求人媒体費や人材紹介会社への紹介手数料は年々上昇し、多くの企業で採用予算が採用計画に追いつかない状況が生まれています。一方で、コスト削減だけを優先して予算を縮小すると、必要な人材を確保できず、採用活動そのものが停滞してしまうケースも少なくありません。
「コストは抑えたい。しかし、採用の質は落としたくない」。こうした相反する課題を抱え、採用コストをどのように最適化すべきか悩んでいる人事責任者の方も多いのではないでしょうか。
採用コストの最適化とは、単に費用を削減することではありません。限られた予算の中で採用成果を最大化し、持続的に人材を獲得できる採用体制へ転換していくことが本質です。そのためには、採用コストが高騰する要因を正しく理解したうえで、短期的な改善策だけでなく、中長期的な採用基盤の構築まで視野に入れて取り組む必要があります。
本記事では、採用コストの内訳や高騰する背景を整理したうえで、採用の質を維持しながら求人媒体費やエージェント費を抑える具体的な方法を紹介します。さらに、一時的なコスト削減施策だけでは限界を迎えやすい理由や、採用コストの構造そのものを見直すための考え方についても解説します。採用コストの増加に課題を感じている人事責任者の方が、実務ですぐに活用できる内容としてまとめています。
目次|採用コスト削減の具体策
- 採用コスト削減が急務である理由
- なぜ自社の採用コストは高止まりするのか?考えられる3つの背景
- 採用の質を維持しながら外部コストを抑える4つの具体策
- 採用コスト削減による影響と対策
- なぜ「フロー型採用」は限界を迎えるのか
- ストック型採用への転換—タレントプールによる持続的コスト削減
- タレントプール運用を仕組み化するには—人事の工数をどう抑えるか
- まとめ
採用コスト削減が急務である理由
採用市場では人材獲得競争が激化し、多くの企業で採用コストが上昇しています。一方で、採用予算を際限なく増やせる企業は多くありません。そのため、限られた予算のなかで必要な人材を確保するためには、採用コストを適切に管理し、採用成果を維持・向上させながら無駄な支出を抑える「採用コストの最適化」が重要になっています。
ここでは、採用コストの最適化が求められる背景について解説します。
労働人口減少と採用手法多様化による単価の上昇
採用コストの削減が求められる背景には、一時的な景気や採用市況の変化だけではなく、労働人口の減少や採用手法の多様化といった構造的な要因があります。人材獲得競争が年々激化するなか、企業は従来よりも多くのコストをかけなければ、必要な人材を確保しにくい状況になっています。
例えば、人材紹介会社を利用する場合、紹介手数料は想定年収の35〜40%程度が一般的な相場です。想定年収500万円のポジションであれば、1名あたり175万〜200万円程度の費用が発生します。採用人数が増えるほど外部への支出も積み上がるため、事業拡大に伴って採用コストも増加しやすくなります。
また、求職者が利用する情報チャネルの多様化により、求人媒体だけでなく、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用、採用SNSなど、複数の採用手法を組み合わせて運用する企業が増えています。採用チャネルが増えることは候補者との接点を広げる一方で、それぞれに費用や運用工数が発生するため、採用活動全体のコストは高まりやすい傾向があります。
こうした変化は一時的なものではなく、今後も続くことが見込まれます。そのため、「採用コストが上がってから対策を講じる」のではなく、採用チャネルの見直しや業務効率化、自社採用力の強化などを通じて、早い段階から採用コストを最適化する取り組みを進めることが重要です。
なぜ自社の採用コストは高止まりするのか?考えられる3つの背景
コスト削減の打ち手を検討する前に、なぜコストが膨らんでしまうのか、その因果関係を正しく特定しておく必要があります。原因を特定せずに場当たり的な予算カットを行うと、削減効果が一時的なものにとどまってしまう可能性があります。
ミスマッチによる早期離職と「再採用コスト」の悪循環
採用にかけたコストと工数は、入社後に早期離職が発生すると実質的に無駄になってしまいます。それだけでなく、欠員を補うために再度採用活動を行う必要が生じるため、同じポジションに対して二重のコストが発生する悪循環に陥りやすくなります。
早期離職の背景には、選考段階での見極め不足や、入社後の期待値と実態のズレなど複数の要因が考えられます。特に、選考時に伝えていた業務内容や組織カルチャーと、入社後の実態にギャップがある場合、候補者側の納得感が薄いまま入社が決まってしまい、早期離職につながる傾向があります。早期離職が発生すると、採用にかけた広告費や紹介手数料に加えて、教育・オンボーディングにかけた時間もあわせて損失となるため、単純な採用単価だけでは見えないコストが積み重なっていきます。
