単価に応じたインセンティブを設計したりすることがあります。また、採用した方に対して入社後に報酬を用意することで、リファラル採用制度を話題にしやすい状況を作り、採用した方やその周りの友人、現場の部署に対してリファラル採用制度を浸透することでまた新たなリファラル採用に繋がり、よいサイクルを生み出すことができます。
報酬(インセンティブ)以外のリファラル採用の報酬例
紹介報酬(インセンティブ)とは別にリファラル採用に対する貢献度合いで表彰等、称賛している企業もあります。
たとえば友人・知人の紹介や採用に応じてポイントを設定し、年間の合計ポイントによるランキングに応じて個人やチームを表彰することです。さらにチームで実施する場合には、個人ではリファラル採用に積極的でなかった社員であっても、チームとして関わることで互いに情報共有やフォローし合い、リファラル採用を自分事化できるというメリットがあります。
ランキングでの表彰だけでなく、累計でのポイント制をつくり、ポイントに応じて何かと交換できるようにすれば社員の中長期的なモチベーションにつながります。
また、報酬付与ではなく人事評価に組み込んでいる会社もあります。金額の大小や形に関わらず、リファラル採用に協力してくれた感謝の気持ちを伝えることが重要です。
いずれにしてもインセンティブを目的とするのではなくあくまで手段として、リファラル採用の推進剤となるよう設計、活用するのが効果的です。
【実践】リファラル採用の報酬(インセンティブ)を設計するうえでの3つのポイント 完全ガイドブック
これまではリファラル採用における報酬(インセンティブ)の意義をご説明いたしました。
これから先は実践編ということで、上記内容の詳細含め、インセンティブ制度設計で気を付ける3つのポイントをお役立ち資料として公開しています。
また、実践編では実際に業界毎にいくらのインセンティブをどのように実践しているか?という各社の事例も具体的施策とともに公開しております。
【読めばわかること】
- リファラル採用における報酬制度設計の意義
- 報酬制度を設計するうえでの留意点
【概要理解編】社員紹介報酬(インセンティブ)制度の意義
- Chapter1 国内のインセンティブ付与状況と動機付け施策
- Chapter2 インセンティブで積極的に動く社員、動かない社員
【実践編】社員紹介報酬(インセンティブ)制度の設計方法
- Chapter1 インセンティブ制度設計で気を付ける3つのポイント
- Chapter2 インセンティブ制度設計 各社事例
当社では、900社の企業と80万人以上のリクルーター社員のご実績をもとに、企業様の課題や社員特性に合わせた独自のリファラル採用制度設計、インセンティブ設計をコンサルティングさせていただいております。
どのように始めればいいかわからない、インセンティブを実施しているものの促進されない、など、企業様独自のお悩みがございましたら気軽にお問合せくださいませ。
監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
この記事は株式会社TalentXが運営するTalentX Lab.の編集部が監修しています。TalentX Lab.は株式会社TalentXが運営するタレントアクイジションを科学するメディアです。自社の採用戦略を設計し、転職潜在層から応募獲得、魅力付け、入社後活躍につなげるためのタレントアクイジション事例やノウハウを発信しています。記事内容にご質問などがございましたら、こちらよりご連絡ください。