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2026.06.30更新

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採用CX(候補者体験)改善の優先順位—応募から入社までの設計法

採用活動に力を入れているにもかかわらず、選考途中の辞退や内定辞退が後を絶たない—そんな状況に頭を抱えている採用責任者の方は、少なくないのではないでしょうか。求人広告の出稿数を増やしても、スカウト送信数を積み上げても、「応募は来るのに採用につながらない」という課題が解消されないとしたら、採用プロセスのどこかに改善すべきポイントが残っている可能性があります。

その改善ポイントを候補者視点で整理し、採用プロセス全体をより良い体験へと設計していく考え方が「採用CX(Candidate Experience:候補者体験)」です。本記事では、採用CXの基本的な意味から、改善が進まない構造的な理由、応募から入社までの各フェーズで見直すべきポイント、さらに継続的に採用CXを高めるための仕組みづくりまで、人事責任者・採用担当者の実務に役立つ視点で解説します。

「どこから改善すればよいかわからない」「採用歩留まりを高めたい」とお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

  • 採用CX(候補者体験)とは何か—「選ばれる採用」時代における再定義
  • なぜ今、採用CXが経営課題になっているのか—採用CXが重要視される3つの理由
  • 採用CX改善が進まない本当の理由—「やるべきはわかっているのに動けない」構造
  • どこから着手すべきか—採用CX改善の「優先順位」を決める2軸のフレームワーク
  • 応募フェーズの採用CX改善—最初の接点が志望度を決める
  • 選考(面接)フェーズの採用CX改善—体験の質が辞退率を左右する
  • 内定〜入社フェーズの採用CX改善—内定後フォローが承諾率を決める
  • 採用CXを「仕組み」に落とし込む—属人的な改善が限界を迎える前に
  • 採用CXとタレントプールの連携—候補者との接点を維持する採用設計
  • まとめ

採用CX(候補者体験)とは何か—「選ばれる採用」時代における再定義

採用CXとは「Candidate Experience(キャンディデート・エクスペリエンス)」の略称であり、日本語では「候補者体験」と訳されます。候補者が自社を認知した瞬間から、応募・選考・内定・入社に至るまでの一連のプロセスで感じるすべての体験価値を指す概念です。単なる「応募者満足度」ではなく、企業と候補者のあらゆる接点を戦略的に設計する考え方として、採用成果を高めるうえで重要なテーマとなっています。

採用CXが指す範囲は「合否の結果」だけではない

マーケティングの世界では、商品そのものの品質だけでなく、購入に至るプロセスやサポートを含めた「顧客体験(CX)」を重視する考え方が広く浸透しています。採用CXはその発想を採用活動に応用したもので、候補者を「選別する対象」ではなく「自社のファンになってくれるかもしれない一人の人」として捉え、一貫した良質な体験を届けようとするアプローチです。

重要なのは、採用CXの対象が選考の結果そのものではなく、そこに至るまでのプロセス全体に及ぶという点です。最終選考で不採用になった候補者であっても、「丁寧なフィードバックをもらえた」「面接官が誠実に向き合ってくれた」と感じた場合、その候補者は企業にポジティブな印象を持ち続けます。一方、書類選考を通過した後の連絡が何日も来なかったり、面接官の準備が不足していたりすると、採用が決まったとしても入社意欲が下がるケースも少なくありません。

採用CXが優れている企業は、選考の結果にかかわらず「この企業の選考を受けてよかった」と候補者に感じてもらえる体験を設計しています。それが長期的な採用ブランドの向上、口コミでの評判形成、さらにはタレントプールの資産化にもつながっていきます。

採用CXは採用成果に直結する

採用CXの改善は、候補者満足度を高めることだけが目的ではありません。応募から入社までの各フェーズで生じるストレスや不安を取り除くことで、応募辞退・選考辞退・内定辞退の抑制につながります。また、候補者との信頼関係を丁寧に構築することで、企業理解が深まり、自社とのマッチング精度の向上も見込まれます。

従来の採用管理は「何名採用できたか」「採用コストはいくらか」「どのチャネルからの応募が多いか」といった数値の管理が中心でした。採用CXの考え方はそこに「候補者がどのような体験をしているか」という視点を加えるものです。選考の各フェーズで候補者の志望度がどう変化するかを意識し、課題が生じているポイントを特定して改善していく、そのプロセス管理こそが採用CXに取り組む意義といえます。

