
近年では2025年問題でも課題として取り上げられているように、サクセッションプランという言葉が注目されています。この、サクセッションプランとは、幹部候補者など事業の後継者を育成することや、後継者育成計画のことを指しています。サクセッションプランを策定するメリットとデメリットには、何があるでしょうか?
本記事では、サクセッションプランの概要から、サクセッションプランのメリット・デメリット、導入する際の流れと、成功事例についてわかりやすく簡単にご紹介します。
「サクセッションプラン」目次
- サクセッションプランとは
- 人材育成や後任登用との違い
- サクセッションプランが重要視される背景
- サクセッションプランのメリット・デメリットとは
- リファラル採用で幹部候補・事業責任者を採用しよう
- サクセッションプランの導入の流れ
- サクセッションプランの導入状況
- サクセッションプランの成功事例3選
- サクセッションプランでより成長できる組織づくりを
サクセッションプランとは
サクセッションプラン(Succession Plan)とは、企業の経営層や重要なポジションの後継者を計画的に選定し、育成するための仕組みです。経営トップだけでなく、部門責任者や専門職など、組織の将来に大きな影響を与える人材の継承を目的としています。
従来の「後任人事」と異なり、サクセッションプランは単なる欠員補充ではなく、将来的な組織の成長と安定を見据えた戦略的な取り組みです。企業の経営戦略と連携しながら、適切なリーダーシップを持つ人材を早期に見極め、継続的な育成を行います。
サクセッションプランの概要
サクセッションプランは、企業や組織において将来のビジネスチャンスを担う重要なポストや人材を特定し、後継者不在による事業成長が実現きなかったり事業継承者の不在といったリスクを回避することを目的にした計画と施策のことを指しています。
人材育成や後任登用との違い
まず、サクセッションプランと人材育成の違いは、育成する目的と育成担当者になります。
サクセッションプランの目的は、幹部候補者など事業の後継者を育成することに対して、人材育成の目的は、従業員に対する育成すべてを意味しておりサクセッションプランよりも広義になります。育成の担当者の観点で見ると、一般的な人材育成では、人事部が主体となって育成を行っていきますが、サクセッションプランで主体となる育成担当者は経営陣が行うことになるでしょう。
次に、サクセッションプランと後任登用の違いは、事業後継者を育成(育成計画)するのか?選抜(方法)するのか?の違いになります。
後任登用の場合は主に経歴や過去のキャリアからから判断して採用することになりますが、一方、サクセッションプランでは企業の経営理念や経営戦略に沿って、後継者にふさわしい人物を人選し、時間をかけて育成していきます。
サクセッションプランが重要視される背景
近年、企業を取り巻く環境は急速に変化しており、経営の継続性と組織の持続的成長を確保するため、サクセッションプランの重要性が増しています。その背景には、コーポレートガバナンス・コードや人材版伊藤レポートなどの指針において、後継者育成の必要性が強調されていることが影響していると言えるでしょう。
コーポレートガバナンス・コードの導入(2015年):
企業統治の強化が求められ、経営の透明性や持続可能性を確保するため、後継者育成の重要性が指摘されています。このコードの導入により、企業は経営陣の計画的な育成と選定を求められるようになりました。
ISO30414の制定(2018年):
人的資本の情報開示に関する国際規格が制定され、企業は人材育成や後継者計画に関する情報を開示することが推奨されています。これにより、企業は自社の人材戦略を外部に示す責任が増し、サクセッションプランの策定と実行が一層重要となっています。
人材版伊藤レポートの発表(2020年):
経済産業省が公表したレポートで、人的資本経営の重要性が強調され、特に経営人材の育成と配置が企業価値向上の鍵とされています。このレポートは、企業が人材育成を戦略的に捉え、後継者育成を経営課題として取り組む必要性を示しています。
さらに、少子高齢化による労働力人口の減少や、技術革新の進展に伴うビジネスモデルの変化など、外部環境の変化もサクセッションプランの重要性を高めています。これらの要因により、組織の安定性や競争力を維持するために、計画的な後継者育成が求められていることがサクセッションプランを各社が重要視している背景といえるでしょう。
サクセッションプランのメリット・デメリットとは
ではサクセッションプランを立てることで、どのようなメリットとデメリットが考えられるでしょうか?