このような悪循環を防ぐためには、「採用できたか」だけでなく「入社後に活躍・定着できたか」まで含めて採用活動を評価する視点が重要です。定着率や活躍度もあわせて振り返ることで、単純に採用人数を増やす発想による逆効果を避けやすくなります。
ターゲット設計の曖昧さが招く「無駄な母集団形成」
求める人物像が曖昧なまま母集団形成を進めると、広告費をかけて集めた応募者の多くが実際の採用要件に合わないという事態が起こりやすくなります。応募数を増やすこと自体が目的化してしまい、選考の歩留まりが悪化することで、結果的に一人を採用するためのコストが割高になる傾向があります。
たとえば、応募要件を広めに設定して応募数を確保しようとする運用は、一次選考の通過率を下げ、選考にあたる面接官の工数を余分に消費させることにもつながります。応募数だけをKPIとして追ってしまうと、実際には採用に至らない応募者への対応に多くの時間が割かれ、外的コストと内的コストの両方が同時に膨らんでしまう結果になりかねません。
こうした事態を避けるには、スキルや経験だけでなく、価値観や志向性まで含めた採用ペルソナを具体的に描き、媒体選定やスカウト文面に反映することが有効です。要件が明確になれば、必要以上に母集団を広げずに済み、応募数の多さよりも要件に合致した応募者の比率を重視する運用へ切り替えやすくなります。
過去の応募者・辞退者を活用できていない採用
多くの企業では、選考に進んだものの内定に至らなかった候補者や、内定を辞退した候補者との関係が、選考終了と同時に途切れてしまいます。しかし、こうした候補者はすでに自社への応募という接点を持っており、まったくの新規層に比べて自社理解が進んでいる層といえます。
この層へのアプローチを一度きりで終えてしまうことは、コスト高の大きな要因になっている可能性があります。選考にかかった工数や、候補者との間で築いたコミュニケーションの積み重ねも、選考終了と同時に失われてしまうことになり、次に同じポジションで募集をかける際には、また一からその関係を作り直す必要が生じます。毎回ゼロから新規の母集団を形成し直すのではなく、過去に接点のあった候補者との関係をどう維持していくかという視点が、後半で紹介する中長期的なコスト構造の見直しにつながっていきます。
採用の質を維持しながら外部コストを抑える4つの具体策
採用コストを最適化する方法は数多くありますが、重要なのは単に費用を削減することではなく、採用成果を維持しながら見直せるコストを見極めることです。ここでは、すぐに実践しやすい施策から中長期的な取り組みまで、多くの企業で取り入れやすい5つの具体策を紹介します。自社の採用課題や状況に照らし合わせながら、最適な施策を検討してみてください。
求人媒体の掲載プラン最適化と成果報酬型へのシフト
複数の求人媒体を並行利用している場合、実際の応募数や採用決定数に対して費用対効果を検証してみると、成果につながっていない媒体が見つかることがあります。掲載課金型の媒体を闇雲に解約するのではなく、過去半年〜1年程度の実績データをもとに、媒体ごとの「応募数」「選考通過率」「面接率」「内定承諾率」まで含めて比較し、費用対効果の低い媒体から見直しを検討することが有効です。
半年〜1年という期間を目安にするのは、採用活動には募集職種や季節による応募数の変動があり、短すぎる期間では一時的な数値のブレを実力と誤認してしまうリスクがあるためです。応募数だけで判断すると、実際には採用につながりにくい媒体を残してしまう可能性があるため、決定に至るまでの各指標を通しで確認することが欠かせません。
成果報酬型は掲載課金型に比べて初期費用を抑えられる一方、決定時の費用が割高になる場合もあるため、採用ポジションの難易度や想定される決定数を踏まえて選択することが望まれます。職種や採用ターゲットによって成果が出やすい媒体は異なるため、実績データにもとづいて定期的に見直すサイクルを設けることが、無駄な掲載費用を抑えるうえで効果的です。
見直しは媒体の入れ替えだけにとどまりません。同じ媒体でも、求人原稿の見出しや訴求ポイントを変えたA/Bテストを行うことで、応募単価そのものを下げられる場合があります。たとえば、給与や勤務条件を前面に出した原稿と、仕事内容や成長機会を前面に出した原稿を同時期に掲載し、応募数・応募者の質・選考通過率の3点を比較すると、どちらの訴求がターゲット層に響くかが見えてきます。掲載期間の前半と後半で見出しだけを差し替える簡易的なテストでも、次回の原稿改善に活かせる材料が得られます。
ダイレクトリクルーティング(スカウト)のインハウス化
エージェントへの紹介手数料を抑える手法として、自社の担当者が候補者へ直接アプローチするダイレクトリクルーティングを内製化する取り組みが広がっています。スカウト文面の設計やアプローチ対象の選定にはノウハウが必要になりますが、運用が定着すれば、エージェント経由の採用比率を下げられる可能性があります。
