近年人材不足が叫ばれ、中途採用や即戦力人材の採用が進む中で、中長期的な視点から新卒採用や第二新卒を主なターゲットとしたポテンシャル採用も非常に活発になっています。ユニークな採用施策を導入する企業もあらわれており、新卒内定辞退者を一定期間優遇する「ファストパス制度」は話題になりました。
ポテンシャル採用とは、スキルや経験ではなく、応募者の人柄や素養など潜在的な能力を重視した採用方法のことを表わしています。この記事では、「ポテンシャル採用」が注目されている背景情報から、メリット・デメリット、成功のポイントやコツ、推進している企業の事例などをご紹介していきます。
目次<ポテンシャル採用とは?メリットから成功のための注意点やコツをご紹介>
- ポテンシャル採用とは
- ポテンシャル採用が注目されている背景
- ポテンシャル採用のメリット・デメリット
- ポテンシャル採用をする際の注意点
- ポテンシャル採用を成功させるためのコツ
- ポテンシャル採用の導入事例
- まとめ<ポテンシャル採用とは?メリットから成功のための注意点やコツをご紹介>
ポテンシャル採用とは
ポテンシャル採用とは、応募者本人の潜在的な能力(potential)を選考時に評価基準として重視する採用方法のことを言います。ポテンシャル採用では、主に新卒学生や第二新卒をターゲットにした採用活動を行います。既に即戦力となるスキルや経験が身についている人材ではなく、中長期でみて将来的に活躍できるポテンシャル(潜在能力、可能性、将来性)をもった若手人材の獲得を目指す採用手法です。
ポテンシャル採用の概要
ポテンシャル採用は、現在のスキルや経験ではなく、応募者本人の人柄や素養など潜在的な能力を重視した採用手法です。中途採用(キャリア採用)のように現在持っているスキルや能力、経験などを重視し、即戦力として採用するのではありません。ポテンシャル採用では、候補者の過去の実績や経験よりも将来の成長や学習能力、適応力、リーダーシップなどの数年後の活躍やカルチャーフィットを見込んで採用を行います。
主に新卒学生や第二新卒をターゲットにした採用のことをいい、中長期でみて活躍できる人材を各社採用している状況です。
近年、出生率の低下による少子化が進み新卒学生数の減少と高齢化社会などの影響により労働人口の減少が顕著になる中、企業が求人を出しても思うように応募が集まらない、採用できないといった状態になってきています。そこで、若手の人材を中心に、経験や専門知識の有無に関わらず伸びしろのある優秀な若手の人材を獲得し、入社後に能力の開発を行うポテンシャル採用を重要視する企業が増えています。
中途採用(キャリア採用)、新卒採用との違いとは?
中途採用(キャリア採用)との違い
中途採用(キャリア採用)は主に即戦力人材の採用のために実施されるものであり、応募者は企業にとって必要なポジションに合う経験やスキルを保有している必要があります。
ポテンシャル採用は基本的にポジションに対して職務経験やスキルが達していない場合を指すことが多く、その点において中途採用(キャリア採用)とは異なります。
新卒採用との違い
新卒採用は大学生など、学生をターゲットにした採用方法になりますが、ポテンシャル採用は新卒採用の対象となる学生や第二新卒など、より大きなセグメントに対しての採用活動であり、新卒採用とは異なるといえるでしょう。
ポテンシャル採用が注目されている背景
ポテンシャル採用が注目されているのはどういった理由なのでしょうか?
