人材の獲得競争が激化する中、求職者から「選ばれる企業」となるためには、自社の魅力を適切に伝える取り組みがこれまで以上に重要になってきているといえるでしょう。価値観の多様化や情報収集手段の変化により、企業には一方的な情報発信ではなく、候補者の視点に立った魅力づけが求められています。
そのような中で注目されているのが「アトラクト」という考え方です。本記事では、アトラクトの基本的な概要や重要性に加え、採用フェーズごとの実践方法や具体的なアトラクト施策について、わかりやすく解説していきます。
目次|自社の魅力を伝える採用アトラクト施策とは?
- 採用アトラクトとは?
- 採用アトラクトの重要性とは
- 採用アトラクトが活用されるようになった背景
- 採用フェーズごとのアトラクト方法
- 具体的な採用アトラクト施策の例
- 採用アトラクトを実施する際のポイント
- まとめ
採用アトラクトとは?
採用活動における「アトラクト」とは、企業が求職者に対して自社の魅力を効果的に伝え、「この会社で働きたい」と感じてもらうための取り組みを指します。単なる企業紹介ではなく、候補者との関係構築や理解促進を通じて、自社への興味関心を高めていく活動と捉えることができるでしょう。
具体的には、企業のミッションやビジョン、事業内容、働き方、社風、キャリア形成の機会など、候補者が意思決定時に重視する情報を整理し、適切なタイミングで届けていくことが求められます。
近年では、求人票だけで候補者を惹きつけることが難しくなっており、採用活動全体を通じた「候補者体験(採用CX)」の重要性も高まっています。そのため、アトラクトは単なる採用広報ではなく、認知形成から応募、選考、内定承諾に至るまで、一貫した魅力づけを行うための考え方として注目されています。
また、適切なアトラクト施策を実施することで、応募数の増加だけでなく、自社への理解や共感を持った候補者との接点を増やしやすくなるでしょう。その結果として、内定辞退の防止や入社後の定着率向上につながる可能性も期待されています。
採用アトラクトの重要性とは
採用アトラクトの重要性は、採用市場の変化とともに年々高まっていると考えられます。特に近年では、新卒採用・中途採用を問わず、多くの企業が「候補者から選ばれる立場」へと変化しています。
リクルートワークス研究所の調査※によれば、2025年卒の大卒求人倍率は1.75倍と上昇傾向にあり、企業間での人材獲得競争はさらに激化しています。このような状況下では、単に求人を出すだけでは十分な応募獲得につながりにくくなっているのが実情です。
また、求職者の企業選びの基準も多様化しています。給与や待遇だけでなく、「どのような価値観を持つ企業なのか」「どのような社員が働いているのか」「自分らしく働ける環境か」といった観点を重視する候補者も増えています。
そのため、企業側には、自社の魅力や働く価値を丁寧に言語化し、候補者に伝えていくことが求められます。特に、競合他社と比較された際に「なぜこの会社なのか」を明確に伝えられるかどうかは、応募意欲や内定承諾率にも大きく影響すると考えられるでしょう。
さらに、SNSや口コミサイトなど情報収集手段が多様化したことで、候補者は企業の公式情報だけでなく、社員の発信や第三者評価も含めて企業を判断しています。だからこそ、採用活動全体を通じて一貫した魅力づけを行うアトラクトの考え方が重要になっているといえます。
※出典:リクルートワークス研究所 大卒求人倍率調査(2025年卒)
採用アトラクトが活用されるようになった背景
アトラクトが注目される背景には、採用市場や求職者行動の大きな変化があります。
従来の採用活動では、求人広告を掲載し、応募を待つ「待ちの採用」が主流でした。しかし現在では、少子高齢化による労働人口の減少や売り手市場の進行により、企業側から積極的に候補者へ働きかける必要性が高まっています。
また、求職者の情報収集行動も大きく変化しています。企業ホームページや求人票だけでなく、SNS、口コミサイト、動画コンテンツ、社員の発信など、さまざまな情報源を横断的に比較しながら企業理解を深めるケースが増えています。
