近年では人事分野でリテンションという言葉をよく耳にするようになっています。
リテンションとは、保有、維持、保持などの意味をもつ言葉であり、主に人事分野やマーケティング分野といったビジネスシーンで使用されています。人事分野使用するリテンションは、人材流出防止のための施策を指しています。
この記事では、人事関連で使用されるリテンションの意味や概要から、優秀な従業員を自社に確保しておくためのさまざまな施策として、報酬や福利厚生など待遇の改善、ワークライフバランスなどの働きやすい環境づくり、研修による能力開発やキャリアプランの実現などについて簡単にわかりやすく解説をします。さらに、人事分野でリテンションが注目された背景、メリットや施策についてもご紹介していきます。
「リテンション」目次
- リテンションとは
- リテンションが注目されている背景
- リテンション導入の3つのメリット
- リテンション強化のための5つの施策
- リテンションを実施している企業事例
- 「リテンション」まとめ
リテンションとは
リテンション(retention)とは、保持、維持、保有という意味をもつ言葉です。人事関連で使う場合のリテンションは、社員の退職などによる人材流出防止のための施策のことを指しています。
また、マーケティング関連で使う場合のリテンションは、既存顧客との関係を維持していくためのマーケティング活動のことをいいます。
同じリテンションという言葉は、使われる分野や場面によって意味が異なります。それぞれのケースで使われる意味の違いを理解してリテンションという言葉を的確に使うことが重要となります。
人事用語としてのリテンションとは
人事関連で使われるリテンションとは、社員の退職などによる人材流出防止のために行われる人事施策全般のことをいいます。
優秀な従業員を自社に確保(≒離職防止)しておくためのさまざまな人事施策がリテンションに該当します。具体的なリテンション施策としては、報酬や福利厚生など待遇の改善や、ワークライフバランスなどの働きやすい環境づくり、研修による能力開発や希望部署への異動といったキャリアプランの実現などがあげられます。
マーケティング用語としてのリテンションとは
マーケティングの場面で使われるリテンションとは、既存顧客との関係を維持していくためのマーケティング活動のことをいいます。
すでに契約・購入履歴のある既存のお客様に対して、継続利用の促しや、購入を促す施策等がリテンションに当てはまります。具体的にはメルマガの配信や、SNSアカウントからの情報発信、WEB広告による顧客離れ防止などがリテンション施策としてあげられます。
リテンションが注目されている背景
なぜ人事の場面でリテンションが注目されているのでしょうか?
人事分野でリテンションが注目される理由と背景をご紹介します。
労働人口の減少・慢性的な人材不足
少子高齢化等により労働人口は減少しており、企業は必要な働き手を確保できず慢性的な人材不足に悩まされていることが増えています。そのためリテンション施策によって自社の社員の離職を防止し働き続けてもらうことが重要となります。
総務省のデータでは労働力人口は徐々に減少しており、2065年には2020年対比で約61%まで減少すると推測されています。
欧米諸国では優秀人材の定着のために、報酬制度の見直しや、育成研修、キャリア支援活動が盛んに行われていますが、日本では少子高齢化や急速なグローバル化によって、人材獲得競争が激化し、人材の流動化が激しく進んでいます。
参照:「少子高齢化で労働力人口は4割減」図表2労働力人口と労働力率の見通し/みずほインサイト
https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/mhri/research/pdf/insight/pl170531.pdf
人材の流動化によるノウハウ流出・利益損失
従業員の退職により、個々人が持っていたノウハウやネットワークが失われてしまい、企業の売上・利益が下がることに繋がってしまうでしょう。
また、ノウハウをもった従業員が競合他社に転職すると、技術やノウハウ、人脈なども流出してしまう懸念があり企業にとって既存社員の流出は非常にマイナスです。リテンションは人手の減少を防ぐとともに、ノウハウ流出や利益損失も防止する施策といえます。
リテンション導入の3つのメリット
リテンション導入によって企業にどのようなメリットがあるのでしょうか?
リテンションのメリットとして以下の3つについてご紹介します。
- 採用・育成コストダウン
- ノウハウや人脈の流出防止・蓄積
- 従業員のモチベーションアップ
採用・育成コストダウン
リテンションのメリットの1つ目は、離職率低下に伴う採用・育成コストの削減です。
従業員の離職によるコストは間接的なものまで含めると非常に多きなものになり、企業にとっては大きなマイナスになりますが、その分、離職率が低下すれば非常に大きなメリットになります。
・採用コスト:エージェント費用や採用媒体への掲載料など
・育成コスト:研修やOJT等でかかる外注費や社内工数など
ノウハウや人脈の流出防止・蓄積
リテンションのメリットの2つ目は、離職率低下によるノウハウや人脈の流出防止・蓄積です。
リテンションが注目された背景でもご紹介していますが、終身雇用制度の廃止や活発な転職活動による昨今の人材流動化加速に伴い、ノウハウや人脈の流出が問題視されています。
採用・育成コストに比べて可視化することが難しいですが、企業にとって非常に大きなマイナスとなることが多く、流出防止・さらなる蓄積によるメリットは非常に大きいといえるでしょう。
従業員のモチベーションアップ
リテンションのメリットの3つ目は、リテンション施策実施によるモチベーションアップです。
リテンション施策を行うことによって、従業員は自社から大切にされていると感じ、エンゲージメント向上、モチベーションアップにつながるでしょう。
エンゲージメントが高く、モチベーションの高い従業員が多い企業はリテンション施策を行うことでさらなる離職率低下を見込め、離職率低下とエンゲージメント向上・モチベーションアップの良いサイクルを生み出すことができるでしょう。
リテンション強化のための5つの施策
リテンション強化のためにどんな施策があるのでしょうか?