なぜ今、採用CXが経営課題になっているのか—採用CXが重要視される3つの理由

採用CXが近年注目を集めるようになったのは、日本の労働市場における不可逆的な構造変化が背景にあるためです。

理由① 労働力人口の減少と採用競争の激化

少子高齢化に伴い、日本の労働力人口は長期的な減少をたどっており、採用競争が「特定の業界・職種の問題」ではなく、ほぼすべての企業が直面する構造的な課題になりつつあります。

候補者一人に対して複数社からアプローチが行われる状況では、選考プロセスの体験が採用成否に直結します。給与や待遇といった条件面がほぼ同等であれば、「どの企業の選考体験がより誠実だったか」が意思決定の差を生む場面も増えています。

理由② 雇用の流動化と「選び合う関係」への変化

雇用の流動化が進み、転職が一般化した現代では、企業と候補者の関係は「互いを選ぶ」ものへと変化しています。候補者は選考を受けながら同時に企業を評価しており、選考体験そのものが企業の信頼性・カルチャー・誠実さとして受け取られます。中途採用では候補者が複数社の選考を並行して進めることが一般的であるため、採用担当者は「候補者は常に比較検討している」という前提でコミュニケーションを設計する必要があります。

理由③ 情報拡散の加速と採用ブランドへの影響

転職口コミサービスやSNSの普及により、候補者の体験はかつてより速く、広く拡散されるようになりました。良質な体験を得た候補者は企業の評判を高める口コミを発信しやすくなる一方、ネガティブな体験は不特定多数に伝わり、将来の母集団形成にも影響を及ぼしかねません。採用CXへの取り組みは、目の前の一人の候補者だけでなく、企業の採用ブランド全体に作用するものとして位置づけておく必要があります。

採用CX改善が進まない本当の理由—「やるべきはわかっているのに動けない」構造

採用CXの重要性を理解していても、なかなか改善に踏み出せない採用チームは少なくありません。その理由は担当者の意識や熱量の問題ではなく、多くの場合、組織的・構造的な阻害要因にあります。改善施策を継続するためには、まず「なぜ改善できないのか」を整理することが出発点になります。

「量の追跡」に追われ、「質の改善」が後回しになる

多くの採用チームは、応募数・面接設定数・内定数といった量的な指標の管理に日々追われています。月次の採用計画に対して数字を積み上げることが最優先のミッションとなるなかで、「選考体験の質を上げるためにプロセスを見直す」という取り組みは、どうしても後回しになりがちです。採用CXの改善は成果が数値として現れるまでに時間がかかるケースも多く、即効性を求められる採用現場では優先順位が下がりやすい構造があります。

ボトルネックが「感覚」でしか把握されていない

採用CX改善の出発点は、どのフェーズで候補者が離脱しているか、どの接点で志望度が下がっているかを数値として把握することです。ところが多くの組織では、この「ボトルネックの特定」が担当者の感覚や経験則に依存しており、選考ファネルとして可視化されていないことが少なくありません。「なんとなく面接の雰囲気が悪いかもしれない」という感覚はあっても、どのフェーズでどれだけの辞退が発生しているかを定量的に確認できている組織はまだ多くないのが実情です。

属人的なフォローに依存し、組織的な改善サイクルが回らない

採用CXが高い企業の多くは、特定の担当者が候補者に丁寧に向き合っているからこそ体験の質が保たれているケースがあります。ただそれは「仕組み」ではなく「属人」です。担当者が変わったとき、あるいは採用数が増えて一人あたりの対応工数が増えたとき、体験の質は一気に低下する可能性があります。採用CXを継続的に改善するには、個人の熱量に頼るのではなく、プロセスとして組み込まれた仕組みが必要です。

どこから着手すべきか—採用CX改善の「優先順位」を決める2軸のフレームワーク

採用CXの改善ポイントは、応募フォームから内定後フォローまで多岐にわたります。すべてを一度に着手しようとすると、リソースが分散してどれも中途半端になりがちです。「できることから始める」ではなく、「採用成果への影響が大きいことから着手する」という考え方で、限られた工数のなかで最大の効果を引き出すことが重要です。

優先順位を決める軸は2つです。「インパクト(採用成果への影響の大きさ)」と「実装コスト(着手のしやすさ・工数・費用)」です。

軸① インパクト—どのフェーズの改善が採用計画に最も効くか

インパクトを評価するうえで有効なのが、選考ファネルの分析です。応募・書類選考通過・一次面接・二次面接・最終面接・内定・入社承諾の各段階で、何名が次のフェーズに進んでいるかを可視化すると、歩留まりが最も低いフェーズが明らかになります。

