「内定を出しても承諾してもらえない」「入社してもすぐに辞めてしまう…」—そうした採用の”歩留まり”の悪化に直面し、役員から改善を求められている人事リーダーの方は少なくないのではないでしょうか。
売り手市場が定着した現在、採用活動の後半フェーズ—内定から入社、そして定着まで—における歩留まりの低下は、一部の企業だけが抱える特殊な問題ではなく、多くの組織に共通する構造的な課題となっています。内定者フォローに時間も工数もかけているのに成果が出ない、懇親会を開いても定期連絡を入れても辞退される。こうした課題を改善するためには、個別の施策を場当たり的に実施するだけでなく、内定から入社・定着までのフォロー全体を一つの仕組みとして設計する視点が重要です。
本記事では、採用歩留まりの基礎知識と業界平均の目安から、今日から実践できる内定者フォロー施策の具体例と「採用後フォロー設計」の4ステップフレームワーク、さらに売り手市場の現代において「辞退・離職を資産に変える」タレントプール戦略まで、一気通貫で解説します。
目次|内定辞退を防ぐフォロー設計
- 採用における「歩留まり」とは?基本定義と計算方法
- 【新卒・中途別】採用歩留まり・内定承諾率の平均目安
- なぜ辞退される?内定辞退・早期離職が起こる3つの根本原因
- 内定承諾率を向上させる効果的な「内定者フォロー施策」5選
- 内定承諾率・定着率を最大化する「採用後フォロー設計」4ステップ
- 内定者フォローだけでは解決しきれない|売り手市場で求められる新たな視点
- 採用の歩留まりを根本から変える「タレントプール採用」という新常識
- まとめ
採用における「歩留まり」とは?基本定義と計算方法
採用における歩留まりを正確に把握できていないと、どのフェーズに課題があるのか判断できず、改善施策も場当たり的になりやすくなります。改善に向けた一歩を踏み出すために、まず正しい用語の定義と計算方法を整理し、自社の採用ファネルを数値で可視化することから始めましょう。
歩留まり率(選考通過率・内定承諾率)の計算式
採用における「歩留まり率」とは、各選考フェーズから次のフェーズへと進んだ候補者の割合を示す指標です。応募から書類選考、一次面接、最終面接、内定、内定承諾、入社、そして定着まで、採用プロセスは複数のフェーズで構成されており、それぞれに歩留まりが存在します。
各フェーズの歩留まり率は、以下の計算式で算出できます。
歩留まり率(%)= 次フェーズへの通過者数 ÷ 当該フェーズの対象者数 × 100
たとえば内定を100名に出して80名が承諾した場合、内定承諾率は80%となります。重要なのは、1つのフェーズだけを見るのではなく、「どのフェーズで候補者が最も多く離脱しているか」をファネル全体を見ながら把握することです。一見、内定承諾率が高くても、その前段の面接通過率が著しく低ければ採用全体の効率は落ちています。採用ファネル全体を俯瞰した上でボトルネックを特定することが、次の改善策を考える際の出発点となります。
なぜ今「内定後フェーズ(内定〜入社〜定着)」が最も重要視されるのか
採用コストの観点から考えると、内定出しまでには求人広告費・エージェント手数料・選考にかかる人件費など、採用予算の大部分がすでに消費されています。その状態で内定辞退や早期離職が発生すると、投資した時間とコストのほぼすべてが回収できない事態になりかねません。
こうした背景から、「採用の入口(母集団形成)」への投資だけでなく、「内定後から入社・定着まで」の後半フェーズをどのように設計するかが、採用効率を考えるうえで重要な視点になります。特に採用競争が激しいIT・スタートアップ・専門職領域では、内定後のフォロー体制や体験設計の違いが、内定承諾率や定着率の差として表れやすいとされています。
【新卒・中途別】採用歩留まり・内定承諾率の平均目安
「自社の歩留まりが低いのかどうか」を客観的に判断するためには、採用形態ごとの一般的な目安と自社のデータを照らし合わせることが有効です。ここでは新卒・中途採用のフェーズ別の歩留まり目安を整理します。自社の実績数値と比べながら、どのフェーズに課題があるかを確認してみてください。
新卒採用におけるフェーズ別歩留まり平均目安