そのため、企業には一方的な情報発信ではなく、多角的な情報提供や双方向コミュニケーションが求められるようになりました。特に近年では、「実際にどんな人が働いているのか」「どんな雰囲気の職場なのか」といったリアルな情報へのニーズが高まっています。
さらに、転職潜在層へのアプローチも重要視されています。今すぐ転職を考えているわけではないものの、将来的な転職可能性を持つ層に対して、中長期的に接点を持ち続ける考え方が広がっています。
こうした背景から、採用活動においてもマーケティング的な視点が求められるようになり、「認知形成」「興味喚起」「関係構築」を意識したアトラクト施策が重要視されるようになったといえるでしょう。
採用フェーズごとのアトラクト方法
アトラクト施策は、採用活動の各フェーズに応じて適切に設計していくことが重要です。候補者との接点が生まれる「認知」から「応募・選考」、「内定・入社」に至るまで、それぞれの段階で求められる情報やコミュニケーションは異なります。
そのため、すべてのフェーズで同じ情報を伝えるのではなく、候補者の状態や心理変化に合わせて魅力づけを行う必要があります。ここでは、採用活動を4つのフェーズに分け、それぞれにおけるアトラクトの考え方について解説していきます。
認知獲得フェーズ
認知獲得フェーズでは、まず「自社を知ってもらうこと」が重要です。この段階では、幅広い候補者に対して自社の魅力や価値観を伝え、興味関心を持ってもらう接点づくりが求められます。
具体的には、採用オウンドメディアやSNS、採用イベント、会社説明会などを通じて、企業のミッション・ビジョン、事業内容、働く環境、社員の雰囲気などを発信していきます。
また、単に制度や仕事内容を紹介するだけではなく、「どのような人が活躍しているのか」「どのような想いで事業に取り組んでいるのか」といったストーリー性を持たせることで、候補者の共感形成につながりやすくなるでしょう。
近年では、社員インタビューやショート動画コンテンツなど、リアルな働き方を伝える情報発信も増えています。特に転職潜在層に対しては、継続的な情報接触を通じて企業理解を深めてもらうことが重要だと考えられます。
応募~選考前フェーズ
応募前後のフェーズでは、「応募するかどうか」を候補者が判断する段階となります。そのため、企業理解を深めてもらうだけでなく、不安や疑問を解消するコミュニケーションが重要になるでしょう。
代表的な施策としては、カジュアル面談が挙げられます。選考を前提としない形で対話機会を設けることで、候補者は企業に対する理解を深めやすくなります。また、企業側にとっても、候補者の価値観や転職軸を把握する機会になるでしょう。
このフェーズでは、候補者ごとに興味関心が異なる点にも注意が必要です。例えば、成長環境を重視する人材と、働き方や安定性を重視する人材では、響く情報が異なります。
そのため、一律の説明を行うのではなく、候補者のニーズを丁寧にヒアリングしながら、個別最適化した情報提供を行うことがアトラクト成功のポイントになると考えられます。
選考フェーズ
選考フェーズでは、候補者の志望度を高めながら、自社との相互理解を深めていくことが重要です。特に面接は、企業が候補者を見極める場であると同時に、候補者が企業を判断する場でもあります。
そのため、評価だけに偏るのではなく、「この会社で働くイメージ」を持ってもらえるコミュニケーションを意識する必要があります。
例えば、実際に一緒に働く上司や同僚社員が面接に参加することで、候補者はより具体的な働くイメージを持ちやすくなります。また、現場社員との対話を通じて、入社後の仕事内容やチームの雰囲気を理解しやすくなるでしょう。
さらに、選考中のコミュニケーション品質も重要です。面接日程調整やフィードバック対応など、細かなやり取りも候補者体験に影響します。レスポンスの速さや丁寧な対応は、企業への信頼感形成につながると考えられます。
内定~承諾、入社にいたるまでのフェーズ
