働き方改革やDXなどの取り組みの中で、RPAという言葉を耳にする機会が多くあります。
RPAとは、コンピューターの画面上における操作を、人間と同じようにロボットが自動で処理を行う技術のことを意味しています。RPAは、Robotic Process Automationの頭文字をとった用語です。
この記事では、RPAの概要と仕組み、RPAツール導入によるメリット・デメリット、RPAが重要視される理由についてわかりやすく解説します。またRPAの導入にあたっての、RPAツールの選び方と導入の流れについてご紹介します。
「RPA」目次
- RPA(Robotic Process Automation)とは
- RPAとAIの違い
- RPAが注目されている3つの背景
- RPAの仕組み
- RPA導入のメリット3つ
- RPA導入のデメリット4つ
- RPAの選び方
- DXの一環でRPA導入を
RPA(Robotic Process Automation)とは
RPA(Robotic Process Automation)とは、パソコンやコンピュータ上において業務操作を自動化できるソフトウエアロボットによって、人間が行うのと同じようにロボットが自動で業務処理を行う技術のことをいいます。
RPAは、「人間の代わりに、決まった手順や繰り返し行う作業を自動でやってくれる技術」のことです。
企業で行われている業務の中には、いつも同じ手順で行う定型的な業務があります。例えば、取引先への請求業務では、請求金額の入力業務や取引先企業へ請求書送付など、在庫確認ではアイテムごとの在庫入力業務などが行われます。そのようなルーティンワークについて、RPAは人間の代わりに業務をこなしてくれるツールなのです。
RPAとAIの違い
便利なロボットというとRPAとAI(人工知能)を思い浮かべますが、この2つは異なるものです。
RPAとAIの違いは、AIには学習能力があり自ら考えて判断し実行できますが、RPAには学習能力はなく指示された処理を行う点になります。
RPAは人間によって指示された作業を正確に繰り返し行うものに対して、AIは大量のデータを読み解き、そこに隠れている新たな規則性や相関関係を見つけることができるものになります。
RPAが「人の手足」のような役割であれば、AIは「人の脳」のような役割だといえるでしょう。今後はRPAをAIで制御させる高度なシステムも生まれていくと考えられます。
RPAが注目されている3つの背景
RPAが注目されている背景としては、現在の日本の企業が直面している3つの課題についてわかりやすく解説します。
- 労働人口の減少
- 労働生産性の低迷
- 働き方改革
労働人口の減少
RPAが注目されている背景の1つ目は、労働人口の減少です。
日本の総人口は、今後長期の人口減少過程に入るとされており、2030年に人口1億1,661万人、2050年には9,707万人と1億人以下になると推計されています。
総人口の減少に伴い労働人口も減少するとされており、企業が事業を行っていくうえで採用による労働力の増加を目指すだけでなく、生産性向上施策を模索する必要が出てきています。
出典:内閣府 第1章 第1節 1 (2)将来推計人口でみる50年後の日本
図1-1-3 年齢区分別将来人口推計データより作成
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2013/zenbun/s1_1_1_02.html
労働生産性の低迷
RPAが注目されている背景の2つ目は、労働生産性の低迷です。
先進37カ国で構成されるOECD(経済協力開発機構)加盟諸国の2019年の国民1人当たりGDPでは、北欧の国々とアメリカが上位に並んでおり、対して、日本の国民1人当たりGDPは、43,279ドル(439万円)で37カ国中26位であり、これは米国の2/3程度に留まります。
労働人口の減少に伴い労働生産性の改善が必要になりますが、前述の通り日本人の生産性は低迷しており、RPAやロボット、その他システムを活用して生産性の向上を図る必要があるといえるでしょう。
出典:公益財団法人日本生産性本部 ⅠOECD諸国の労働生産性の国際比較
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/report_2020.pdf
働き方改革
RPAが注目されている背景の3つ目は、働き方改革です。
労働人口の減少、労働生産性の低迷を、一人当たりの労働時間でカバーすることも可能ですが、近年では働き方改革の考えに代表されるように長時間労働や働きすぎを「悪」としており、労働時間(量)による生産力向上ではなく、生産性(質)向上による生産力向上が求められています。
RPAの仕組み
RPAは、人間が指示した業務のシナリオに合わせて作業を進めます。人間が行っていた業務の手順をシナリオとして作成しそれをロボットに指示することで、そのシナリオにもとづいて作業が行われます。
長時間同じことを繰り返すような大量のデータ入力作業等でも、24時間365日稼働できるので、週末や夜間の時間を使ってRPAに作業させることができます。
しかし、RPAは同じ作業を繰り返すことはできますが、エラーやイレギュラーへの対応はRPA自身では対応できないので、人間が対応・修正する必要があります。また作業の手順に変更が合った場合は、その指示をRPAに行わないとRPAは間違った手順のまま作業を続けることになります。
RPA導入のメリット3つ
RPAを導入することによって得られる主なメリットとしては、「生産性の向上」「コスト削減」「ヒューマンエラーの減少」があります。これら3つのRPA導入のメリットについて解説します。
1.生産性の向上
RPA導入のメリット1つめは、業務の効率化・生産性の向上です。
ロボットは決められたルール(シナリオ)に従って人よりも「速く」「正確」に同じ動作を実行することができるため、時間短縮かつ効率的に業務を行ってくれます。
またロボットはいつでも作業を行うことができるため、夜間や休日といった時間にも、動作実行することができ、同じ作業を人が行うよりも早く実行することができます。