5つのリテンション強化の施策についてご紹介します。
- 報酬制度改善
- 労働環境の整備(ワークライフバランス)
- 能力開発
- 社内コミュニケーションの活性化
- 社風に合った人材の採用(リファラル採用)
リテンション強化施策① 報酬制度改善
従業員の報酬に対する不満は転職の大きな理由になりますのでリテンション施策として報酬制度の改善はとても重要です。
従業員の成果に見合った正しい報酬を付与するために、分かりやすく透明性のある「正当な人事評価」を行い、従業員の離職を防いでいきましょう。
※給料やボーナスなど、以下さまざまな項目がこの報酬制度改善の対象になります。
・給料、ボーナス、インセンティブ
・福利厚生
・ストックオプション など
リテンション強化施策② 労働環境の整備(ワークライフバランス)
従業員にとって働きやすい環境かどうかは転職を検討する大きな要因あり、テンション施策として労働環境の整備が必要です。
残業時間の削減や有給休暇の取得、テレワークや時短勤務、産休・育休などが当てはまります。
従業員が中長期的に働きやすい環境を整備して離職率低下を図りましょう。
働き方改革とは?目的や社内への導入方法は?メリットや問題点も解説
リテンション強化施策③ 能力開発
研修制度やジョブローテーショなどを通じて従業員が持っている能力がより一層高まるようにしていきましょう。
「成長実感」や「働きがい」は離職の大きな要因になりますので、従業員が継続的に成長でき、それを発揮できる機会を創出することが、リテンション強化には欠かせません。
リテンション強化施策④ 社内コミュニケーションの活性化
リテンション強化には社内コミュニケーションの活性化も大変有効です。「職場での人間関係」は退職の大きな要因になりますので、従業員同士、上司・部下との間での不満が少しでも少なくなるように、
社内SNSや懇親会、イベントなどを通してチームビルディングを行っていきましょう。
多くの手法がありますので企業や従業員の特性に合わせて選定するとよいでしょう。
リテンション強化施策⑤ 社風に合った人材の採用(リファラル採用)
自社の社員がリファラル採用を通して自社の魅力や理念を語る機会を作ることで、エンゲージメントの向上や離職率低下を期待出来たり、インターナルコミュニケーション(社内広報)の機能を通してインナーブランディングの効果を期待することができます。
MyReferではそんなリファラル採用の支援を行っており、社員の方々が簡単に楽しく自発的に友人紹介ができるよう、制度設計から広報施策の提案、改善施策の提示までクラウドサービスの提供とリファラル採用に対するコンサルティングを行っております。
リテンションを実施している企業事例
離職率低下のために多くの企業がリテンション施策を実施していますが、その中でもリテンション施策の成功事例としてよく取り上げられている企業をご紹介していきます。
リテンション実施事例:サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社はグループウェア製品を中心に企業向けのソフトウェアを提供しているIT企業です。メインの商材である「サイボウズ Office」シリーズは、国内2万社を超える企業に導入されています。
◆リテンション施策について
そんなサイボウズでは、社内コミュニケーションの活性化を目的として『社内部活動』を推奨・推進しています。日常的にコミュニケーションをとることが難しい、組織の横のつながりを形成することを目的として、社内コミュニケーションの活性化から部署間の連携スムーズにしたり、業務の効率化につなげています。
①複数の部署をまたがった5人以上の部員で構成する
②年数回の活動報告書の提出をする
上記2点をクリアすれば、どんな部活動も設立することができ、会社から補助を受けられることができます。こうした社内部活動の促進によって離職率低下を成功させたといわれており、実際に離職率が28%から4%にまで低下しています。
リテンション実施事例:三幸グループ
三幸グループは教育事業を担う「学校法人三幸学園」と、人材サービス・資格スクール事業を担う「株式会社日本教育クリエイト」を中心に、計7つの事業を展開するグループ企業であり「教育×人材」をメインの領域として事業展開されています。
◆リテンション施策について
そんな三幸グループでは、『キャリアチャレンジ制度』を導入しています。この制度は、2年間同一の部署に在籍していた従業員が、新たなチャレンジのために他部署への異動を申請することができる制度です。
前述の通り複数の事業を展開している三幸グループでは多種多様なポジションがあり、このような制度と非常に相性がよく従業員の継続的な成長やエンゲージメントの向上を後押ししています。
「リテンション」まとめ
労働人口の減少、人材の流動化が激しい昨今では既存従業員のエンゲージメント向上を図り生産性向上や離職率低下を図ることが非常に重要になっています。今回ご紹介したリテンション施策を通して対策してみてはいかがでしょうか。
監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
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