内定後は、候補者が最終的に入社を決断する重要なフェーズです。特に複数社を比較検討しているケースでは、入社後のイメージ形成や不安解消が大きなポイントになるでしょう。
例えば、オファー面談では、候補者の転職理由やキャリア志向を改めて確認しながら、自社がどのようにその期待に応えられるかを具体的に伝えることが重要です。
また、内定者懇親会や社員交流会などを実施することで、実際に働く社員との接点を増やし、心理的な不安軽減につなげる企業も増えています。
そのほかにも、定期的なフォロー連絡や入社前コンテンツの共有などを通じて、入社意欲を維持する取り組みも効果的です。入社前から企業との関係性を築いていくことで、内定辞退防止や早期定着にもつながりやすくなるでしょう。
具体的な採用アトラクト施策の例
採用アトラクトを実践するうえでは、採用フェーズごとのコミュニケーション設計だけでなく、候補者との接点そのものを戦略的に設計していくことが重要です。近年では、候補者体験(採用CX)の向上を目的として、さまざまな採用アトラクト施策に取り組む企業が増えています。
一方で、単に施策数を増やせば良いというわけではありません。重要なのは、自社が採用したいターゲットに対して、どのような情報を、どのタイミングで、どのように届けるかを整理し、一貫性のある体験を設計することだといえるでしょう。
ここでは、代表的な採用アトラクト施策についてご紹介していきます。
採用オウンドメディア・SNSを活用した情報発信施策
採用アトラクト施策として代表的なのが、採用オウンドメディアやSNSを活用した情報発信です。求人票だけでは伝えきれない企業文化や働く魅力を継続的に届けることで、候補者との接点形成や理解促進につなげることができます。
例えば、採用オウンドメディアでは、社員インタビューやキャリア事例、プロジェクト紹介、1日の働き方などを発信するケースが多く見られます。実際に働く社員の言葉を通じてリアルな働き方や価値観を伝えることで、候補者が自社で働くイメージを持ちやすくなるでしょう。
また、SNSを活用した情報発信も重要性を増しています。企業の日常的な雰囲気やイベントの様子、社員同士のコミュニケーションなどを発信することで、求職者に親近感を持ってもらいやすくなります。特に近年では、企業アカウントだけでなく、社員個人による発信を通じてリアルな情報を届ける取り組みも増えています。
こうした情報発信施策は、転職顕在層だけでなく、まだ転職を具体的に検討していない潜在層との接点形成にもつながるため、中長期的な採用ブランディング施策としても活用されているといえるでしょう。
候補者との接点を増やすコミュニケーション施策
候補者とのコミュニケーション機会を増やすことも、アトラクト施策において重要なポイントです。選考だけでは伝えきれない情報や雰囲気を届けることで、候補者との相互理解を深めやすくなります。
例えば、カジュアル面談は代表的な施策のひとつです。面接とは異なり、相互理解を目的とした場として実施することで、候補者が抱える不安や疑問を解消しやすくなります。また、企業側にとっても、候補者の価値観や転職軸を把握する機会となるでしょう。
そのほかにも、社員座談会やミートアップイベント、オフィス見学会などを実施する企業も増えています。現場社員と直接コミュニケーションを取れる機会を設けることで、候補者は入社後の働くイメージを具体化しやすくなります。
特に、同世代社員や実際に一緒に働く可能性のある社員との接点は、候補者に安心感を与えやすい施策と考えられます。企業側が一方的に魅力を伝えるだけでなく、候補者自身が「自分に合う環境か」を判断できる場を設計することが、ミスマッチ防止にもつながるでしょう。
理解促進につながるコンテンツ施策
候補者に自社への理解を深めてもらうためには、視覚的・具体的に情報を伝えるコンテンツ施策も有効です。
例えば、採用ピッチ資料を活用し、事業内容や市場環境、組織体制、今後の成長戦略などを体系的に整理して伝える企業も増えています。テキスト中心の求人票だけでは伝わりにくい情報を可視化することで、候補者の理解促進につながるでしょう。