2.コスト削減
RPA導入のメリット2つ目は、コスト(人件費)削減です。
単純作業に関してはロボットが対応できるため、今まで単純労働を担当していた従業員分の人件費を削減することができます。
従業員は単純作業が減少し、より付加価値の高い業務にリソースを割くことができ、より会社にとって有益な作業をすることができます。
3.ヒューマンエラーの減少
RPA導入のメリット3つめは、ヒューマンエラーの減少です。
ロボットは決められたルール(シナリオ)に従って正確に作業を実行するので、人為的なミスを防ぐことができます。
人が作業を行う場合チェックフローを整えても100%ミスをなくすことはできませんが、ロボットは決められたルール(シナリオ)を間違えることはありませんので、ルール(シナリオ)に問題がなければミスは起こりません。
ヒューマンエラー(ミス)の防止や対応のためにかかっていた、上長報告やチェックフロー対応への工数も削減することができます。
RPA導入のデメリット4つ
RPAを導入することによってデメリット・リスクが考えられています。ここでは「停止リスク」「情報漏洩」「同じ作業しかできない」「ルール変更が難しい」のRPA導入の4つのデメリットについて解説します。
1.停止リスク
ロボットはサービス、プログラムの問題や、ネットワークやブラウザといったロボットを扱う環境上で問題があった場合停止してしまう可能性があります。
RPAは自力で解決することはできませんので、人が要因を調べ対応する必要があります。
2.情報漏洩
RPAがネットワークに繋がっている場合不正アクセスやサイバー攻撃によって情報漏洩が起こる可能性があります。また、機密情報を扱った作業をさせている場合、ルール(シナリオ)通りに作業してしまうため、情報漏洩につながるような作業であっても同じ作業を繰り返し行ってしまいます。
3.同じ作業しかできない
RPAのロボットはルール(シナリオ)の内容を、そのまま正確に行うので、ルール(シナリオ)の内容が間違っていても、途中で止まることなく作業を続けてしまいます。
間違った処理でも同じ作業を続けてしまうため、シナリオ実行前にテストを行って問題ないか確認したり、定期的にメンテナンスや修正を行うことが必要になってきます。
4.ルール(シナリオ)変更が難しく担当者に依存する
RPAによる業務の自動化は専門的な知識なくともできますが、複雑な業務フローの場合ルール(シナリオ)設定も複雑なものとなり、修正や変更が担当者に依存してしまうリスクが考えられます。
また、一部設定にプログラミングが必要なこともあり場合によっては専任の担当者以外では修正ができずRPAが効率的に稼働できないことも想定されます。
RPAツールの選び方
RPAを効率的に活用するためには、自社に合った最適なRPAを選ぶことが大切です。
RPAツールを選ぶ際は、以下のような点を基準に選定をするとよいでしょう。
RPAツールの種類
RPAのツールには大きく分けて3種類のものがあります。自社にどの種類のRPAツールが合うのか検討し、適切なものを選定しましょう。
【サーバー型RPA】
サーバーにRPAをインストールする種類で、自社のサーバー内の作業を実行することが得意なRPAです。
自社のサーバー内で動作し、ロボットと各PCを接続することで業務を横断的に管理実行することができます。
他種類と比べて費用が高額であり自社の規模と予算計画によっては導入ができない可能性もあるでしょう。
【デスクトップ型RPAツール】
PCにRPAをインストールする種類で、インストールしたPC内での作業を実行することが得意なRPAです。
他PCとの連携や大量データを扱うことが少ないためスモールスタートで始めやすく、かつ管理しやすいのが特徴です。
また、サーバー型RPAと比べて費用が安価なため導入ハードルは低くなるでしょう。
【クラウド型RPAツール】
クラウド上にあるRPAによって業務を自動化する種類で、サーバーやPCにインストールをする必要がないため、さまざまな端末や環境で業務の効率化をすることができます。
導入コストを抑えたい、または、エンジニアではない従業員が操作する場合は、管理が比較的容易であるデスクトップ型。
自由にカスタマイズしたい、ないしは、社内業務を横断的に効率化したい場合は、大容量データの一括管理が可能なサーバー型。
リモートワークをしている従業員が多い、または、クライドサービス上で提供されている業務の自動化をしたい場合は、パソコンにインストールする必要がないクラウド型が適しているといわれています。
専門家や業者に相談して、目的に合ったRPAを選ぶようにしましょう。
自動化実績の確認
自動化する業務内容が明らかになっている場合は、同業界・同業務の自動化実績が豊かなRPAの導入を検討すると、マッチング率が高まるはずです。しかし、同じ業務でも、「ここはあえて自動化したくない」など、企業ごとに重視するポイントが違うことがほとんどです。RPAの導入事例をしっかりと確認したうえで、自社の業務内容と照らし合わせてツールを選択しましょう。
費用対効果が合うかどうか
業務の自動化にふさわしいRPAツールを取り入れたとしても、導入コストを上回る利益・成果が出せなければ意味がありません。導入前に、業務の自動化で削減される工数や時間によって得られる利益を確認し、RPAツールの機能と価格をしっかりと検討しましょう。
DXの一環でRPA導入を
近年、多くの企業で、デジタルツールを活用した業務効率化を目指す「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が進められています。RPAはDXの一環で、業務の効率アップと企業の成長につながると期待できます。是非一度RPAの導入を検討してみてはいかがでしょうか?
監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
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