たとえば、一次面接の通過率は高いのに内定承諾率が低い場合は、内定後のフォロー体制や最終面接での体験に改善余地がある可能性があります。逆に、応募数は十分あるのに一次面接の辞退率が高い場合は、応募受付後の初期対応や選考案内の内容が候補者の不安を解消できていない可能性があります。感覚ではなく採用データを起点に、「どのフェーズで歩留まりが低下しているのか」を把握することが重要になります。

軸② 実装コスト—明日からできることと、中長期で取り組むことを分ける

改善施策は、工数・費用・関係者調整のしやすさによって「すぐに着手できるもの」と「中長期で整備が必要なもの」に分かれます。メールの文面を見直す、面接前日にリマインド連絡を送るといった施策は、ほぼコストをかけずに翌日から実行できます。一方、面接官トレーニングの設計や採用サイトの整備は、時間と投資が必要な取り組みです。

改善施策は、「候補者体験への影響度(インパクト)」と「実装コスト」の2軸で整理すると、優先順位をつけやすくなります。

まずは、インパクトが大きく、比較的少ない工数で実施できる施策から着手し、その後、時間や体制が必要な取り組みを計画的に進めていくのがおすすめです。

優先順位を整理したら、担当者・実施期限・効果測定の指標(KPI)まで設定しましょう。例えば、「応募受付後の初回連絡を24時間以内に行う」「一次面接の日程調整を3営業日以内に完了させる」といったように、具体的な行動と測定可能な目標をセットにすることで、改善活動を継続しやすくなります。

応募フェーズの採用CX改善—最初の接点が志望度を決める

採用CXは、候補者が求人情報に触れた瞬間から始まります。採用サイトの見やすさや応募フォームの使いやすさ、エントリー後に連絡が届くまでのスピードなど、最初の接点での印象は、その後の選考に対する印象や意欲を大きく左右します。

どれほど魅力的な求人や採用ブランドを発信していても、応募前後の体験にストレスや不安を感じさせてしまうと、候補者の志望度が下がり、途中離脱につながる可能性があります。そのため、採用CXの改善は、応募後だけでなく、候補者が最初に企業と接するタイミングから意識することが重要です。

採用サイトと応募フォームの設計—「迷わず応募できる状態」をつくる

候補者が最初につまずく場所のひとつが、採用サイトや応募フォームです。入力項目が多すぎる、スマートフォンで使いにくい、求めるポジションの情報が分かりにくいといった問題は、興味を持って訪れた候補者が「応募をやめる」判断をする要因になります。求人票の内容が抽象的である場合、候補者は「自分に合っているのだろうか」という不安を抱きやすくなります。

採用サイトや応募フォームを見直す際のチェックポイントとして、以下が参考になります。

  • 入力ステップは最小限か(例:前職の年収一括入力ではなく、まずは氏名・連絡先・職種の3項目のみに絞るなど、段階的な設計にする)
  • スマートフォンで操作しやすいレイアウトになっているか
  • ポジションごとの仕事内容・求める人物像・職場環境・選考フローが具体的に記載されているか(例:「〇〇部門での経験がある方」ではなく、具体的な業務内容や入社後の最初のミッションまで記載する)
  • 応募完了後に「いつまでに何の連絡が来るか」が明示されているか

応募体験のハードルを下げることは、母集団の量を増やすだけでなく、入社意向の高い候補者が行動を起こしやすい状態をつくることにもつながります。情報量を増やすことだけが正解ではなく、候補者が知りたい内容を整理し、短時間で応募まで進める導線を整えることが重要です。

応募受付後24時間以内の初動対応が持つ意味

応募を受け付けた後、最初の連絡が届くまでの時間は、候補者の不安や期待感に直接影響します。「応募したけれど届いているのかわからない」という状況は、候補者にとってストレスになり、志望度を下げる一因になります。

自動返信メールで「受け付けました」と伝えるだけでも、候補者の不安は大きく和らぎます。さらに「選考プロセスの概要」「次のステップに進む場合の連絡時期の目安」を合わせて伝えると、候補者が選考を見通せるようになり、安心感につながります。初動対応を「できるだけ早く」という感覚的な運用から、「24時間以内に必ず行う」というルール化に移行することが、この段階でのCX向上の第一歩です。

