IT人材の有効求人倍率が12倍を超え、採用競争は年々激化する一方です。事業成長に向け、自社の採用目標数も増える中、エージェントの契約社数増加や、スカウト媒体の増加等の打ち手を検討するものの、各サービス間でデータベースが重複しているケースも多く、明確な効果に繋がらないケースが多いかと存じます。
タレント獲得競争が激しい市場では、一定の選考・内定辞退が発生します。採用目標達成に向けた有効な打ち手として「中長期的に接点を取ることを前提」とした採用プロセスの設計や、良質な選考体験の提供が極めて重要です。
今回は、MyTalentを導入後、過去選考辞退者の約20%が再選考に繋がり、即戦力のITコンサルタントの採用を実現したフューチャー株式会社様をお招きし、
・フューチャーの採用方針や採用課題
・採用マーケティングの取り組みを開始した背景
・候補者CXの向上に向けて重視すべきポイント
・採用マーケティングの取り組み具体例と、実際の決定事例
など、タレント獲得競争時代の「採用マーケティング施策」について語られた、好評のセミナー内容をご紹介します。
※当日の講演をより詳しくご覧になりたい方は、下記より「動画視聴」「レポートダウンロード」が可能です。
目次
- 登壇者紹介
- 採用市場動向と採用CXの重要性
- フューチャー様のCX向上施策とタレントプール運用事例
- パネルディスカッション
登壇者紹介

フューチャー株式会社
グループ人材戦略室 マネージャー
末髙 奈々氏
2010年消費財化学メーカーに入社。
その後、人材紹介会社にて両面型の人材コンサルタントとして従事。
「ないものはつくる」と果敢にチャレンジするフューチャーに興味を持ち、2017年人事として入社。コンサル部門のリクルーター業務に従事し、横断施策では自社のリファラル採用「Link Project(りんぷろ)」や入社後オンボーディングの仕組みを立ち上げる。
2022年からチームリーダーを務めたのち、24年より採用チーム責任者 兼 Growthチーム(組織開発・人材育成)のリーダーと、DE&Iの業務に従事。

株式会社TalentX
MyTalent CRM部 部長
近藤 歩
2018年パーソルキャリア株式会社へ入社し、IT/Net領域の人材紹介に従事。
2019年7月より株式会社TalentXに入社し、MyRefer事業のSales、CSを経て、現在、MyTalent CRM部の部長として業務を担う。
採用市場動向と採用CXの重要性
減少する日本の労働人口と企業を取り巻く採用環境
近藤:
日本は労働人口が減少の一途をたどっています。一方で、企業は事業を成長させるべく、優秀な人材の確保が必要であり、キャリア採用を実施される企業が年々増加しています。特に専門職であるエンジニアやコンサルタントといった専門人材の求人倍率は12倍を超えており、候補者の奪い合いが激化している状況です。
候補者に選ばれる会社になるための重要な考え方とは
近藤:
こうしたタレント獲得競争が激しい市場の中では、母集団形成が非常に重要である一方で、候補者に応募いただいてから、しっかりと入社いただくまでの「歩留まり」をいかにして向上できるかという部分が非常に重要になっています。
当社では、選ばれる会社になる、また選ぶ会社になるというこの両軸を叶えるべく、母集団形成と歩留まりの両方を同時に強化することが必要だと考えております。母集団形成においてはエージェントや求人媒体、または採用広報の強化等を行いながら強化を図る企業も増えているかと思いますが、一方で歩留まり改善に関してはまだまだ着手できていない企業も多いかと思います。

歩留まり改善とCX(Candidate Experience)
近藤:
歩留まり改善を実現するためには、CXを意識することが非常に重要です。営業やマーケティング分野においては「カスタマーエクスペリエンス」と呼ばれ、良い顧客体験を提供することで顧客満足度を上げ、リピート率が上がり、口コミが増え、結果として利益に大きくつながります。
一方で採用の観点では、「キャンディデイトエクスペリエンス」として、採用候補者の選考体験をいかにして向上させるかが、歩留まり改善に大きく影響します。

本来企業が意識すべきCXとは
・ 一般的な企業が意識するCX
選考リードタイムを短くしたり、面接内での候補者様との会話内容を意識する等、候補者が応募に至ってから内定までのCXを意識する企業は増えています。