求人倍率の上昇などによる採用市場の激化
出生率の低下、労働人口の減少などから求人倍率は年々上昇しており、採用市場は激化の一途をたどり人材獲得競争といえる状況です。特に即戦力人材の求人倍率は高く、企業は即戦力人材の採用を行いたくても売り手市場である限りなかなか採用充足できない状況が続いています。
そんな中、ポテンシャルのある若手人材を獲得し、中長期的に自社で教育をすることにより、活躍する人材に育成していくポテンシャル採用が注目されているのです。
既存の採用方法では採用が難しい潜在能力の高い人材を採用するため
ポテンシャル採用は、第二新卒や、海外大学の卒業者、海外留学・ワーキングホリデー経験者など、多様な経験を持つ人材を採用するための方法としても注目されています。
通常の新卒採用や中途採用(キャリア採用)には該当しない候補者を、採用間口を広げることによって獲得できる可能性が高まっています。
ポテンシャル採用のメリット・デメリット
業界や職種、また企業規模を問わず、ポテンシャル採用を導入する企業が増えていますが、ポテンシャル採用にはどんなメリットとデメリットがあるでしょうか?
ポテンシャル採用のメリット
ポテンシャル採用を行うことにるメリットとしては、中途採用(キャリア採用)の即戦力人材と比べると前職の企業カラーに染まりきっておらず、「自分の目指すキャリアプランに合う会社で働きたい」「成長環境でスキルを磨きたい」といった主体的に考えて動ける若手人材は、自社のビジネスモデルやサービス、カルチャーに柔軟に溶け込み、新卒社員と同様に大きく成長できる可能性があります。また、ポテンシャル採用は応募者の潜在的な能力や意欲を重視した選考であり、多様な人材が加わることにより新しいアイディアやイノベーションが生まれやすくなります。
さらに、一定の社会人経験やビジネスマナーが身についており、新卒採用と比べ育成コストがかからないので、コストをかけずに優秀な活躍人材を確保することができます。
ポテンシャル採用のデメリット
ポテンシャル採用を行うことによるデメリットとしては、新卒社員と比べると一定のビジネススキルが備わっている可能性はありますが、キャリア採用の即戦力人材と比べると育成が必要な要素も多く、社内の育成体制を強化をする必要があり、教育やオンボーディングに大きな工数とコストがかかることがあります。
また、ポテンシャル採用の対象となる第二新卒など20代の若手は、比較的短い期間で前職からの転職となり、自社に入社した場合にも短期間で離職してしまう可能性は否定できません。
ポテンシャル採用をする際の注意点
ポテンシャル採用を行う上で、以下のような点に注意しましょう。
自社が期待する「ポテンシャル」を明確にする
潜在的な能力に期待するポテンシャル採用と言っても、将来どんな能力を発揮できる人物が欲しいのか、どんな人間性の人物がいいのか、着目するポテンシャルの定義や基準を明確にしなければなりません。
求めるポテンシャルが曖昧なまま採用を進めると、採用基準がブレてしまい、その採用活動を成功させることは難しくなります。求める能力や人物像、価値観などを明確にしてから採用活動を進めましょう。
キャリアパスを把握する
ポテンシャル採用では、応募者がどんなキャリアパスを希望しているのか、選考段階でヒアリングすることも大切です。また企業側は、何年後にどのようなスキルを身につけて、どのような仕事をこなしてほしいか、期待するビジョンを提示しましょう。
応募者と企業側の双方が、入社後に描いているキャリアパスをお互いに共有することで、将来のキャリアプランのミスマッチを防ぐことができます。
社内教育の体制を整える
ポテンシャル採用では、新卒社員ほどの教育は必要ありませんが、それでもその人材を育てるサポート体制が必要です。潜在的な能力がある人を確保できても、その人が持つ能力を伸ばして育てられなければ、意味はありません。
社員の教育には、人員や時間が必要になりますが、それらの体制を整えた上でポテンシャル採用を導入しましょう。
ポテンシャル採用を成功させるためのコツ
ポテンシャル採用で失敗せず、期待通りの優秀な人材を獲得するためには、次のようなポイントを抑えましょう。
企業理念やカルチャーにマッチした人材を採用する
多少スキルが低くともカルチャーマッチしていると、企業と本人の目指すべき方向が一緒であり、ストレッチな目標や作業に対しても前向きに取り組むことができ、成長を繰り返すことで、結果的にスキルがある候補者よりも活躍できることがあります。