新卒採用は、エントリーの段階から母集団が大きい一方、各フェーズで絞り込みが行われていくため、段階的な歩留まり低下が起こりやすい構造を持っています。説明会への参加率・エントリーシートの通過率・面接の通過率はそれぞれ企業規模や認知度によって大きく異なりますが、内定承諾率は一般的に60〜80%程度が一つの目安として紹介されることがあります。ただし、職種や採用難易度によって大きな差が生じるため、自社の過去実績とあわせて評価することが重要です。
とりわけ注意が必要なのは、内定承諾後から入社までの期間です。新卒採用は内定承諾から入社まで数ヶ月の空白期間が生じるため、その間に「内定ブルー」と呼ばれる心理的不安が生じやすく、承諾したにもかかわらず辞退するケースが一定数発生します。内定承諾後のフォローをどれだけ丁寧に設計できているかが、最終的な入社率に直結します。
中途採用におけるフェーズ別歩留まり平均目安
中途採用は、新卒採用と比べて1名あたりの選考工数が大きい一方、候補者側も在職中の転職活動であるケースが多く、選考スピードや条件提示のタイミングが歩留まりに大きく影響します。内定承諾率は新卒と比べてやや低くなりやすく、50〜70%程度が一般的な目安として言及されることが多いとされています。
また、スカウト経由と一般求人媒体経由ではフォロー設計のあり方が異なります。スカウト経由の候補者は企業側からアプローチした関係性があるため、丁寧なフォローが入社意欲の維持に効果的とされています。一方、求人媒体経由では候補者の軸や志望度がばらつきやすく、選考の初期段階からエンゲージメントを高めていく工夫が重要になります。
自社の「ボトルネックフェーズ」を特定する基準
歩留まり改善の施策を考える前に、「どこで候補者が離脱しているか」を正確に特定することが不可欠です。ボトルネックのフェーズによって、打つべき施策はまったく異なるためです。以下の視点で自社データを確認してみてください。
- 内定前に離脱が多い場合: 選考体験・選考スピード・条件提示のタイミングに課題がある可能性が高い
- 内定承諾後に辞退が多い場合: フォローの頻度・内容・入社前のコミュニケーション設計に課題がある可能性が高い
- 入社直後の早期離職が多い場合: オンボーディング設計・現場の受け入れ体制に課題がある可能性が高い
「内定が出る前に離脱されている」のか「内定後に辞退されている」のかによって、打つべき施策はまったく変わります。自社のフェーズ別データを可視化し、原因を特定することから始めてください。
なぜ辞退される?内定辞退・早期離職が起こる3つの根本原因
内定辞退や早期離職が発生した場合、その背景にある要因を十分に分析しないまま次の採用活動に進むと、同様の課題が繰り返される可能性があります。歩留まり改善の施策を検討する際は、まず候補者がどのような不安や期待を抱え、どのような基準で意思決定を行っているのかを理解することが重要です。
内定ブルー(内定承諾後に訪れる心理的不安)の放置
内定を承諾した直後、候補者の多くが「本当にこの企業でよかったのか」という心理的な揺り戻しを経験するとされています。これは「内定ブルー」とも呼ばれる現象で、特に人生の大きな転機となる就職・転職において広く見られる心理反応です。
内定ブルーが生じる背景には、現職・現環境から離れることに対する不安、新しい組織や環境に適応できるかという不安、そして複数内定を受けている場合の「他社と比べてしまう」心理が挙げられます。この時期に企業側からのコミュニケーションが途絶えると、候補者は不安を一人で抱え込み、他社へ気持ちが揺れるリスクが高まります。内定承諾後のフォローが最も重要とされるのは、まさにこのタイミングに対応するためです。
他社比較と選考スピード負け(リードタイムの問題)
売り手市場において、優秀な候補者ほど複数の企業から内定を受けているケースが多くなっています。その状況下では、各社からの条件提示や連絡のスピードが意思決定に大きく影響します。
合否連絡が遅い、承諾期限の設定が不適切、あるいは給与・職位・リモートワーク条件などについて認識のズレがあると、内定後になってサイレント辞退(連絡が取れなくなる形での辞退)につながるケースも少なくありません。選考フロー全体を通じた丁寧な認識合わせが、内定後の辞退防止においても重要になります。
入社後のリアルに対するイメージギャップ(オンボーディング不足)
採用面接や内定者フォローの場で伝えられる「仕事の魅力」と、入社後に実際に経験する業務・職場環境との間にギャップがあると、早期離職のリスクが高まります。「聞いていた話と違う」と感じた場合の失望感は、定着率を低下させる要因になりやすいとされています。
