自社の従業員など内部のステークホルダーに対するブランディング活動がインナーブランディングと呼ばれて注目を集めています。
企業や商品・サービスの魅力をアピールし、ブランドイメージ向上やロイヤルティの高いファンを増やすために実施するブランディングには「外向き」と「内向き」の2種類あります。顧客や株主、採用候補者などの外部のステークホルダーに対するブランディングはアウターブランディングと呼ばれています。一方、インナーブランディングは、自社の従業員などの内部のステークホルダーに対するブランディングを意味します。
今回は、自社の従業員向けといえるインナーブランディングについて、活動の目的や重要性やメリット・デメリットにいついて解説します。また、具体的なインナーブランディングの手法や実施施策と導入事例等についてご紹介いたします。
「インナーブランディング」目次
- インナーブランディングとは
- インナーブランディングが注目される背景
- インナーブランディングによる3つのメリット
- インナーブランディングによる2つのデメリット
- インナーブランディングの施策5ステップとは?
- インナーブランディングを実現できるリファラル採用促進ツール(MyRefer)
この記事では企業における自社の従業員向けのインナーブランディングの概要や導入する背景と具体的な手法や施策について解説します。
インナーブランディングとは
インナーブランディングとは、企業が従業員に向けて、自社の理念やミッション・ビジョン・バリュー、ブランド価値を伝えて浸透させ、自社に対する「共感」「愛着」「信頼」を持ってもらうためのブランディング活動です。
一般的にブランディングは社外に向けて行われますが、インナーブランディングは、自社の従業員など内部・内側(インナー)のステークホルダーに対して企業の魅力を発信し、ブランドイメージ向上やロイヤルティの高いファンを増やすブランディング活動を行います。
インナーブランディングの概要
インナーブランディングは、社内(自社の従業員)に向けて行うブランディング活動であり、具体的に表すと、、従業員から自社に対する「共感」「愛着」「信頼」を持ってもらうために、企業が従業員に向けて自社の理念やミッション・ビジョン・バリュー、ブランド価値を伝えて浸透させていくための啓蒙活動のことをいいます。
インナーブランディングの目的
インナーブランディングの目的は、企業理念や自社の価値を会社全体、全従業員に浸透することによって、従業員一人ひとりの行動をポジティブに変えていき、自社の業績にプラスの成果を生み出すことです。
インナーブランディングに関連するメッセージ配信や理念の浸透をするだけではなく、従業員の行動が変化し、最終的に売上・利益の向上、ひいては事業の成長といった成果になって返ってくるまでが目的になるといえるでしょう。
インナーブランディングとアウターブランディングの違い
ブランディングは、内部向けのインナーブランディングと外部向けのアウターブランディングの大きく2つに分類することができます。
インナーブランディングは、前述の通り自社の従業員に向けて行うものであり、ブランディングのターゲットは自社の従業員になります。インナーブランディングの手法としてはクレドの制作や従業員向けのWebサイト、社内報などが取り組みの一つになります。
一方、アウターブランディングは、社外に向けて自社ブランドを訴求していくものになり、ブランディングのターゲットは社外の消費者や顧客になります。ブランドロゴやキャッチコピー作成、イメージ動画の作成などはアウターブランディングの取り組みの一つになります。
インナーブランディングとアウターブランディングの大きな違いはブランディングのターゲットが社内か社外か?という部分になります。
インナーブランディングが注目される3つの背景
なぜインナーブランディングが注目されているのでしょうか?インナーブランディングが注目されている3つの背景について具体的にご紹介します。
労働人口の減少
少子高齢化によって日本の労働人口は減少し続けており、総務省のデータでは労働人口は徐々に減少を続け、2065年には2020年対比で約4割減になると推測されています。
このような状況によって企業による人材獲得競争は激化しており、人材の確保と同時に流出をいかにして防ぐか?という視点が重視されてきています。従業員満足度の向上や働きがいの創出などインナーブランディングがこういった状況を打破する一つの施策として注目されてきているのです。
出典:「少子高齢化で労働力人口は4割減」図表2労働力人口と労働力率の見通し/みずほインサイト
価値観や働き方の多様化
終身雇用・年功序列からの脱却、副業の促進、ワークライフバランス、など雇用意識や価値観が多様化しておりインナーブランディングの重要性を後押ししています。
