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2026.06.30更新

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日本企業の採用がうまくいかない本当の理由―「待ちの採用」からの脱却

目次

  • 「採用が難しくなった」のは、景気のせいではない
  • 数字で見る、採用環境の構造変化
  • 「待ちの採用」が機能しなくなった3つの理由
  • 「狩猟型採用」が抱える3つの構造的な限界
  • 採用はどう変わるべきか
  • 採用を「経営資産」に変えるための3つの転換
  • 今日から始められる具体的なアクション
  • まとめ

「採用が難しくなった」のは、景気のせいではない

「以前より採用が難しくなった」「優秀な候補者が集まらない」「採用コストが上がっているのに採用できる人数は変わらない」こうした声は、人事・採用担当者から日常的に聞かれるようになっています。

こうした状況を受け、「採用手法を工夫する必要があるのではないか」「求人媒体を増やすべきではないか」「スカウト文を改善すべきではないか」といった対策に取り組む企業も少なくありません。しかし、その多くが本質的な課題にたどり着けないまま、同様の悩みを繰り返しているのが実状といえるでしょう。

なぜこのような状況が生じているのでしょうか。その背景には、採用手法の問題にとどまらない、日本の採用環境そのものの構造的な変化があります。

本記事では、日本企業の採用がなぜ難しくなっているのか、その根本的な要因と、これからの採用のあり方について整理していきます。

数字で見る、採用環境の構造変化

生産年齢人口の不可逆な減少

日本の生産年齢人口(15〜64歳)は、1995年の約8,700万人をピークに減少を続けており、現在は約7,400万人まで縮小しています。今後もこの傾向は続き、2040年には6,000万人台まで減少すると見込まれています。
出典:内閣府(2022)「令和4年版高齢社会白書」

これは単なる人口統計の話ではありません。企業が人材を獲得できる「市場のパイそのもの」が縮小しているということです。10年前・20年前と同じ採用手法を続けていても、分母となる人材の数が減り続けています。採用が難しくなるのは、構造的に当然の帰結といえるでしょう。

売り手市場への完全移行

かつては、求人を出せば一定数の応募が集まり、企業が候補者を選ぶ構造が成り立っていました。しかし現在では、市場の主導権は候補者側へと移りつつあります。

転職は「特別な選択」ではなく、キャリア形成の一手段として一般化しています。加えて、転職支援サービスの普及やSNSによる情報の透明化、副業・フリーランスといった選択肢の広がりも相まって、候補者は多様な選択肢と情報を持つようになりました。こうした環境下では、企業は「選ぶ側」ではなく、「選ばれる側」として候補者と向き合う必要があるといえるでしょう。

グローバル競争という新たな次元

採用競争は、国内にとどまらずグローバルに広がっています。特にIT・テクノロジー領域では、海外企業が日本の優秀なエンジニアや専門職人材へアプローチするケースも増えています。リモートワークの普及により、候補者は国内企業だけでなく海外企業も含めてキャリアを検討するようになりました。こうした変化により、採用競争はこれまで以上に複雑化しているといえるでしょう。

また、東南アジアの現地採用においては、日本企業の採用競争力が以前ほど高くないという指摘も見られます。「日本企業に入れば安定」という価値観も変化しつつあり、企業ブランドそのものが問われる時代になっています。

採用コストの上昇と成果の乖離

採用市場の変化に伴い、採用コストは上昇傾向にあります。人材紹介会社の成功報酬は年収の30〜35%が相場とされており、採用単価が100万円を超えるケースも珍しくありません。一方で、コストの増加に比例して採用の質や定着率が向上しているとは限らない状況も見受けられます。

この「コストと成果の乖離」も、採用構造そのものに起因する課題の一つといえるでしょう。

「待ちの採用」が機能しなくなった3つの理由

日本の多くの企業では、長年にわたり以下のような流れで採用が行われてきました。

欠員が出る → 求人広告を出す → 人材紹介会社に依頼する → 応募を待つ → 選考する

この「待ちの採用モデル」は、労働力が十分に供給されていた時代には合理的な手法でした。しかし現在では、このモデルが機能しなくなっている理由があります。

転職顕在層にしかリーチできない

第一に、転職顕在層のみにアプローチが限定されてしまう点です。「待ちの採用」は、転職活動中の候補者、いわゆる「転職顕在層」にしかリーチできません。しかし、実際に転職市場に出ている人材は労働人口のごく一部に過ぎません。

優秀な人材の多くは「転職潜在層」に属しています。これは、現在は転職を検討していないものの、魅力的な機会があれば動く可能性のある人材を指します。求人票を出して待つだけでは、この潜在層に十分にアプローチすることは難しいといえるでしょう。

