人材獲得競争がますます激しくなる中で注目されている採用CX(Candidate Experience)。応募から内定までの選考プロセスにおいてよりよい候補者体験を提供することは、候補者の内定承諾率の向上や再応募の可能性のあるタレントプール構築につながります。
そんな採用CXを戦略的に進める中で欠かせないのが、候補者にヒアリングするCXサーベイです。今回は、CXサーベイの導入を検討している方へ具体的な質問内容と活用事例についてご紹介します。
選考して終わりではなく、「CXサーベイ」を取るべき理由
そもそも採用CX(Candidate Experience)とは、応募から内定までの選考プロセスにおける候補者体験のことです。有効求人倍率が高まり人材獲得競争が激しくなる中、企業は選考を通して候補者を見極めるだけではなく、候補者の本来の強みを引き出し、会社の魅力を正しく伝えることが重要になっています。
採用CXを向上するためのファーストステップとして、採用候補者全員へCXサーベイを取ることをおすすめします。まずは自社の選考体験の課題を特定し、それをもとに選考プロセスの改善や面接官トレーニングなどの施策を検討していきましょう。
「CXサーベイ」はどんな質問を聞くべきか?
CXサーベイで聞くべき基本的な質問をご紹介します。
1.自社の選考体験の現在地を把握する
まずは自社の選考体験の現在地を明らかにしましょう。選考を通じて会社の魅力づけができているかどうか、そして候補者のニーズや想いを理解して強みを引き出せているかどうかが重要です。
よい選考体験が与えられたのか、候補者からフィードバックをもらうために設定する質問例は下記のとおりです。
- 今回の選考で当社の事業についてどれくらい理解が進みましたか?
- 戦略ビジョンについてどれくらい理解が進みましたか?
- 今回のポジションやミッションについてどれくらい理解が進みましたか?
- 自分の強みを発揮できましたか?
- 面接官が自社の魅力を伝えられていますか?
- 知人、友人にこの会社を紹介したいと思いますか?
2.辞退理由から改善のヒントを得る
次に、具体的な辞退理由を聞きましょう。特に選考辞退や内定辞退になった候補者の意見からは、選考体験の改善につながるヒントが得られるでしょう。
- どんな理由で選考を辞退しましたか?
- どんな理由で内定を辞退しましたか?
- この点がよければ辞退しなかったというポイントはありますか?(事業内容、条件、ミッションetc.)
候補者が選考や内定を辞退する理由の中には「選考時と内定時のギャップ(例えば働き方や想定していた条件の相違など)」や「選考結果連絡を待たされた、他社と比べて返事が遅く誠意を感じられなかった」「面接時の人事や現場面接官の態度が悪かった、いい雰囲気で選考を進めることができなかった」ことなど様々です。
先に原因がわかっていれば、辞退を防げたかもしれません。
3.タレントプールへの登録を促す
最後に、貴重なご縁を絶やさないようタレントプール登録を促す質問をしましょう。タレントプール登録を導線として入れることができれば、今回はご縁がなかった候補者の方とも接点をもつことができ、今後お互いの状況が変わることで再応募に繋がる可能性もあります。
質問内容は、タレントプールの登録許諾を得ることだけでなく、候補者が「どこの企業」で「何をミッションとするのか」聴取することで、候補者個々人に寄り添ったコミュニケーションをとりながら、継続的な接点を持ち続けることができるでしょう。
- 今回の転職活動ではどの会社に行くことを決めましたか?
- 今後求人情報をお送りするために、タレントプールとして登録してもよいですか?
