昨今さまざまな企業で、個々の従業員が持つタレント、スキルやノウハウを最大限活かすため戦略的に人材配置や人材育成を行うタレントマネジメントが導入されています。
タレントマネジメントとは、従業員が持つ能力やスキル、経験やノウハウを最大限活かすため戦略的に人材配置や人材育成を行うことを意味しています。タレントマネジメントは、人材流動化の激しいアメリカで提唱された始めた人材戦略です。
本記事では、タレントマネジメントの概要から注目されるようになった背景、導入の目的やメリットと効果、また導入の手順についてわかりやすくご解説していきます。
目次<タレントマネジメントとは?導入の目的やメリットと効果、手順をわかりやす解説>
- タレントマネジメントとは
- タレントマネジメントが注目される背景
- タレントマネジメントの目的
- タレントマネジメントの導入効果とメリット
- タレントマネジメントの導入手順
- タレントマネジメントの導入の際に気を付けるポイント
- MyReferを活用してタレントマネジメントを加速させよう
タレントマネジメントとは
タレントマネジメント(talent management)とは、個々の従業員が持つタレント・能力、スキルやノウハウを最大限活かすため戦略的に人材配置や人材育成を行うマネジメント手法です。タレントマネジメントの対象は、社員、パート・アルバイトなど、組織の全ての従業員が含まれます。人事用語としてのタレントマネジメントで使われる際のタレント(talent)は、特定の分野での技能や才能を指しています。
タレントマネジメントは元はアメリカで提唱された人材戦略の一つですが、近年は多様化が推進されている日本でも注目され導入が進んでいます。
人事評価や処遇・待遇の決定、異動や育成(教育)など人事業務のすべてがタレントマネジメントと紐づいており、タレントマネジメント≒人事戦略といえるでしょう。
タレントマネジメントが注目される背景
なぜタレントマネジメントが日本で注目されるようになったのでしょうか?
タレントマネジメントが注目を集める4つの背景について解説していきます。
労働人口の減少
タレントマネジメントが注目される背景の1つ目は、労働人口の減少です。
総務省のデータでは労働力人口は徐々に減少を続け、2065年には2020年対比で約4割減になると推測されており、今後、人手不足による採用市場の激化が予想されています。
(注)2016年は実績。2020年以降は、男女別、年齢5歳階級別の労働力率を2016年と同じとして算出
(75歳以上は、2016年の75歳以上の労働力率を75~79歳の労働力とし、80歳以上はゼロとして算出)
(資料)総務省「労働力調査年報」(2016年)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2017年4月推計)
出典:「少子高齢化で労働力人口は4割減」図表2労働力人口と労働力率の見通し/みずほインサイト
https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/mhri/research/pdf/insight/pl170531.pdf
人手不足が予想される日本において一人ひとりの生産性向上は企業にとって非常に重要な課題でありそういった背景からタレントマネジメントが注目されています。
働き方改革による長時間労働の是正
タレントマネジメントが注目される背景の2つ目は、働き方改革による長時間労働の是正です。
日本政府が発表した、働き方改革3つの柱の一つに「長時間労働の是正」が組み込まれており、「時間外労働の上限規制(法第36条、法第139~142条)」や「勤務時間インターバル制度」の導入推進などにより働きすぎを防止しており、仕事(業務)が多くあっても従業員に長く働いてもらうことは難しくなっています。
業務量を稼働時間でカバーすることが難しいことが予想される中、一人ひとりの生産性向上は企業にとって非常に重要な課題でありそういった背景からタレントマネジメントが注目されています。
労働生産性の低迷
タレントマネジメントが注目される背景の3つ目は、労働生産性の低迷です。
先進37カ国で構成されるOECD(経済協力開発機構)加盟諸国の2019年の国民1人当たりGDPでは、日本は43,279ドル(439万円)で37カ国中21位であり、これは米国の2/3程度に留まります。
また、G7:主要先進7か国(アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・日本・カナダ・イタリア)の労働生産性比較では、1970年以降最下位となっており、生産性の低さは長年の課題になっています。