早期離職の多くは入社後数ヶ月以内に集中する傾向があるとされており、その原因の一端は、内定者フォローの段階で「入社後のリアル」を適切に伝えきれていないことにあります。魅力だけを強調した説明は短期的な承諾率を高めることがあっても、長期的な定着率の観点では逆効果になりかねません。フォロー設計においては、業務の具体的なイメージを伝える機会を意図的に組み込むことが求められます。
内定承諾率を向上させる効果的な「内定者フォロー施策」5選
内定者フォローは、「何をするか」だけでなく「いつ・誰がするか」の設計が成否を分けます。候補者の不安は内定承諾直後・承諾後1〜2ヶ月・入社1ヶ月前など、タイミングによって性質が異なります。「不安の解消」と「関係性の維持」という2つの目的を軸に、施策単体で考えるのではなく、内定から入社までのタイムラインに沿って設計することが重要です。そのうえで、以下の5つの施策を参考にしてください。
役員・現場社員との座談会・懇親会(リアル・オンラインの使い分け)
内定承諾後の早い段階で、入社後に一緒に働く予定の社員と直接交流できる機会を設けることは、内定者の心理的不安を軽減する効果が期待できます。採用担当者からの説明とは異なり、現場のリアルな声が届くことで、候補者は「自分がこの組織でどう働くか」を具体的にイメージしやすくなります。
実施形式については、地理的な距離がある場合や複数回の開催を想定する場合はオンライン、候補者に入社後の働くイメージをより具体的に持ってもらいたい場面では、対面での交流機会を設けることが効果的と考えられます。また、役員が参加する回と現場社員が中心となる回を分けて設計することで、内定者それぞれの関心に応じた交流を促すことができます。
内定者専用コミュニティ(SNS・Slack等)の運用と既存社員の巻き込み方
内定者同士や社員がつながれる専用の場を設けることで、企業との接点を日常的に維持できるようになります。ただし、グループを作るだけでは機能しません。投稿の頻度・内容・既存社員の関与の仕方まで設計しておくことが重要です。
効果的に運用するためには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。まず、採用担当者だけが情報発信を行うのではなく、入社1〜3年目の若手社員など、内定者が身近に感じやすい社員もコミュニケーションに参加できる環境を整えることが重要です。また、会社からのお知らせだけでなく、日常業務の様子や社内イベントなど、実際の職場の雰囲気が伝わる情報を継続的に発信することも有効と考えられます。さらに、内定者から寄せられる質問や不安に対して、迅速に対応できる体制を整えておくことも欠かせません。こうした取り組みによってコミュニティ内の交流が活性化し、企業への親近感や入社への期待感の醸成につながることが期待できます。
評価理由を言語化して伝える「フィードバック・クロージング面談」
内定通知とともに、もしくはその直後に、「なぜあなたを選んだのか」を言語化して伝える面談を設定することは、内定者の自己効力感と入社意欲を高める上で有効とされています。「あなたのこういう点を高く評価した」「入社後はこういう活躍を期待している」という具体的なメッセージは、候補者に「この企業は自分のことを理解してくれている」という信頼感をもたらします。
面談の実施者については、採用担当者・現場マネージャー・役員のいずれが担当するかによって候補者への印象が異なります。入社後の直属上司となる人物から直接言葉を届けることで、より高い効果が見込まれます。辞退の可能性がある候補者へのクロージングとしても、効果が期待できます。
入社前インターン・業務体験による「入社後のリアル」の先出し
入社前に実際の業務を体験できる機会を設けることは、イメージギャップの解消と入社後の具体的なイメージ形成の両方に効果が期待できます。候補者が「この組織で本当に働けるか」を自ら確かめる機会にもなり、内定辞退を防ぐと同時に「入社後に辞めない」人材の見極めにも機能します。
設計上の注意点として、業務体験は実態を誠実に伝えることが前提です。良い面だけを見せようとする過度な演出は、入社後の「聞いていた話と違う」という失望につながるリスクがあります。受け入れ側の現場メンバーが事前に趣旨を理解して関与できるよう、担当者の選定と事前説明を丁寧に行うことが成功の鍵となります。
定期的な1on1面談による「辞退の予兆」の早期キャッチ