採用が後手に回る構造になっている

第二に、採用が受け身の行動になりやすい点です。「欠員が出てから動く」という発想では、採用が後手に回りやすくなります。事業成長に必要な人材を先回りして確保するのではなく、不足が生じてから補充する構造となるため、採用は常に時間的な制約を受けることになります。その結果、急成長のタイミングで採用が追いつかず、機会損失が生じる可能性もあると考えられます。

「選ばれるための取り組み」が不足している

第三に、「選ばれる努力」をしていない点です。現在の採用市場は、企業が候補者から選ばれる時代へと変化しています。しかし、求人票に書かれた条件だけで候補者を引きつけようとしても、限界があります。

企業のカルチャーや働き方、成長機会、ビジョンを継続的に発信し、「この会社で働いてみたい」と感じてもらう接点を積み重ねていくことが重要になります。

「狩猟型採用」が抱える3つの構造的な限界

日本型の採用モデルを「狩猟型採用」と呼ぶことがあります。必要なときに人材を獲得するこのモデルには、いくつかの構造的な限界が見られます。

限界① 採用コストが「資産」にならない掛け捨て構造

多くの企業が毎年、多額の採用費用を支出しています。求人媒体への掲載費、人材紹介会社への成功報酬、採用広告費などが該当します。しかし、そのコストの大半は「掛け捨て」となっています。

採用活動の中で生まれる応募者データや、接点を持った候補者との関係、関係構築の履歴が、企業の資産として十分に蓄積されていないためです。選考に進まなかった候補者との接点は途切れ、翌年には再びゼロからスタートするケースも少なくありません。

採用管理システム(ATS)を導入している企業も増えていますが、「データを入れる箱」として活用されているにとどまり、採用が「管理」に留まっているケースも見受けられます。蓄積されたデータが次の採用活動に活用されず、眠ったままになっているのが実状です。

毎年同じコストをかけながら、毎年ゼロからスタートする採用が繰り返される状態が、「採用の掛け捨て構造」といえるでしょう。

限界② 転職顕在層の奪い合いという消耗戦

実際に転職活動をしている人材は、労働人口の数パーセントに過ぎません。多くの企業は、この限られた「転職顕在層」を対象に、高額なコストをかけて採用競争を行っています。

人材紹介会社の成功報酬は年収の30〜35%が相場です。採用単価が100万円を超えることも珍しくない中、競合他社も同じ候補者を狙っているため、コストをかけても採用できる保証はありません。

一方で、本当に優秀な人材の多くは転職潜在層に属しています。しかし、この潜在層との接点を持ち、関係を育てるための仕組みを持つ企業は、まだ多くありません。そのため、潜在層との関係を事前に構築できている企業が、これからの採用競争において優位に立つと考えられます。

限界③ 外部依存が続くと自社の「採用力」が育たない

人材紹介や求人媒体を活用した採用は、短期的には合理的な手段といえます。しかし長期的に見ると、企業自身の採用力を弱める可能性があります。

ここでいう採用力とは、候補者との関係を自社で構築できる力、自社の魅力を自社のメディアで発信できる力、そして蓄積した候補者データを次の採用に活用できる力を指します。外部サービスに依存したままでは、これらの力は十分に育ちません。

人材紹介会社に依存している場合、候補者との関係は紹介会社側に蓄積されます。また、求人媒体に依存している場合、応募者データは媒体側に蓄積されます。このような外部依存が続くことで、企業は自社の採用力を十分に高められないまま、外部に頼り続ける構造が固定化されていきます。その結果、採用コストは下がらず、採用競争力も高まりにくい状況が続くといえるでしょう。

採用はどう変わるべきか

世界標準の考え方「タレントアクイジション」

こうした3つの限界を踏まえると、採用のあり方そのものを見直す必要があるといえます。その代表的な考え方が「タレントアクイジション」です。

タレントアクイジションとは、短期的な欠員補充ではなく、企業の中長期的な成長を見据えて人材を獲得していく戦略的な取り組みを指します。

Google、Amazon、Netflixといった企業は、採用を「人事部の業務」にとどまらず、「企業価値をつくる最重要の経営機能」として位置づけています。

彼らにとって採用は、マーケティングと同じ構造を持っています。企業を知ってもらい、興味を持ってもらい、関係を築き、タイミングが来たときに採用につなげる。この一連のプロセスは、顧客獲得のマーケティングファネルと共通しています。

採用においても、「単発のイベント」ではなく、長期的な候補者関係の構築が競争力の源泉となるといえるでしょう。

採用を「経営資産」に変えるための3つの転換

これまで見てきた課題を踏まえると、採用を「掛け捨てのコスト」として捉えるのではなく、「経営資産」として積み上げていく視点への転換が求められます。

そのためには、従来の採用の前提を見直し、採用のあり方そのものを構造的に変えていく必要があります。ここでは、採用を経営資産へと転換していくための3つのポイントを整理します。

