今回は近年の労働市場や採用市場の変化にともない注目されてきたタレントプールについてそのメリットや活用方法をご紹介いたします。
目次
タレントプールとは
タレントプールの概念は2001年に米国のマッキンゼー社が発表した調査報告書「The War for Talent」で提唱されました。
タレントプールとは、将来的に自社の採用候補となりうる優秀な人材を蓄えるためのデータベースのことです。
たとえば採用したい候補者がいたけれどその時たまたまポジションがなかった、内定辞退されてしまった、リファラル採用で自社の社員が声をかけたけどまだ動かない優秀層や新卒採用でエントリーのあった大量の応募者などに対して、改めて機会を得られるよう候補者をデータベース化し、いつでもアプローチできる状態に保っておくことです。
タレントプール自体はデータベースであり、タレントプールを活用して採用活動を行なうことをデータベースリクルーティングといいます。
タレントプールを活用した採用手法|データベースリクルーティング
労働市場や採用市場の変化を背景に、企業の採用活動は従来の候補者からの応募を待つ「待ち」の採用手法企業から候補者へアプローチしていく「攻め」の採用手法へとシフトしてきました。
データベースリクルーティングはさらにその一歩先の「戦略」的な採用手法です。採用にマーケティングの概念を取り入れ、採用候補者との関係性を構築し、意向を啓蒙育成していく戦略的採用マーケティングなのです。
データベースリクルーティングではタレントプールに対して、いつか巡ってくるタイミングを逃さず自社への応募を促すよう継続的なコミュニケーションを戦略的に行なっていくことが重要です。
データベースリクルーティングのメリット
母集団形成
日本の中小企業は一年間の新卒や中途、リファラル採用など年間1,000名以上もの候補者のデータを取得しています。大手企業であればその数は数千名を超えるでしょう。
そのこれまで接点のあった候補者の方々をタレントプールとして蓄積し、再びアプローチすることができれば大きな母集団を形成することができます。
採用プロセスの削減
従来の採用手法であれば、採用のニーズが顕在化した時点で求人広告やエージェントに依頼を出し、候補者からの推薦・応募を待つ流れです。データベースリクルーティングの場合、自社で蓄積したタレントプールの中から適切なターゲットにアプローチして、選考活動を進めます。自社だけで完結することができ、採用ニーズが顕在化してから候補者にアプローチするまでの期間を短縮することができます。
採用コストの削減
エージェントを介しての採用活動ですと、人事担当者の工数は削減できるものの採用決定時には数十万から数百万のコストが発生します。求人広告についても露出効果を高めようとするとその分コストは高くなってしまいます。
データベースリクルーティングであれば必要なのは自社からのアプローチだけなので人件費だけで済みます。
潜在優秀層へのアプローチ
日本の労働市場における転職顕在層は一割を満たしません。5660万人の就業人口に対し、2019年では過去1年間における25歳以上の転職経験者数は281万人です(※総務省統計局 労働力調査 詳細集計、非正規雇用者含む)。
このことからも、転職マーケットにいる優秀な人材(自社の採用ターゲット)の大多数は転職潜在層であることがわかりますが、自社と接点のある人材をデータベース化し、将来の採用に結び付けるデータベースリクルーティングでは、既存の採用手法ではアプローチしきれない採用ターゲットとの接点を持ち、人材採用成功率を大きく向上できると考えられます。
データベースリクルーティングを促進するための3つのステップ
では実際にタレントプールを活用し、データベースリクルーティングを推進するためには何が必要なのでしょうか。
タレントプールの構築
データベースリクルーティングを推進するうえで、まず必要なのがタレントプールを構築することです。構築にあたり重要なのは、どんなデータをどのように登録するのかを定義することです。
タレントプールに蓄積するデータは、自社の採用活動において、何らかの要因で離脱(や保留)してしまった候補者や、自社の社員を活用して得られた候補者情報などあらゆる場面で入手することが可能です。
- 新卒採用活動時にエントリーをいただいた学生データ
- 過去内定を出したものの辞退された、その時たまたまポストがなくて採用できなかったキャリア採用における応募者
- 現場社員がおすすめする優秀な知人、将来のリファラル採用候補
- 自社を卒業した元社員、アルムナイネットワーク
など、データベースを構築する手段はいくつも存在しています。
例えば、新卒ナビ媒体等で獲得した応募者情報を、当年の新卒採用活動において利用するだけでなく、彼らが他社に入社したとしても、2~3年後に成長をして自社のキャリア採用のターゲットになりうることを見越し、戦略的にデータ利活用を行うことも有効な手段ではないでしょうか。若手のキャリア採用ポジションをオープンしたとして、既存の採用手法では短期間に数百名の母集団を獲得することは難しいとしても、2年前に一度エントリーしてもらっていた学生である、現在社会人経験2年目の人材500名に直接連絡を行うことは可能になります。