内定承諾から入社までの期間、定期的に1on1面談を設けることで、候補者の心境の変化を早期に把握できます。メールやチャットだけでは表面化しにくい「迷い」や「不安」も、対話の場では引き出しやすくなります。
会話の設計においては、「今の気持ちはどうですか?」「何か気になっていることはありますか?」という、候補者が答えやすい柔らかい問いかけから始めることが自然な対話につながります。明確な辞退意思の表明よりも前の段階—たとえば返信が遅くなる、面談の雰囲気が変わるなど—にいち早く気づき、フォローを強化できる体制を整えておくことが重要です。
内定承諾率・定着率を最大化する「採用後フォロー設計」4ステップ
内定者フォローの施策を個別に実施していても、全体としての一貫性がなければ十分な成果につながりにくい場合があります。内定から入社、そして定着に至るまでのプロセスを一連の体験として設計することで、候補者の不安を継続的に解消しながら、内定承諾率と定着率の向上が期待できます。まずは、以下の4つのステップをもとに、自社のフォロー体制を見直してみましょう。
ステップ1:内定〜入社までの「フォロータイムライン」を可視化する
フォローが属人化・場当たり的になる最大の原因は、「誰が・いつ・何をするか」が明文化されていないことにあります。まず取り組むべきは、内定日から入社日、さらに入社90日までの期間を1枚のタイムラインとして可視化することです。
タイムラインには、各時点で実施するアクション(面談・コミュニティ投稿・電話など)、担当者、候補者への連絡方法と頻度を明記します。たとえば「内定承諾後1週間以内に採用担当からお礼の電話」「承諾後1ヶ月時点で現場マネージャーとの面談」「入社1ヶ月前にオンボーディング担当者を紹介する」といった具合に、時系列でアクションを配置することで、フォローの抜け漏れを防ぐことができます。
ステップ2:人事・現場・役員の「役割分担(体制)」を明確化する
内定後フォローが機能しない組織の多くで見られるパターンの一つが、「採用担当者が一人で抱え込む」構造です。採用担当者がすべてのフォローに対応しようとすると、工数が逼迫するだけでなく、候補者との接点が採用担当者との会話に限定されてしまいます。
効果的なフォローのためには、採用担当者・現場マネージャー・役員がそれぞれ適切な役割を担う体制を整えることが重要です。たとえば、採用担当者は全体の進捗管理とコミュニティ運営、現場マネージャーは業務内容に関する相談対応、役員は企業ビジョンの伝達、といった役割分担が考えられます。この体制を機能させるには、採用担当者が社内の協力者を巻き込むための説明と合意形成を先に行っておくことが不可欠です。
ステップ3:内定後フォローから「オンボーディング」へのスムーズな連動
内定後フォローとオンボーディングを別々の取り組みとして運用していると、入社を境に候補者との関係性が途切れてしまう可能性があります。せっかく内定期間中に築いた信頼関係や理解を活かすためにも、内定後フォローからオンボーディングへとスムーズにつながる仕組みを整えることが重要です。
その際は、候補者との面談やコミュニケーションの中で把握した不安や期待、キャリア志向などの情報を記録し、入社後の受け入れを担当する現場や上司と共有しておくとよいでしょう。例えば、入社後の面談で「選考中にお話しされていた〇〇について、その後いかがですか」と声をかけることで、「自分のことを理解してくれている」という安心感につながることが期待できます。
入社は候補者との関係構築のゴールではなく、新たな関係づくりのスタートです。内定後フォローの終了とオンボーディングの開始を切り離して考えるのではなく、一連の候補者体験として設計することが、定着率向上にもつながる重要なポイントといえるでしょう。
ステップ4:辞退者・離職者の「離脱理由」の分析とフィードバックループ
内定辞退や早期離職が発生した際は、その結果だけを見るのではなく、背景にある要因を分析し、次回以降の採用活動に活かす仕組みを構築することが重要です。こうした振り返りを継続的に行うことで、フォロー施策や採用プロセス全体の改善につながり、中長期的な歩留まり向上が期待できます。
辞退理由を把握する方法としては、選考途中や内定後に辞退した候補者へのアンケートやヒアリングが挙げられます。収集した情報は、単に個別事例として扱うのではなく、共通する傾向や背景を整理しながら分析することが重要です。例えば、「どのフェーズで辞退が発生しやすいのか」「候補者が不安を感じていたポイントは何か」「競合企業との比較でどのような差があったのか」といった観点で振り返ることで、改善すべき課題が見えやすくなります。