転換① 「待ちの採用」から「攻めの採用」へ

欠員が出てから動くのではなく、中長期的な人材パイプラインを事前に構築する発想に変える必要があります。

転職潜在層を含めた候補者との関係を日常的に育てていくことで、将来的な採用の難易度を下げることが可能になります。採用ページの充実、社員ストーリーの発信、定期的な候補者へのナーチャリングコミュニケーションなどが具体的な手段になります。

「今は採用が必要ない時期でも接点を持ち続ける」姿勢が、将来の採用を大きく楽にします。

転換② 「掛け捨てのコスト」から「蓄積される資産」へ

候補者との接点、コミュニケーション履歴、関係性を、企業の資産として蓄積し、次の採用に活用する仕組みづくりが求められます。

選考に進まなかった候補者でも、その人材が将来的に転職意欲を高めたときに真っ先に連絡できる関係を維持しておく。過去に接触した候補者のプールを活用することで、毎回の採用コストを下げながら採用の質を上げることができます。

このような「タレントプール」の構築が、採用を掛け捨てから資産へと変えます。

転換③ 「人事部の業務」から「経営機能の一部」へ

採用戦略を経営計画と連動させ、「どの職種を・どの順番で・どのように採るか」を事業成長の文脈で設計する。そして、採用を単なるオペレーションではなく、経営戦略と連動した取り組みとして位置づけることが重要です。

採用担当者が経営計画に関与できる体制を整えることが重要です。採用担当者が「依頼された求人票を回す役割」に留まっている組織では、採用の戦略性は高まりません。

採用担当者は事業の成長に必要なケイパビリティを先読みし、先手を打てる「事業成長の設計者」であるべきです。

今日から始められる具体的なアクション

採用構造を変えるというと、大掛かりな改革のように感じるかもしれません。しかし実際には、小さな改善の積み重ねが、将来的な採用競争力の差につながっていきます。

まず取り組みたいのは、「感覚で語られている採用」をデータで可視化することです。たとえば、以下のような指標を継続的に確認することで、自社の採用課題が見えやすくなります。

  • 採用リードタイム
  • 1採用あたりのコスト
  • 1年後定着率
  • 早期離職率

「応募は来ているのに決まらない」「採用できても定着しない」といった課題も、数値で分解することで改善ポイントを整理しやすくなります。

また、採用を単なる人事業務として切り離すのではなく、事業計画と接続して考える視点も重要です。採用担当者が経営会議や事業計画の議論に関与することで、「今どの人材が必要なのか」「どのポジションを優先すべきか」という判断基準が変わります。結果として、採用は「欠員補充」ではなく、「事業成長のための投資」として機能しやすくなります。

さらに中長期的には、「候補者との接点を蓄積する仕組み」を持てるかどうかが大きな差になります。具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。

  • 採用CRMの活用
  • タレントプールの構築
  • 候補者との継続コミュニケーション
  • 採用広報への継続投資

こうした取り組みによって、一度接点を持った候補者との関係を継続しやすくなり、採用のたびにゼロから母集団形成を行う負担を減らすことにもつながります。

また、候補者は求人票を見る前から企業を比較・検討しています。企業カルチャーや価値観、社員のリアルな声などを継続的に発信していくことで、「この会社で働いてみたい」と感じてもらえる接点が少しずつ積み上がっていきます。短期的には成果が見えにくい場合もありますが、これらの取り組みは、採用単価や採用スピード、採用品質にも長期的な影響を与える“採用インフラ”になっていくと考えられます。

まとめ

日本企業の採用が難しくなっている背景には、採用担当者個人の努力だけでは解決しにくい構造変化があります。採用の構造そのものが、時代に合わなくなっているためです。

生産年齢人口の減少により、採用できる人材の母数は縮小し続けています。また、売り手市場の進行に伴い、「待ちの採用」は機能しにくくなっています。採用コストの多くは掛け捨てとなり、外部依存が続く限り、自社の採用力は十分に育ちにくい状況にあります。

これからの採用に求められるのは、「どの求人媒体を使うか」といった戦術の選択ではなく、「採用の構造そのものを変えられているか」という戦略的な視点です。採用をタレントアクイジションへと転換し、経営資産として積み上げていく発想が、今後の競争力を左右するといえるでしょう。

採用に課題を感じている企業にとっては、個別の手法だけでなく、採用そのものの位置づけを改めて見直してみることも重要になってくるのではないでしょうか。

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監修者情報

監修 | TalentX Lab.編集部
この記事は株式会社TalentXが運営するTalentX Lab.の編集部が監修しています。TalentX Lab.は株式会社TalentXが運営するタレントアクイジションを科学するメディアです。自社の採用戦略を設計し、転職潜在層から応募獲得、魅力付け、入社後活躍につなげるためのタレントアクイジション事例やノウハウを発信しています。記事内容にご質問などがございましたら、こちらよりご連絡ください。

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