CXサーベイをどのように活用するか
それでは、集計したCXサーベイはどのように活用すればよいのでしょうか。それぞれの会社の課題仮説に沿ってCXサーベイを設計し、下記のようなパターンで活用することを提案します。
1.面接官にフィードバックして育成する
候補者に自社の魅力が伝わっていない事実が明らかになった場合、その魅力をしっかり伝えるために伝え方を工夫するようにします。また候補者が強みを発揮できなかったと感じていたら、選考時の問いの深堀り方を変え、候補者の話をより長く聞くように時間配分を調整します。
採用CXを向上させるために面接官に求められるミッションは、見極めや粗探しをする質問のみではなく、見極めながら動機づけし、候補者の良さを引き出す会話です。
フィードバックを通じて面接官の育成を行うことで、選考辞退率や進捗率が安定化するだけでなく、正確に自社の魅力が候補者に伝わり、採用活動を通じて自社のブランドが形成されていきます。
2.面接官のアサインを変える
場合によっては面接官のアサインを変えることも重要です。特に新卒採用などでは面接官が数十人いるケースもあるので、そのなかで評価が低い面接官は柔軟に入れ替えることが大事でしょう。
候補者にとっては、選考時に対話した面接官が企業そのものとみなされることが多いです。候補者に優れた選考体験を提供し、採用の顧客体験(CX)を向上させるためには、面接官が成長するためのトレーニングだけでなく、適切な面接官のアサインとともに、選考時の評価を適切に収集することも必要です。
3.選考プロセスを改善する
「選考のスピードが遅い」というフィードバックがあった場合には、他社の選考よりも早く進められるようにしたり、日程調整を外部に委託するRPO(Recruitment Process Outsourcing)を導入するなど、選考プロセスを改善していきます。
選考スピードや連絡の遅さは、候補者に不安や企業への不信感を抱かせるだけでなく、他社の選考によって候補者のスケジュールが埋まってしまったり、他社の内定後に回答期限を設定され、選考に間に合わず辞退されるなどの問題が生じます。そのため、プロセスの改善によって得られる効果は非常に大きいことがわかっています。
4.辞退理由の最大公約数から人事制度などを変える
辞退理由には、選考体験に関わるものから、人事制度や報酬、キャリアステップに関わるものまで様々あるでしょう。そのなかで最大公約数を取って改善することで、選ばれる企業に変革していくことが重要です。
5.再スカウトの素材とする
タレントプールへの登録を促した場合は、今回の辞退理由や選考へのフィードバックを、次回以降のスカウト文面やタイミングの参考にします。当社からのオファーを受け取りたいという意向をもらっておくことで、今後の中長期的な接点の確保と人材獲得の可能性につながります。
CXサーベイの活用事例
実際にCXサーベイを活用した事例を一つご紹介します。
インサイドセールスのポジションで内定辞退をした方の辞退理由として「求職者の強みを活かした配属を寄り添って考えていただきました。一方で、アポ取りが中心となる業務に対する懸念を払拭できませんでした。」というものがありました。
実際、インサイドセールスの業務はデータ分析からターゲティングを定めてメルマガ施策を実行するなど、より上流のマーケティング戦略から実行できます。それにも関わらず、魅力が伝わっていなかったことが分かります。
このような意見をもとに採用ピッチ資料での訴求メッセージを変えることや面接官の伝え方を訓練すること、または選考ステップに現場面談を入れて実務の話を伝えることなど改善案を検討することができるでしょう。
CXサーベイを実施するためのおすすめサービス
このようなCXサーベイを実際に計測・分析するにあたり、活用できるサービスをご紹介します。
まずサーベイツールはうまくテンプレートなどを活用しながらCXサーベイを実施することが可能です。一方で、基本的に一回の大規模調査のために設計されているので、回答者ごとに回答を紐づけて継続的にデータを貯めていくことはできません。
「MyTalent CXリサーチ」は、選考中のフローに組み込んでアンケートを設計して配信し、そのデータを候補者ごとに貯めていくことができます。そのため、選考体験の改善から再スカウトへの活用までを一気通貫で実行することができます。
採用CXを高める第一歩に、CXサーベイのすすめ
今回は、採用CXを高めるためのCXサーベイの具体的な質問案や活用事例についてご紹介しました。
CXサーベイを実施することで自社の選考体験の課題が特定できてCX改善の打ち手がわかるとともに、中長期のタレントプールを構築していくことにつながります。
候補者体験をよりよくするために、まずはCXサーベイから取り組んでみてはいかがでしょうか。TalentXでは、データを用いた戦略人事に変革することをサポートしていきます。