政府も「一億総活躍社会」を提唱し「働き方改革」を推進しています。それによりプライベートを重視する時短勤務や、オフィスに出社せず遠隔で業務するリモートワーク勤務といった制度を導入するなど、多様な働き方を認める企業の人気が高まっています。
こういった状況から現在所属している会社だけではなく、その他の会社や労働環境を検討したり、触れる機会が増加しており転職を検討する人が増えています。
「労働人口の減少」の欄で背景の解説をしたように、人材流出を防ぐためにインナーブランディングの強化によって自社の魅力付けを行う必要が出てきているのです。
リモートワークなどによる帰属意識の希薄化
新型コロナウイルス拡大に伴って急激に普及したリモートワークですが、非常に便利な働き方である一方、従業員同士のつながりや企業とのつながりが希薄化しており、エンゲージメントや帰属意識の低下を引き起こしています。一部企業では前述した問題や生産性向上のため出勤を義務付ける企業も出てきました。
このような状況によって企業の魅力を感じづらく、かつさまざまなデメリットが表面化してきています。これらの課題を解決する手法としてインナーブランディングが大変有効といえるでしょう。インナーブランディングによって企業の魅力を感じ帰属意識やエンゲージメントの向上に寄与することでこのようなデメリットを軽減することが期待できるでしょう。
インナーブランディングによる3つのメリット
インナーブランディングには多くのメリットがありますが、具体的に3つのメリットをご紹介します。
社内のエンゲージメント向上・ロイヤルティ向上
インナーブランディングを行い、理念やブランドに対して「共感」「愛着」「信頼」を持ってもらうことで、仕事に対する従業員の満足度が高まりエンゲージメント向上や生産性向上を期待することができます。
例えば100ある自社(企業)の魅力の全てを感じながら仕事をしている従業員は僅かといえるでしょう。インナーブランディングによって少しでも多くの魅力を感じてもらうことで上記のエンゲージメントや生産性といった個人のパフォーマンス向上や、従業員同士の連帯感やチームビルディングといった組織パフォーマンスの向上も期待することができます。
社外のブランディング向上
なぜインナーブランディングがアウターブランディングに良い影響を与えるのでしょうか?それはインナーブランディングによってもたらされた従業員の行動や対応が企業の業績やイメージに大きく影響するからです。
従業員は様々な場面で社外の多くの方々と接しており、従業員一人ひとりの行動が社外からのイメージを構築しています。社外向けのアウターブランディングに目を向けがちですが、社外からの評価やイメージを作っているのは現場の従業員であることを忘れてはいけません。
採用への効果
強力な理念やMVV、ブランド価値は多くのファンを生み出し、会社やチームに引き付けられ入社を希望する人が多く現れるでしょう。
また、インナーブブランディングによってファン化した従業員が社内外に会社の魅了を発信することで、求職者に対して正しく自社の価値や魅力が伝わり、リファラル採用につなげることもできます。
その結果採用コストは低下し、理念共感した従業員が増えることで離職率を下げる効果も期待することができます。
ファンベース採用の意義~本質的なリファラル採用とフレームワークSOTSとは~
https://mytalent.jp/lab/resource_14/
「ファン創造」という採用マーケティング活動とリファラル採用の関係性
https://mytalent.jp/lab/resource_10/
インナーブランディングによる2つのデメリット
多くのメリットがあるインナーブランディングですが、デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?インナーブランディングの2つのデメリットをご紹介します。
インナーブランディングにはコストがかかる
インナーブランディングを行うデメリットのひとつとして「コスト」があげられます。
全社員を巻き込んだ施策になるため対応する従業員の工数や、ツール導入、場合によっては外部のコンサルタント費用といったコストがかかると想定されます。
インナーブランディングの効果が分かりづらい
インナーブランディングは計画から実施、理念やMVVの浸透までに相当の時間がかかるので、効果が出るまで中長期的な取り組みが必要になります。
また、効果を定量化・可視化することが難しく、その他外部要因の影響も大きいため効果が分かりづらい点がインナーブランディングのデメリットになります。
インナーブランディングの施策5ステップとは?