サクセッションプランのメリット
サクセッションプランの大きなメリットは、後継者不在による経営不振や組織の混乱などのリスクを避けられることです。
サクセッションプランを活用することによって、経営者不在による突然のM&Aや経営陣、経営方針の変更などのリスクを避け、その企業が培ってきたカルチャーや強み、オリジナリティを守ることができます。
またサクセッションプランでは、人事や経営陣の指示ではなく、従業員の希望による人事異動制度「インターナルモビリティ」などを利用して、従業員のエンゲージメント向上、組織全体の活性化を期待することができます。
グローバルな人材と企業を育てる!インターナルモビリティの重要性
サクセッションプランのデメリット
サクセッションプランのデメリットは、中長期的な育成コストと成果がすぐに表れないことです。
サクションプランは数年から10年ほどの長期的なスパンで計画・実施する必要があり、更には対象の期間に後継者候補が退社することも考えられ、成果までには多くの時間とコストがかかることが想定されます。
サクセッションプランでは時代や社会の変化にあわせて後継者候補を定期的に見直したり、注意深く取り組む必要があるでしょう。また後継者候補外となった従業員に対しては、モチベーションダウンにならないためのフォローも必要になってきます。
リファラル採用で幹部候補・事業責任者を採用しよう
MyReferの「コロナ禍の転職意向調査」によると、マネジメントクラスでは33.3%、役員クラスでは100%の人がリファラル採用で転職決定をしていることがわかります。
幹部候補や事業責任者、役員相当の人材を育成するには相当の時間が必要になりますので、リファラル採用による候補者採用を検討してみてはいかがでしょうか。
サクセッションプランの導入の流れ
サクセッションプランを策定するためには、どのような手順で進めていけばよいのでしょうか?サクセッションプランの導入の流れについて、ご紹介します。
経営戦略やMVVの明確化
サクセッションプランは企業のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)と経営戦略をもとに計画・実施します。そのため自社が創業時から大切にしている経営理念や経営戦略について改めて確認し明確化しましょう。自社をとりまく環境や社会状況も鑑みて守るべきものと変えるべきものを見極め、自社が向かっていくべき経営戦略を明確にしましょう。
後継者が必要なポジションの洗い出し
明確化した経営戦略を実現するためには、経営陣のほかどのようなポジションが求められるか洗い出しを行いましょう。その際、既存のポジションにこだわる必要はなく、実現したい経営戦略やMVVに応じて、新しい部署の新設や編成なども考えポジションを洗い出しましょう。
各ポジションの求める人物像を明確にする
それぞれのポジションにどんな人材が必要なのか、必要となる要件を洗い出します。スキルやノウハウはもちろん、リーダーシップやコミュニケーション能力、マインドセットなど条件を細かく設定し人物像を明確にしていきましょう。
サクセッションプランの候補者の選出
求める人物像に合う候補者を選び出します。サクセッションプランでは、長期的に候補者を育成していくので、現時点ですべての要件を満たしている必要はありません。
今後、各要件を満たすポテンシャルがあるのか?必要なポジションに応じて、候補者を複数名選出しましょう。
候補者の選出方法としては、自他による推薦方式やアセスメント方式、選別試験等が考えられます。
育成計画の策定・実行
サクセッションプランによって、どのように候補者を求める人物像まで引き上げるのか?計画を策定し、実行に移しましょう。
サクセッションプランは長期的な施策になりますので、計画の変更など途中修正ができるようにPDCAを回すタイミングも事前に計画しておきましょう。
サクセッションプランの導入状況
経済産業省の発表によると東証1部・2部上場企業2,569社に行われたアンケート調査で「後継者の計画(サクセッションプラン)が何らかの文書として存在している」と答えた企業は11%にとどまっており、
また、何らかの文章として作成している場合であっても後継者の評価基準や選定プロセス、育成計画については過半数の企業でプランに盛り込まれていないことがわかっています。
このように、現状セクションプランはほとんどの企業で明文化されておらず、後継者育成に関する計画が明確にできていないことがわかります。
出典:平成29年度 コーポレートガバナンスに関するアンケート調査(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/cgs_kenkyukai/pdf/2_003_03_00.pdf
サクセッションプランの成功事例3選
サクセッションプランを実行し成功している企業の事例をご紹介しましょう。
サクセッションプラン成功事例:トヨタ自動車株式会社
世界をリードするトヨタでは、中長期的な視点から人事育成に力を入れ、組織全体の底上げを図っています。「GLOBAL21プログラム」と名付けられたグローバル人材育成プログラムを1990年から推進。具体的にはキャリアパスの提示と自己申告制度による本人意思・意欲の確認などを行い、特に優秀な従業員には将来のリーダー候補としてサクセッションプランによる育成計画を進めています。
サクセッションプラン成功事例:花王株式会社
花王では、基幹人材の育成を目的に「花王ウェイ」を設定しているとされ、人財を3つに分類してサクセッションプランを行っています。
下記のようにそれぞれ分類し各育成プログラムを作成。中長期でのサクセッションプランを策定しています。
・今すぐ後任となれる人材
・1~3年で後任として育成する人材
・3~5年で育成する人材
サクセッションプラン成功事例: 株式会社良品計画
「無印良品」のブランドを国内外に展開している良品計画では、課長以上の役職・ポジションに対してサクセッションプランを導入しており、「プロフィールシート」「ファイブボックス」「キャリパー・ポテンシャル・レポート」という3つのツールを駆使してサクセッションプランが遂行されています。
サクセッションプランでより成長できる組織づくりを
安定して成長を継続できる企業には、サクセッションプランが必要不可欠です。サクセッションプランを実際に取り入れている企業はまだ一部ですが、日本を代表する企業などは人材育成やサクセッションプランを重要視しています。時代に合わせて成長できる企業を目指すために、サクセッションプランについて検討してみてはいかがでしょうか。
監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
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