また、定量的な傾向だけでなく、候補者のコメントや面談内容などの定性的な情報にも目を向けることで、数値だけでは把握しにくい課題を発見できる場合があります。こうした分析結果を次回のフォロー設計や選考プロセスの改善に反映することで、採用活動全体の精度を継続的に高めていくことができるでしょう。
内定者フォローだけでは解決しきれない|売り手市場で求められる新たな視点
ここまで紹介したフォロー施策を継続的に実践することで、内定承諾率や定着率の向上が期待できます。一方で、採用市場の競争が激化するなかでは、どれだけ丁寧にフォローを行っても、すべての内定辞退や早期離職を防ぐことは難しいのが実情です。
そのため、フォロー施策の充実だけでなく、「辞退や離職が一定数発生することを前提に、どのように採用成果を最大化するか」という視点も重要になっています。売り手市場が続く現在の採用環境においては、こうした中長期的な視点で採用活動を捉えることが求められています。
優秀な人材(ハイパフォーマー)ほど複数内定が当たり前であり、辞退はゼロにできない
多くの企業が採用したいと考える優秀な人材ほど、複数の企業からアプローチを受けているケースが少なくありません。特に売り手市場では、候補者が複数社の選考を同時に進めることも一般的になっており、最終的な意思決定は、フォロー施策の内容だけでなく、選考のタイミングやポジション、待遇、企業文化との相性など、さまざまな要因の影響を受けます。
そのため、どれだけ丁寧なフォローを行ったとしても、一定数の内定辞退が発生する可能性は避けられません。もちろん、辞退理由を振り返り、改善につなげることは重要です。しかし、それと同じくらい重要なのが、辞退という結果だけに目を向けるのではなく、「一度は自社に興味を持ち、選考に参加してくれた人材」として、その後の関係性をどのように捉えるかという視点です。
採用活動を短期的な合否の積み重ねとして考えるのではなく、人材との接点を中長期的な関係構築の入り口として捉えることで、将来的な採用機会の創出につながる可能性があります。こうした考え方は、近年注目されているタレントプール採用の取り組みにも通じるものです。
「不合格・辞退・退職=関係終了」とする従来型採用が抱える機会損失
多くの企業では、選考で不合格となった候補者や内定辞退者、退職した元社員との関係は、その時点で一区切りとなるケースが少なくありません。しかし、その過程で築かれた接点やコミュニケーションの蓄積が、その後の採用活動で活用されることは限定的です。
一方で、選考時にはタイミングや条件が合わなかった候補者であっても、数年後に転職を検討する際には状況が変化している可能性があります。また、退職した元社員が新たな経験を積んだ後に再び自社に関心を持つケースも考えられます。
こうした可能性があるにもかかわらず、一度接点を持った人材との関係が完全に途切れてしまうと、将来的な採用機会を活かしにくくなります。採用活動を単発の選考プロセスとして捉えるのではなく、人材との関係構築の起点として考えることが、これからの採用活動ではより重要になっていくと考えられています。
近年は、このような課題に対応するために、不合格者や内定辞退者、退職者との関係を継続的に維持しながら将来の採用につなげる「タレントプール」という考え方にも注目が集まっています。
採用の歩留まりを根本から変える「タレントプール採用」という新常識
前章で触れたように、「一度接点を持った候補者との関係を継続する」という考え方を実践する仕組みとして、近年注目されているのが「タレントプール採用」です。
タレントプール採用とは、選考参加者や内定辞退者、不合格者など、一度接点を持った人材との関係を中長期的に維持しながら、継続的なコミュニケーションを通じて将来の採用機会につなげる考え方を指します。
採用活動をその時点の選考結果だけで完結させるのではなく、人材との接点を蓄積し、適切なタイミングで再びアプローチできる状態をつくることで、採用チャネルの多様化や採用効率の向上が期待されています。
内定辞退者・選考落ちの優秀層をタレントプールに蓄積するメリット
経営や採用戦略の観点から見ると、タレントプールは単なる「過去の応募者リスト」ではありません。むしろ、自社の採用活動を通じて接点を持ち、一定の選考や評価を経た人材情報が蓄積された、価値の高い採用資産と捉えることができます。