選考(面接)フェーズの採用CX改善—体験の質が辞退率を左右する

選考フェーズは、採用CXの中でも特に候補者の志望度を左右する重要な場面です。候補者は、面接官の対応や選考スピード、コミュニケーションの内容などを通じて、「この企業で働くイメージが持てるか」を判断しています。

現在の採用市場では、面接は企業が候補者を評価するだけでなく、候補者が企業を見極める場でもあります。その視点が十分に浸透していない場合、選考中の満足度が低下し、辞退につながる可能性が高まります。

面接官の対応品質を標準化する—評価シートとインタビューガイドの整備

まず押さえておきたいのが、面接官によって対応のクオリティにばらつきがある状態です。この点が曖昧なままでは、候補者に「会社として一貫性がない」という印象を与えかねません。ある面接官の面接では丁寧に会社説明がされたのに、別の面接官との面接ではほとんど質問だけで終わってしまった—こうした体験の差は、候補者の志望度を左右します。

面接官のスキルを標準化するための実務的な取り組みとして、以下が効果的です。

  • 評価シートの整備:各ポジションで評価すべき項目と基準を明文化し、評価の属人性を下げる(例:「コミュニケーション力」ではなく「複数の利害関係者に対して要件を整理して伝えた経験があるか」のように行動ベースで定義する)
  • インタビューガイドの作成:面接の目的・伝えるべき自社情報・禁止質問・会社の魅力訴求ポイントを整理したガイドを用意する
  • 面接官向けの事前ブリーフィング:候補者の応募背景・職務経歴の概要を事前に共有し、面接官が「この候補者の何を確認すべきか」を明確にして臨めるようにする

面接官トレーニングは選考精度を高めるだけでなく、「なぜこのポジションを募集しているのか」「どのようなキャリアが描けるのか」を具体的に伝えることで、対応品質を底上げするものでもあります。候補者に「誠実に向き合ってもらえた」と感じてもらえる面接が、選考フェーズでのCX向上の核心です。

選考期間の長期化が候補者の志望度に与えるダメージ

選考にかかる期間が長くなるほど、候補者の志望度は下がりやすくなります。人材獲得競争が激しい環境では、他社の内定が先に出た候補者が内定承諾を決める、というケースも起こり得ます。

選考スピードを上げるための施策として、次の点を検討することが有効です。社内の意思決定プロセスを整理し、面接後の合否判断にかかる日数を短縮できないかを確認します。候補者との日程調整に時間がかかっている場合は、調整ツールの活用や面接枠の事前確保を検討します。次のステップへの案内が遅れる場合でも「〇営業日以内にご連絡します」と一報を入れるだけで、候補者の不安を和らげられます。

不採用通知の設計—辞退候補者を「将来の資産」に変えるコミュニケーション

不採用や選考辞退の通知は、採用CXのなかで最も軽視されやすい接点のひとつです。定型文だけのお断りメールを受け取った候補者は、その体験を通じて企業への印象を形成します。一方で、「今回はご縁がなかったものの、あなたとの面接は大変有意義でした」という言葉が添えられた通知は、候補者に「誠実に扱ってもらえた」という印象を残します。将来的に転職を検討した際に再度応募する意欲を持ちやすくなる、あるいは知人に企業を紹介するという行動につながる可能性も考えられます。不採用通知を、タレントプールへの接点の起点として設計しておくことが、長期的な採用CXの観点から有益です。

内定〜入社フェーズの採用CX改善—内定後フォローが承諾率を決める

内定後は、採用CXの中でも見落とされやすいフェーズです。選考が終了すると候補者との接点が減り、「あとは入社を待つだけ」と考えてしまう企業も少なくありません。

しかし、候補者にとっては内定後こそ入社先を比較・検討する重要な時期です。他社からのオファーと比較しながら最終的な意思決定を行うため、この期間のコミュニケーションやフォロー体制が、入社承諾率に大きく影響します。

内定承諾率を下げる3つの要因

内定を出した後に承諾率が下がる背景には、多くの場合、次の3つの要因があります。

連絡不足
内定通知後、次の連絡まで期間が空いてしまうと、候補者は「本当に歓迎されているのだろうか」と不安を感じやすくなります。

情報不足
入社後の仕事内容やチーム、働き方、評価制度などの情報が十分に共有されないと、入社後のイメージが持てず、不安が大きくなります。

接点不足
選考中は複数回接点があった社員とも、内定後はコミュニケーションが減り、企業とのつながりが薄れてしまうことがあります。

こうした3つの不足を解消し、入社まで継続的にコミュニケーションを取ることが、内定承諾率を高めるための重要なポイントです。

内定者フォローの仕組み設計

内定者フォローは、担当者個人の対応に任せるのではなく、誰が担当しても一定の品質を保てるよう仕組み化することが重要です。例えば、「内定通知後1週間以内にフォロー連絡を行う」「入社前に現場社員との面談機会を設ける」「入社前に業務内容や会社情報をまとめた資料を共有する」など、候補者との接点をあらかじめスケジュール化しておくことで、不安を軽減し、入社までの安心感を高められます。