冒頭でもお伝えしたように、タレントプールの構築時に重要なことは、データベースの定義とルールを決める(データクレンジングをする)ことです。
- どんなシーンや経路の人材であれば情報を保有しておくべきか
- どんなスキルや属性の人材であれば情報を保有しておくべきか
- 情報の入力時には、どんなデータを付与すべきか(年齢・性別・大学・在籍社名・職種・スキルなど)
- 保有した人材情報をどうやって分類(カテゴライズ)するか
- 分類した人材別にアプローチ方法は変えるべきか、どうやってアプローチするか
例えば、
過去の選考者のうち「面接を通過したものの、辞退されてしまった人材」や「評価は高かったが、その時の事業フェーズでは空きポジションが無かった人材」がいれば、タレントプールに追加して1年後にコミュニケーションがとれるように「来年アクションすべき人材」のカテゴリーに分類しておき、それまでは定期的に自社のニュースを配信しよう。
社外のコミュニティや勉強会で出会った人材に対し、自社の社員が活躍できそうだと思う知人のリストアップをしてもらい、ご本人の仕事ぶりや転職意向度などがわかるように情報を入力してもえるような仕組みを整えておこう。本人に自社の求人を紹介してもらうのか、自社の管理職クラスから口説いてもらうよう同席してもらえるのか、リストアップされた人材のポジションや役職レベルに応じて、コミュニケーションプランを設計しておこう。
などのルール設定がこれに当たります。
候補者へのアプローチ
タレントプールを構築したら次はそこに蓄積されている候補者へのアプローチが必要ですが、どのように行えばよいのでしょうか。候補者の転職意向度にもよって短期的にアプローチすべき状況であるか、長期的に温めるべき状況であるかは変わりますが、候補者の多くは転職潜在層であり長期戦が必要になってくると考えられます。
長期的なアプローチにおいてのポイントは二つあり、「質の高い」情報を「定期的に」発信するということです。
ドイツの心理学者であるエビングハウスが提唱した忘却曲線によれば、人は憶えようとした記憶のうち、20分後で42%、1週間後には77%の物事を忘れてしまいます。
また、人の転職ニーズがいつ発芽するかについては様々で予測を立てることは難しいです。
そのため連絡したタイミングで転職を検討していない限り、応募にはつながらず、しばらくたつと連絡した内容を忘れてしまいます。
記憶の定着や転職したくなるタイミングに合わせていくという観点から定期的にアプローチしていくことが必要です。
もう一つ重要なのは質の高さです。定期的にアプローチすることが大事だからといって、候補者のまったく興味を引かないようなメールやコンテンツを毎週のように配信してしまうとメール配信を停止されてしまったり、SNSをブロックされてしまうリスクが非常に高いです。候補者にこの企業からの情報は価値があるからチェックしておこうと思われるような内容で配信しなければなりません。前項で挙げた「保有した人材情報をどうやって分類するか」「分類した人材別にアプローチ方法は変えるべきか」というポイントを意識し、ニュースレターやイベント紹介、入社事例の紹介など角度を変えつつも、ご本人にとって有益だと思われるような情報コンテンツを定期的に発信しましょう。
継続させる仕組みの構築
タレントプールに対して、啓蒙育成を行なっていくためには、適切なPDCAを回していく必要があります。
理想は採用専任のプロジェクトチームを組織し、タレントプールの蓄積はどの程度できているか、どのようなアプローチが応募につながりやすいかなど分析できるとスタート地点に立った状態ではないでしょうか。
最終的には入社決定率や応募率向上のために取得すべき情報データが定義され、獲得したデータによって自動的に候補者が分類されてアクションプラン(コミュニケーションプラン)が定まっている状態を目指せるとベストではないでしょうか。
もちろん、人員リソースにも限界があるため、外部ベンダーを活用するのも一つの方法です。
データベースリクルーティングを活用して採用活動を加速させよう
タレントプールを活用したデータベースリクルーティングはここまでご説明した通り、母集団形成や潜在優秀層獲得など多くのメリットがあります。
しかしながら、タレントプールの構築から継続的な採用成果が得られるまでの工程は長く、既存の採用手法に比べると高度な設計と運用が求められてくると考えられます。
- データベースの構築は何からやればいいのか、開発がいるのか?
- データの保有の方法はどうすれば?
- KGIやKPIの設計が難しくPDCAが回らない
- マーケティングはやったことが無くて・・・
- 情報コンテンツはどんなものを作ればいいのか?
など課題がありましたら、ぜひ一度TalentXにご相談ください。