また、動画コンテンツを活用するケースも見られます。オフィスツアー動画や社員インタビュー動画、1日の働き方紹介などは、企業の雰囲気や働く環境を直感的に伝えやすい施策です。特に、社風やコミュニケーションの雰囲気など、文章では伝わりにくい情報を補完できる点が特徴といえるでしょう。
さらに、最近では候補者向けの採用資料やオンボーディングコンテンツを事前共有し、選考前から企業理解を深めてもらう取り組みも増えています。候補者の情報収集行動が多様化している中で、必要な情報へスムーズにアクセスできる環境を整えることは、候補者体験の向上にもつながると考えられます。
採用アトラクトを実施する際のポイント
アトラクト施策を効果的に実施するためには、単に情報を発信するだけではなく、候補者視点に立った設計が重要です。ここでは、特に意識したいポイントについてご紹介します。
求職者のニーズを把握する
アトラクト施策では、まず候補者が何を求めているのかを理解する必要があります。ターゲットによって重視するポイントは異なるため、ペルソナ設計や面談時のヒアリングを通じて、ニーズを整理することが重要です。
例えば、「成長環境を重視する若手層」と「働き方や安定性を重視するミドル層」では、響く訴求内容が異なります。だからこそ、候補者ごとに適切な情報を届ける視点が求められるでしょう。
自社の魅力を言語化する
自社の魅力を伝えるためには、「何が強みなのか」を整理し、言語化することが重要です。
特に、ミッション・ビジョン・バリューや事業の社会的意義、働く人の特徴などは、候補者の共感形成につながりやすいポイントです。また、キャリア形成や成長機会について具体的に伝えることで、入社後のイメージも持ってもらいやすくなるでしょう。
一貫した候補者体験を設計する
認知から応募、選考、内定承諾まで、候補者が触れる情報やコミュニケーションに一貫性を持たせることも重要です。
例えば、SNSで発信しているカルチャーと、実際の面接時の雰囲気が大きく異なる場合、候補者にギャップを与えてしまう可能性があります。そのため、各フェーズでのコミュニケーション設計を統一し、企業として一貫した体験を提供することが求められます。
まとめ
アトラクト施策は、単に企業の魅力を発信するだけではなく、候補者との関係構築を通じて「この会社で働きたい」と感じてもらうための重要な取り組みです。
採用市場が変化し、候補者の価値観や情報収集行動が多様化する中で、企業にはより戦略的な魅力づけが求められるようになっています。
そのためには、採用フェーズごとに適切なコミュニケーションを設計し、候補者視点に立った情報提供を行うことが重要です。また、採用オウンドメディアやSNS、カジュアル面談、動画コンテンツなどを活用しながら、多面的に企業理解を促進していくこともポイントになるでしょう。
アトラクト施策を通じて候補者との接点を積み重ねていくことで、自社への共感形成やミスマッチ防止につながり、結果として「選ばれる企業」に近づいていくと考えられます。
アトラクト施策を具体化するうえで参考となる資料として、以下のコンテンツをご用意しています。
・『なぜ採用オウンドメディアが必要なのか』
採用工程前半の「認知・ブランディング」領域におけるオウンドメディアの重要性と実践方法を解説
・『採用CXを向上させる6つの手法とタレント獲得施策』
「選考・内定承諾」フェーズにおける候補者体験(CX)向上の具体策を体系的に整理
自社の採用フェーズや課題に応じて、施策検討のヒントとしてご活用いただけますと幸いです。


監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
この記事は株式会社TalentXが運営するTalentX Lab.の編集部が監修しています。TalentX Lab.は株式会社TalentXが運営するタレント・アクイジションを科学するメディアです。自社の採用戦略を設計し、転職潜在層から応募獲得、魅力付け、入社後活躍につなげるためのタレント・アクイジション事例やノウハウを発信しています。記事内容にご質問などがございましたら、こちらよりご連絡ください。