フォロー設計で意識したいのは「伝える情報の量」よりも「候補者の不安に応えているか」という視点です。「これを伝えれば安心してもらえる」という自社目線ではなく、「候補者が今どんな不安を感じているか」を起点に接点を設計することで、フォローの質が高まります。面接後のアンケートや入社者へのヒアリングを活用して、候補者が実際にどの段階で不安を感じたかを把握することも、フォロー設計の精度向上に役立ちます。

入社前後のギャップを最小化する期待値マネジメント

入社後の早期離職は、採用プロセスで形成された期待と、実際の働き方との間にギャップが生じているサインともいえます。入社前のイメージと現実の差が大きいほど、エンゲージメントが低下し、早期離職につながる可能性が高まります。

こうしたギャップを防ぐためには、仕事内容や職場環境、評価基準などを選考中からできるだけ具体的かつ正確に伝えることが重要です。魅力だけでなく、仕事の難しさや求められる役割も含めて誠実に伝えることで、候補者は入社後のイメージを持ちやすくなります。その結果、入社後のミスマッチを減らし、定着率の向上にもつながります。

採用CXを「仕組み」に落とし込む—属人的な改善が限界を迎える前に

各フェーズの改善施策を整理してきましたが、それらを「担当者が意識的に行う」状態にとどめている限り、採用CXは安定した質を保てません。担当者が変わったとき、採用数が増えて一人あたりの工数が増えたとき、体験の質は一気にばらつく可能性があります。採用CXを継続的に向上させるためには、担当者の経験や工夫だけに依存しない運用体制を構築することが欠かせません。

採用プロセスを標準化し、改善サイクルを組み込む

採用CXへの取り組みが一時的で終わる組織には共通したパターンがあります。「担当者の気遣い」がCXを支えており、マニュアル化・仕組み化がされていない。改善を実施した後に効果測定がされず、次の打ち手につながらない。採用CXの責任者が明確でなく、課題が発生しても誰が対応するかが曖昧—これらは意識の問題ではなく、採用CXを組織のプロセスとして設計していないことに起因します。

まず取り組みたいのは、採用活動全体の流れを可視化することです。応募受付から選考・内定・入社までのフローを整理し、それぞれのフェーズで「誰が」「いつ」「どのように」候補者とコミュニケーションを取るのかを明確にすることで、対応品質のばらつきを抑えやすくなります。メールテンプレートや面接ガイドライン、評価基準などを整備しておくことで、担当者が変わっても一定品質の採用CXを維持しやすくなります。

候補者データを一元管理し、KPIで改善サイクルを回す

採用CXを仕組みとして機能させるには、候補者に関するデータを一元管理できる環境が必要です。求人媒体・ATS・メールなど複数のシステムに情報が分散していると、候補者一人ひとりの状況を把握したうえでのコミュニケーションが難しくなります。各フェーズの通過率・辞退率・返信率などのデータが一か所で確認できる状態になっていると、「どのフェーズで何が起きているか」が定量的に把握でき、改善の打ち手の優先順位付けが容易になります。

KPIを設定して定期的にレビューするサイクルを組み込むことが、改善の継続につながります。採用CXの改善効果を把握するために活用しやすい指標には、次のようなものがあります。

  • 応募率:求人情報を閲覧した人のうち実際に応募した割合
  • 一次面接辞退率:面接設定後に辞退が多い場合は初動対応や案内内容に改善余地がある可能性
  • 内定承諾率:内定後フォローの質を測る最も直接的な指標
  • 入社後定着率(3か月・6か月):入社後のギャップ管理の評価にも使える長期指標
  • 候補者NPS:「知人に当社の選考を勧めたいか」を尋ねる定量的な満足度指標