・ 本来意識すべきCX
選考過程でどれほど良いことを伝えても、入社してからギャップが発生するとすぐに退職に繋がってしまい、有効なCXとは言えません。認知の過程から自社に魅力を感じてもらい、実際に入社した後も「良い会社だな」と感じながら働いてもらい、次のキャリアにチャレンジする際も自社を好きな状態で退職してもらう、といった一気通貫で良いCXを作っていくことが重要です。

フューチャー様のCX向上施策とタレントプール運用事例
CX向上施策:候補者認知~興味喚起に向けた魅力訴求
近藤:
「本来意識すべきCX」を概念としてご理解されている方は多いと思いますが、具体的に何を行えばいいのかわからないという方も多いかと思います。今回、認知段階や選考中、また選考後も一貫してCX向上に向け取り組みを行っているフューチャー様にご登壇いただき、具体的な取り組み内容についてお話しいただこうと思います。
末髙氏:
フューチャー株式会社では、2024年の方針として「採用広報」と「ダイレクト採用」の強化を掲げております。その中でも、候補者に届ける自社魅力の選別には力を入れて行っています。具体的には、キャンディデイトジャーニーに沿う形で、情報発信する際に「誰に、何を、どのように伝えるか」を細かく定義しながら、候補者への自社魅力の訴求を行っています。

末髙氏:
ここからは、自社で取り組むCX向上の具体施策についてご紹介できればと思いますが、応募に至るまでの認知から検討フェーズで行っている内容と、応募してくれた候補者のために行う内容とを分けてお話ししたいと思います。
CX向上施策:候補者認知~興味喚起に向けた魅力訴求

末髙氏:
応募前の認知から応募を検討してもらう段階も非常に重要なフェーズだと認識しており事業やカルチャー、働き方等様々な会社の魅力を知ってもらいたいと思っています。
- 採用ピッチ資料の作成とHPへの公開
採用ホームページにピッチ資料を展開しており、資料内では会社事業やカルチャーに加え、自社がどういう人材を求めているのか、どういう評価制度なのか、等をしっかり認知してもらいます。 - ショート動画の拡充(YouTube)
ショート動画の人気が加速している時代背景から、若手向け、女性向け、ハイクラス向けなど、それぞれのターゲットに応じたコンテンツ動画を採用チームで考え、作成しています。 - オウンドメディアの記事拡充(note)
毎月3本を目標に記事コンテンツを展開しております。採用チームが執筆するだけでなく、社員側から「こういう記事を書きたいです」とアイデアをくれることもあります。記事からリアルな社員の声やストーリーが伝えられることは、候補者への影響も非常に大きいのではないかと考えております。 - テックブログの記事拡充(GitHub)
テックブログは採用チームではなく、技術広報チームが展開しており、当社の特徴でもある高い技術力に関する情報が候補者様にも伝わるよう、頻度も高く更新しています。

CX向上施策:応募以降の候補者に魅力を訴求する取り組み

末髙氏:
候補者が応募してくれた後のCXの向上も非常に重要視しておりますので、いくつか取り組みをご紹介できればと思います。CX向上施策への取り組みは大変ではありますが、選考の移行率や内定承諾率の向上にしっかりと繋がる施策だと考えています。また、CXが良いことでエージェントからの印象も良くなり、「また候補者を紹介したい」と感じてもらえると思うので、時間をかけてでもCXにこだわりたいと考えています。
- 面接官に向けた「採用における行動指針」の展開
全体で400名ほど面接官がいるのですが、面接官全員で心得をシェアすることで、候補者に対して一貫したスタンスで向き合ってもらえればと思っています。例えば、「面接は一期一会。フューチャーの面接を受けてよかったと感じてもらう。」や、「自然体を引き出せるように、話しやすい雰囲気づくりを心がける。」などがあり、必ず皆様に読んでいただいています。 - 重要なのはカルチャーマッチであることを継続して伝える
キャリア採用の場合、その方の経験やスキルを重要視しやすいですが、入社後のギャップを生まないためには会社の考え方やカルチャーがマッチしているのかを、候補者側も面接官側もしっかり判断することが大事だと思っています。 - 一次面接は自社魅力を訴求
もしかすると、当社の特徴かもしれませんが、一次面接は必ず魅力を訴求する時間にしてくださいと面接官に伝えています。人材の獲得競争も激しい中で、一次面接官は候補者が初めて会うフューチャーの人になる可能性が高いです。人事側も、面接官が一次面接で魅力訴求を行いやすいように、現場を巻き込みながら「ではこういうアイテムを作りましょう!」と面接官と人事で協力して進めています。 - 月2回のイベントで現場社員との接点を強化
社員に登壇いただき、自身の転職理由やフューチャーを選んだ理由、今の業務などを話していただく「FUTURE LIVE」と、採用候補者からリアルタイムで集計した質問に、登壇社員が答えていく参加型の「しゃべくりフューチャー」というイベントを開催しております。
タレントプール運用事例:タレントプールの対象とアプローチ
末髙氏:
選考の過程で、一定の選考離脱や内定辞退は発生してしまいます。しかしながら、CXを意識した選考活動を実施しているからこそ、辞退された方々が今後また転職を検討された際にフューチャーを想起し、再度選考に紐づけられる可能性があるかと感じ、タレントプールを行い中長期的に関係性を築いています。