インナーブランディングを導入するうえでどんなポイントがあるのでしょうか?
インナーブランディング施策や手法の導入に関する5つのステップ毎にポイントを解説していきます。
ステップ①:目的・目標の設定
インナーブランディングを行うことによって、どのような状態や数字を目指すのか、
テーマ設定や数値目標を設定しましょう。可能であれば最終目標だけでなく中間目標を設定してインナーブランディング推進による効果を数値化することで、PDCAが回りやすい状態を作っていきます。
目的や具体的な目標設定がないまま進めてしまうと、仕組みや施策が形骸化することが考えられます。「なぜ」インナーブランディングを行うのか明確にし目指すべきゴールを設定していきましょう。
ステップ②:ブランドコンセプトの作成
自社の企業理念やミッション・ビジョンなどを踏まえてブランドコンセプトを作成しましょう。
ブランドコンセプトはブランディングにおいて重要な要素になるため、自社のミッション・ビジョンと提供するサービスがかみ合うブランドコンセプトを作成する必要があります。ここに違和感があるとむしろマイナスイメージを与える要因にもなりますので、誰もが納得できる内容を目指して作成を進めましょう。
ステップ③:ペルソナの設計・ターゲティング
社内のどういった従業員に対して訴求をしていくのかペルソナの設計・ターゲティングをしましょう。
イノベーターやアーリーアダプターといった柔軟かつ影響力の大きい層から浸透を図りボトムアップしていくのか?上位役職者から落とし込むようなトップダウンで浸透を図るのか?方針を決めペルソナを設計・ターゲティングをしていくことによって効果的かつ効率的にインナーブランディングを進めることができるでしょう。
また、この際にインナーブランディング施策に対して好意的なペルソナだけでなく、否定的な意見や印象をもつペルソナも作成することで、次にある訴求内容の決定に活かすことができます。
インナーブランディングが全ての従業員に支持され浸透されていくのが理想的ではありますが、少なからず反対意見を持つ層は生まれてしまいますので、どういった意見が出る可能性があるのか事前に想定することで対策をスムーズに行うことができます。
ステップ④:訴求内容の決定
想定のペルソナに対してどのようなメッセージを発信していくのか訴求内容を決定していきましょう。
従業員が意義を感じられる内容になっているのか?共感できる内容になっているのか?目的・目標で定めたテーマや数値目標を達成するために、適格な訴求内容を策定・準備していきましょう。
どういったメッセージであれば従業員(ペルソナの)が共感し行動が変化するのか?従業員からも意見を聞きつつ作成するようにしましょう。
ステップ⑤:見せ方(媒体・手法)の決定
ターゲティングと訴求内容が決定したらどのように情報を届けるか検討しましょう。
インナーブランディングに関連する情報をターゲットに対してどの媒体を通じて情報を届けるのか?届けるための手段はテキストなのか?画像なのか?動画なのか?相手が情報を受け取る状態を考え理想の状況にできるだけ近づけましょう。
現代では、コミュニケーションツールやグループウェアなど、企業はさまざまなツールを導入しており、従業員もさまざまな媒体や状態で情報に触れる機会があり、日々大量の情報に囲まれて日々の業務をおおなっています。
1度の送付(接触)ではなかなか従業員一人ひとりにインナーブランディングに関連する情報を落とし込むことは難しいので、さまざまな媒体から複数回送付(接触)することで情報の落とし込みを促進していきましょう。
インナーブランディングを実現できるリファラル採用促進ツール(MyRefer)
TalentXではエンゲージメント向上やミスマッチ解消にむけたリファラル採用の支援を行っており、社員の方々が簡単に楽しく自発的に友人紹介ができるよう、制度設計から広報施策の提案、改善施策の提示までクラウドサービスの提供とリファラル採用に対するコンサルティングを行っております。
自社の社員がリファラル採用を通して自社の魅力や理念を語る機会を作ることで、エンゲージメントの向上が期待出来たり、インターナルコミュニケーション(社内広報)の機能を通してインナーブランディングの効果を期待することができます。
監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
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