定量データと候補者アンケートなどの定性的な意見を組み合わせて分析することで、改善施策の精度が高まります。

採用CXとタレントプールの連携—候補者との接点を維持する採用設計

採用CXの視点を一歩先に進めると、「選考が終わった後」の関係設計にたどり着きます。不採用になった候補者、内定辞退した候補者、選考を辞退した候補者—「縁がいったん切れた人たち」との関係を継続的に維持することが、タレントプールを活用した採用へのアプローチです。

辞退・不採用候補者を「将来の採用資産」として維持する

採用活動では、辞退者や不採用となった候補者との関係を選考終了と同時に終わらせる必要はありません。一度採用に至らなかったとしても、その後のキャリアや転職意向の変化によって、将来的に再び採用につながる可能性があります。

そのため、選考後も継続的にコミュニケーションを取り、企業情報やイベント案内、採用情報などを適切なタイミングで届けることが重要です。候補者との接点を維持することで、企業への理解や親近感が深まり、再び転職を検討した際にも候補者の選択肢に入りやすくなります。

採用CXは「応募から内定まで」の体験だけではありません。選考後も良好な関係を築き続けることが、中長期的な採用力の向上につながります。

タレントプールを機能させる3つの条件

タレントプールを採用資産として活用するには、以下の3つが揃っている必要があります。

① データの構築:過去に接点を持った候補者の情報(ポジション・選考フェーズ・辞退理由・特記事項)を一元的に蓄積する仕組みが必要です。情報が各システムに分散していると、候補者の状況を把握したうえでの再アプローチが難しくなります。

② 適切なアプローチ:候補者の状況や志向に合わせたタイミングとコンテンツでの再接触が求められます。全員に同じ内容を一斉送信するのではなく、個別性を持たせたナーチャリングが有効です。

③ 継続の仕組み化:タレントプールの構築・活用は、単発の施策ではなく継続的に回すプロセスとして設計する必要があります。担当者が変わっても維持される運用フローを整備することが不可欠です。

蓄積した候補者情報を活用して適切なタイミングでナーチャリングを行うためのツールとして、当社では採用CRM機能(MyTalent CRM)を提供しています。候補者データの一元管理から再アプローチの自動化まで、タレントプールを「動く採用資産」として機能させる基盤として活用できます。

まとめ

採用CXは、応募者満足度を高めるためだけの取り組みではありません。応募から入社までの一連の体験を見直し、候補者との信頼関係を丁寧に構築することで、応募辞退・内定辞退の抑制、企業理解の促進、中長期的な採用ブランドの向上につながります。

採用CXの改善では、まず選考ファネルを分析し、どのフェーズで候補者の離脱が多く発生しているのかを把握することが重要です。課題を可視化することで、改善すべきポイントが明確になり、優先順位をつけやすくなります。

そのうえで、施策は「候補者体験へのインパクト」と「実装コスト」の2軸で整理し、取り組む順番を決めましょう。まずは効果が大きく、比較的少ない工数で実施できる施策から着手し、担当者・実施期限・KPIを設定しながら段階的に改善を進めることで、継続的な成果につなげやすくなります。

そして重要なのは、改善を「仕組み」として組み込むことです。個人の気遣いや熱量に依存したCXは、組織が変化するたびに揺らぎます。採用プロセスの標準化、候補者データの一元管理、フォロープロセスの定型化、KPIの定期レビュー—これらを組み込んだ採用プロセスを設計することで、採用CXは継続的に機能するものになります。

とりわけ、選考を終えた候補者との関係を途切れさせずに維持するタレントプールの仕組みの構築は、自社の体制だけで構築・運用することが難しいケースも少なくありません。こうした取り組みを組織として継続するには、ツールや外部サービスの活用も有効な選択肢のひとつです。採用CXを組織の「採用力」として定着させたい方に向けて、次のセクションでMyTalent Platformをご紹介します。

AIネイティブ・統合型タレントアクイジションプラットフォーム
「MyTalent Platform」

TalentXでは、自社の採用をDX化し、データを可視化・分析して未来のタレント獲得につなげられるサービスを提供しています。採用マーケティング、採用ブランディング、リファラル採用、採用管理システムなど、トータルでご支援することが可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
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監修者情報

監修 | TalentX Lab.編集部
この記事は株式会社TalentXが運営するTalentX Lab.の編集部が監修しています。TalentX Lab.は株式会社TalentXが運営するタレントアクイジションを科学するメディアです。自社の採用戦略を設計し、転職潜在層から応募獲得、魅力付け、入社後活躍につなげるためのタレントアクイジション事例やノウハウを発信しています。記事内容にご質問などがございましたら、こちらよりご連絡ください。

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