出典:公益財団法人日本生産性本部 ⅠOECD諸国の労働生産性の国際比較
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/report_2020.pdf
生産性の低迷が続いている日本において一人ひとりの生産性向上は企業にとって非常に重要な課題でありそういった背景からタレントマネジメントが注目されています。
テクノロジーの進化
タレントマネジメントが注目される背景の4つ目は、テクノロジーの進化です。
人事評価や人材のスキル・ノウハウの可視化、定量化は難しく、多くの企業で担当者の経験を頼りに行われてきましたが、人事分野での技術「HRテクノロジー」の進化が進んだことでそれらが解消されつつあります。今後DXなどの追い風もありさらにテクノロジーの進化が進みタレントマネジメントが実施しやすくなることが考えられます。
タレントマネジメントの目的
タレントマネジメントを行う目的は何なのでしょうか?ここではタレントマネジメントの目的として「人材採用」「人材育成」「生産性向上・パフォーマンス向上」「リテンション効果」の4つをご紹介します。
タレントマネジメントの目的① 人材採用
企業の経営目標・事業目標に対して必要な人材の採用を行うためにタレントマネジメントは非常に有効です。本来「採用」と聞くと外部向けの「採用活動」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
タレントマネジメントでは人材の最適配置の考え方から企業が求めるポジションに必要な人材を社内で採用することを進めていきます。
タレントマネジメントの目的② 人材育成
タレント(従業員)と企業がキャリア開発を一緒に行い企業・従業員が求める目標に向かって足りないものを部署異動や研修で補っていきます。
従業員一人ひとりによって求める・求められるキャリアは異なりますが、双方が歩み寄り目標に向かって最適なタレントマネジメントを行っていきましょう。
タレントマネジメントの目的③ 生産性向上・パフォーマンス向上
タレント(従業員)の状況やスキル、ノウハウに合わせた部署異動を行うことで従業員一人ひとりのパフォーマンス最大化を目指すことができるでしょう。
従業員の最適配置によって個人、組織の成果が最大化することによって、企業の売上・利益拡大が期待できます。
タレントマネジメントの目的④ リテンション効果(≒離職防止)
タレントマネジメントによってタレント(従業員)の目指すキャリア・働き方に寄り添いキャリア開発をすることでリテンション効果(離職防止)が期待できるでしょう。
人材の多様性(ダイバーシティ)や働き方の多様性が叫ばれる昨今において、個々に合わせた施策やマネジメントが求められています。
タレントマネジメントの導入効果とメリット
タレントマネジメント導入によってどのようなメリットや効果があるのでしょうか?
こちらでは下記5つのメリットや効果について紹介していきます。
1.タレント(従業員)のモチベーション向上・エンゲージメント向上
タレントマネジメントでは、タレント(従業員)の考え方や能力、ノウハウに合わせてキャリア開発や目標を設定するため、仕事に対する満足度やモチベーション・コミットメントが高くなることが想定できます。これは、タレント(従業員)が特別な存在としてあり続けたいと思っていたり、会社や上司からの信頼に応えたいと思っているからです。
2.タレント(従業員)の生産性向上・スキルアップ
タレントマネジメントでは、「1.」のようにモチベーション向上・エンゲージメント向上の効果とそれに合わせて業務に対するコミットメントが高くなることが想定されます。
つまり、一人ひとりの生産性向上が見込むことができ、かつ企業の売上や利益拡大につながることが考えられるでしょう。
また、配置転換や人材育成の実施によって一人ひとりのスキルアップやノウハウの向上が期待できます。
3.タレント(従業員)に対するインナーブランディング効果
タレントマネジメントでは、タレント(従業員)に合わせてキャリア開発や目標を設定したり、育成を行っていきますので、企業に対して「信頼」や「愛着」といった感情を抱きやすく、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)への共感等インナーブランディングと同じような効果を得ることが期待できます。
4.タレント(従業員)に対するリテンション効果
タレントマネジメントでは、タレント(従業員)の研修による能力開発や、タレント(従業員)に合わせたキャリア開発を行うことでリテンション施策(≒離職防止施策)と同じような効果を得ることが期待できます。