スキルはあるがカルチャーマッチしていない人材は、周囲との性格特性や価値観が異なるため、前提となる行動原理が理解出来ず成果が出しにくくなるため、なかなか活躍ができません。また、最悪の場合は他社員のモチベーション低下に繋がり、早期退職を招くこともあります。
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採用広報を通じて自社の採用したい人物像を発信する
企業理念やカルチャーにマッチした人材を採用するには、企業の風土や働き方など、なかなか伝わりづらい現場の「生の声」や会社が大切にしているカルチャーやビジョンを届けることが重要です。
採用広報を通じて自社のありのままの姿を共感・理解をしてもらうことで、カルチャーマッチした人材が自然と集まり、採用候補者と透明性の高い関係性構築をすることで入社後の定着と活躍を期待することができます。
リファラル採用
数ある採用チャネルのなかでもリファラル採用は、自社で活躍する社員が自社の本当の価値を社外の外部の友人や知人に広報活動し応募を獲得する手法です。それにより、本質的なマッチングが期待できるので、ポテンシャル採用において活躍人材を集めるためにも、是非ともリファラル採用にチャレンジすることをお勧めします。
ポテンシャル採用の導入事例
どのような企業が実際にポテンシャル採用を導入しているのでしょうか?
ポテンシャル採用の導入事例:三井住友海上火災保険株式会社
新卒最終面接を通過したものの内定辞退した3年以内の人材を対象とする「MSファストパス制度」を導入し、話題になりました。MSファストパスは2024年から導入された制度ですが、21~23年度の採用活動にさかのぼった内定者にアプローチし、許可を得た方も対象に運用を開始しています。
MSファストパス制度も含めた同社の採用戦略・採用手法について、人事部 採用チーム チーム長の鵜飼氏と同キャリア採用ユニットリーダーの黑川氏に深掘りするが解説するセミナーを実施しました。アーカイブ動画およびセミナーレポートを公開しておりますので、関心がある方はお気軽にご覧ください。
ポテンシャル採用の導入事例:サイボウズ株式会社
ポテンシャル採用と題して、IT業界・職種未経験での採用を行っており、年齢や過去の経験に縛られないさまざまな方を採用しています。新卒採用の枠は別途設けられており、第二新卒や中途採用向けの採用枠だといえるでしょう。
ポテンシャル採用の導入事例:ヤフー株式会社
ヤフー株式会社では2016年10月から新卒一括採用を廃止しており、ポテンシャル採用には新卒・第二新卒など30歳以下の方であれば応募ができるようになっています。また、新卒一括採用のように選考時期が固定でなく、通年で選考実施をされています。
まとめ<ポテンシャル採用とは?メリットから成功のための注意点やコツをご紹介>
労働人口が減少の一途をたどる中、優秀な人材を確保することは、企業にとってますます難しい課題となっています。即戦力の中途採用は採用競合や難易度が高く、かつ求人媒体費用や人材紹介エージェントへの紹介手数料など採用コストが高額になります。
今回ご紹介したポテンシャル採用やリファラル採用などの採用手法を活用して中長期的に採用コストを抑えられるようにしていきましょう。
TalentXではリファラル採用の支援を行っており、社員の方々が簡単に楽しく自発的に友人紹介ができるよう、制度設計から広報施策の提案、改善施策の提示まで、クラウドサービスの提供とリファラル採用に対するコンサルティングを行っております。
中長期的な採用コスト削減に向けて是非弊社サービスを活用頂けますと幸いです。
監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
この記事は株式会社TalentXが運営するTalentX Lab.の編集部が監修しています。TalentX Lab.は株式会社TalentXが運営するタレントアクイジションを科学するメディアです。自社の採用戦略を設計し、転職潜在層から応募獲得、魅力付け、入社後活躍につなげるためのタレントアクイジション事例やノウハウを発信しています。記事内容にご質問などがございましたら、こちらよりご連絡ください。