末髙氏:
具体的には、各ジャーニ―における離脱者をタレントプール化しています。主には最終面接と内定を辞退された方で、候補者の属性に合わせてスカウト文面や送るコンテンツをカスタマイズしながらご連絡しています。アプローチ後に返信が来て、カジュアル面談を行うケースも多いです。とはいえ、すぐに転職を検討している方は多くないため、現状を聞きながら双方の情報交換を行い面談を終了し、その後も定期的な連絡をしています。こういった動きをリピートしながら、タレントプールした候補者様とのつながりを作り続けています。
タレントプール運用事例:取り組みの成果
末髙氏:
特にハイレイヤー層向けに本取り組みを強化したのですが、結果的には約36%の候補者から返信を獲得することができまして、5人に1人から再面談の希望をいただける結果となりました。その後約半年という期間で、3名の優秀な人材が入社をしてくれる結果に繋がり、とても嬉しく思っております。

末髙氏:
返信いただいた候補者の中には、面談を希望されない方もいらっしゃいました。しかし「フューチャー様には非常に良い印象を持っており、皆様の仕事への情熱を感じたところが魅力的でした。」「今は検討していないのですが、こうしてご連絡くださり大変ありがたいと感じています。」といったお返事を次々といただきました。再度連絡することでマイナスに思われないか正直不安もありましたが、前半に話をしたCX向上施策に力を入れ、候補者と良い関係を築いたからこそいただけたお返事だと思い、自分たちのやってきたことが間違っていなかったと嬉しく感じた瞬間でした。
我々の今後の展望としては、フューチャーのファンを増やしながら、タレントプールにより優秀な人材を獲得できる仕組みの構築を進め、重要な採用チャネルとして拡大できるよう取り組んでまいります。
パネルディスカッション
選考辞退者と再度カジュアル面談をする際に意識していること
近藤:
過去辞退者に再度アプローチし、カジュアル面談を実施されると伺いました。面談時に、候補者に有意義に感じていただけるよう意識しているポイントはありますか?
末髙氏:
今の会社の状況を細かく聞きながら、まずはその方に興味をもって深堀りすることを意識しています。そうすることでこの方の刺さるポイントも把握でき、その情報を元に訴求する魅力を選別しながらお伝えしていきます。とはいえすぐに面接に繋がらない方も多くいらっしゃるため、お互いの情報交換の場として時間を使いながらも、「次また半年後くらいに連絡しますね。」といった形で終わります。そのようにお伝えして、実際にまた連絡すると結構喜んでくれるんです。
タレントプール施策の成果について
近藤:
今回の施策を通じて、3名の入社があったと伺いました。簡単にご紹介いただける範囲で、どのような方なのか教えていただけますか?
末髙氏:
1名が業務系のコンサルタントで、2名がIT系のコンサルタントです。皆様30代後半から40代前半の方です。実はそのうちの1名は、辞退後に計2回カジュアル面談を実施しています。当然ではありますが、弊社がアプローチしたときに皆様タイミング良く転職を検討しているわけではないので、「ではまた定期的にお会いしましょう。」という形で、別のタイミングでまたお話しし丁寧に進めていった形になります。
本施策は候補者が悩んでいるタイミングでアプローチできるので、実は3名とも他の選考と同時に進めるというよりは、フューチャー単独で選考を受けてくださっていました。改めて、中長期的に関係性を維持し続ける重要性を感じました。
監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
この記事は株式会社TalentXが運営するTalentX Lab.の編集部が監修しています。TalentX Lab.は株式会社TalentXが運営するタレントアクイジションを科学するメディアです。自社の採用戦略を設計し、転職潜在層から応募獲得、魅力付け、入社後活躍につなげるためのタレントアクイジション事例やノウハウを発信しています。記事内容にご質問などがございましたら、こちらよりご連絡ください。