リテンションとは?メリットやリテンション強化のための5つの施策をご紹介
5.タレント(従業員)の最適配置と幹部候補の育成
タレントマネジメントでは、タレント(従業員)のスキルやノウハウに合わせた部署異動などを行いますので、企業の状況や従業員の状況に合わせた最適な配置を模索・検討することができます。
また、キャリア開発を企業と従業員が一緒に行っていくことで次世代の幹部候補も育成することができサクセッションプランにつなげていくことができると期待できます。
タレントマネジメントの導入手順
タレントマネジメントの仕組みは、適切な手順に沿って導入を進めることが重要です。ここでは、タレントマネジメントの導入手順について、詳しく解説します。
①人材戦略に基づいたタレントマネジメントの目的・目標設定
人材戦略はもちろん、中期経営計画や企業理念、MVVに基づいてタレントマネジメントの目的・目標の設定を行いましょう。
手段が目的化してしまい、タレントマネジメントを導入することがゴールになってしまうと本来の力を発揮できず失敗に終わってしまいますので、タレントマネジメント導入によって目指すべき姿を定義し、定量的なゴール設定を行っていきましょう。
②人材評価とデータの整備
人事評価制度等を使いながら従業員のスキルやノウハウ、仕事への姿勢、志向性などを評価・可視化することで、タレント(従業員)のデータ収集・整備を行っていきます。
属性やスコア毎にグルーピングを行いその後の活用を考えタレントプールを行いましょう。
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③人材配置計画・育成計画の作成、実行
①の目標に対して②のデータから、どのタレント(従業員)を配置転換させるのか?どのタレント(従業員)を育成するのか?計画をたてていきます。
場合によっては従業員の考えに計画が沿わないことも考えられますので、複数の候補者からすり合わせを行い最適なタレント(従業員)を選定していきましょう。
また、定期的に状況のモニタリングを行い配置転換、育成を行ったタレント(従業員)の状況確認・把握を行いながら計画の修正やフォローアップをしていきましょう。
タレントマネジメントの導入の際に気を付けるポイント
タレントマネジメントには多くのメリットがありますが、うまく活用していくには気を付けなければならないポイントがあります。タレントマネジメントを導入する際に気を付けるポイントをわかりやすく解説します。
タレントマネジメントの導入を目的にしない
昨今さまざまな企業からタレントマネジメントのシステムがリリースされており、非常に多くの企業で導入が進んでいます。ただ、タレントマネジメントはあくまでも手段の一つにすぎず、企業が目指すべきゴールはその先の生産性向上やリテンション効果等、最終的には売上・利益に繋がらなければ意味がありません。
導入手順でもお伝えしましたが、タレントマネジメントを導入する「目的」「目標」をしっかりと定めタレントマネジメントを活用していきましょう。
タレント(従業員)の「考え」「想い」を尊重する
タレントマネジメントはどうしても人事や導入担当者が主導となってタレント(従業員)へアプローチ・キャリア開発していくことになりますが、会社の求めるものと従業員が求めるものが異なることもありますので、そのことを理解したうえで最適な運用をしていく必要があります。
最悪の場合一方的な施策や方針によってタレント(従業員)のエンゲージメント低下に繋がり退職や周囲の従業員のエンゲージメント低下にまでつながることも考えられます。
MyReferを活用してタレントマネジメントを加速させよう
MyReferではリファラルの優秀な人材をタレントプールすることができ、社外の見込み人材に対して継続的に採用アプローチをすることができます。
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監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
この記事は株式会社TalentXが運営するTalentX Lab.の編集部が監修しています。TalentX Lab.は株式会社TalentXが運営するタレントアクイジションを科学するメディアです。自社の採用戦略を設計し、転職潜在層から応募獲得、魅力付け、入社後活躍につなげるためのタレントアクイジション事例やノウハウを発信しています。記事内容にご質問などがございましたら、こちらよりご連絡ください。