タレントプールでは、内定辞退者や選考途中で離脱した候補者、不採用となった候補者など、一度接点を持った人材との関係を継続的に管理します。そして、「今回は採用に至らなかった人材」を将来の採用候補者として位置づけ、適切なタイミングで再び接点を持てる状態を維持していきます。
実際に、過去の選考を通じて自社の事業やカルチャーに触れた経験のある人材は、新たに接点を持つ候補者と比べて、企業理解が進んでいる状態からコミュニケーションを始められる場合があります。特に、内定辞退者や選考過程で高い評価を受けた候補者は、転職タイミングやキャリアの方向性が変化した際に、有力な採用候補者となる可能性があります。
また、自社で構築したタレントプールから採用につながった場合、新たな集客や紹介にかかるコストを抑えられるケースもあります。そのため、タレントプールは採用機会の拡大だけでなく、採用活動の効率化や採用コストの最適化という観点からも注目されています。
心理的距離を保ちながら関係を維持・育成(ナーチャリング)する具体的な方法
タレントプール採用において重要なのは、「関係を維持しながら過度にプレッシャーをかけない」というバランスです。辞退直後に再度採用の話を持ちかけるのではなく、企業の近況や事業の成長、採用に関する情報などを継続的に届けることで、候補者との接点を自然な形で維持していくことが求められます。
具体的には、メールニュースレターや採用オウンドメディアを通じた情報発信、組織拡大や新規事業の立ち上げなどのトピック共有、選考終了から一定期間が経過したタイミングでのカジュアルな近況確認などが挙げられます。重要なのは、採用目的だけを前面に出すのではなく、候補者にとって価値のある情報を継続的に届けながら関係性を育てていくことです。
こうした取り組みを実践するためには、過去に接点を持った候補者の情報を蓄積し、適切なタイミングでコミュニケーションを行える環境を整えることが重要です。近年では、タレントプールの構築や候補者との継続的な関係維持を支援するタレントCRMの活用も広がっています。
まとめ
採用の歩留まり改善を「今期の内定辞退を減らす」という短期的な課題だけで捉えていると、施策を積み重ねても採用構造そのものは変わりません。フォローの充実に取り組むことは重要ですが、それと同時に、辞退者や選考離脱者との関係を継続的に維持し、将来の採用機会へとつなげていく視点も求められます。
これからの採用活動では、「いかに採用するか」だけでなく、「一度接点を持った人材との関係をどう資産化するか」が、企業の採用力を左右する重要なテーマになっていくと考えられます。
一方で、こうした取り組みを人事担当者の運用だけで継続することは容易ではありません。候補者情報の蓄積や管理、継続的なコミュニケーション設計、適切なタイミングでのアプローチなど、仕組みとして運用できる環境を整えることが重要です。
こうした課題に対しては、タレントCRMやタレントプールを活用した採用基盤の整備も有効な選択肢の一つです。採用活動全体を「点」ではなく「つながり」で捉え直す第一歩として、ぜひ以下のサービスもご参考ください。
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※本記事に記載の歩留まり率・内定承諾率の目安値は、上記調査レポートおよび採用実務に関する業界一般の知見を参考に記述しています。企業規模・業種・採用手法によって実績値は大きく異なります。自社データとの比較にあたっては、各一次資料を直接ご参照ください。
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資料ダウンロード:https://i-myrefer.jp/corp/download/403/input
監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
この記事は株式会社TalentXが運営するTalentX Lab.の編集部が監修しています。TalentX Lab.は株式会社TalentXが運営するタレントアクイジションを科学するメディアです。自社の採用戦略を設計し、転職潜在層から応募獲得、魅力付け、入社後活躍につなげるためのタレントアクイジション事例やノウハウを発信しています。記事内容にご質問などがございましたら、こちらよりご連絡ください。