内製化を進める際の壁としてよく挙げられるのが、スカウト送信や候補者対応にかかる工数、そしてスカウトの返信率をどう高めるかという運用面の課題です。文面をポジションごとに使い分けたり、候補者の経歴に合わせて個別性を出したりすることで、返信率の向上が見込まれます。また、返信率だけをKPIにするのではなく、「面談につながった割合」「採用につながった割合」まで確認しながら改善を重ねることで、より効率的な運用が期待できます。
もっとも、限られた人員でスカウトを打ち続けることには限界があります。だからこそ、まったく接点のない候補者へ闇雲に送るのではなく、過去に一度でも自社の求人に応募したり、選考に進んだりした「自社を知っている候補者」から優先的にアプローチする発想が有効です。ゼロから候補者を探す場合と比べて接点があるため、候補者とのコミュニケーションが進めやすく、採用担当者の工数に対する成果も高まりやすくなります。この考え方は、後半で紹介する「タレントプール」の基盤となるものです。
リファラル採用(社員紹介)の制度化と定着
社員からの紹介による採用は、外的コストを大きく抑えられる手法として知られていますが、制度を設けただけでは紹介が集まらず形骸化してしまうケースも多く見られます。募集職種を一斉メールで告知するだけでは、社員は「誰に声をかければよいのか」を具体的にイメージできず、制度そのものが利用されにくい状態に陥りがちです。加えて、インセンティブ設計が社員にとって魅力的でない場合や、紹介後の選考状況が共有されず不安を感じる場合も、制度が定着しない要因になります。
リファラル採用を活性化するためには、社員が紹介しやすい環境を整えることが重要です。募集背景や求める人物像を分かりやすく共有するとともに、紹介した知人が不採用となった場合でも紹介者に心理的な負担がかからないよう配慮し、選考状況を紹介者にも適切に共有する仕組みを整えることで、社員が安心して紹介できる環境をつくれます。
また、定期的な社内周知や紹介実績に対する適切な評価を組み合わせることで、制度は社内に定着しやすくなります。導入直後は紹介数が伸びにくいケースも少なくないため、四半期単位など一定期間をかけて浸透を図る視点も欠かせません。
リファラル採用では、社員が自社に合うと感じる人材を紹介するため、企業文化との親和性が高い候補者と出会いやすい傾向があります。その結果、採用後のミスマッチや早期離職の抑制につながることも期待できます。
自社採用サイト(オウンドメディア)によるオーガニック流入確保
自社の採用サイトやコンテンツを通じて候補者を集める手法は、効果が出るまでに時間がかかるため即効性は高くありませんが、中長期的には求人媒体費に依存しない流入経路として機能する可能性があります。求人媒体は掲載を停止すると応募も止まってしまう一方、採用サイトは一度制作すれば終わりではなく、社員インタビューや事業紹介、働き方に関するコンテンツを継続的に発信することで、自社に興味を持つ候補者との接点を積み重ねていけます。
また、採用サイトは応募を集めるだけでなく、候補者の理解を深める役割も担います。仕事内容や組織文化、キャリアパスなどを具体的に伝えることで、応募前の期待値を合わせやすくなり、入社後のミスマッチを減らす効果も期待できます。検索経由での流入を狙う場合は、候補者が実際に検索するであろうキーワードを意識したコンテンツ設計が求められ、採用SNSやリファラル施策と連動させることで、単独の施策よりも広い接点を作り出せる可能性があります。
採用コストを最適化するためには、「何を削るか」だけでなく、「人が担うべき業務とシステムに任せられる業務をどう切り分けるか」という発想が欠かせません。定型業務をデジタル化・自動化することで、人事担当者は候補者との面談や採用戦略の立案など、本来注力すべき業務により多くの時間を割けるようになります。これは、採用活動全体の生産性向上にもつながる重要なメリットです。
採用コスト削減による影響と対策
採用コストの最適化でよく見られる失敗は、予算削減だけを優先し、採用の質を維持するための運用まで見直せていないことです。コストだけを抑えても、選考精度の低下やミスマッチの増加につながってしまっては本末転倒です。ここでは、採用の質を維持しながらコストを最適化するための運用上のポイントを紹介します。
採用コスト削減による影響①「現場の人員不足・業務崩壊」
採用予算を急に削減すると、必要な人員を確保できず、現場が人手不足に陥るリスクがあります。特に、事業計画に基づいて算出された採用人数を達成できない状態が続くと、既存社員の業務負荷が増加し、離職の増加を招くという別の問題につながる可能性もあります。本来削減したかったコスト以上の損失につながることも考えられるため、注意が必要です。
コストを見直す際は、削減額だけでなく、削減によって採用人数や採用スピードにどの程度の影響が出るのかを事前にシミュレーションしておくことが望まれます。特に欠員補充系のポジションでは、採用が遅れることによる事業側への影響も踏まえて優先順位を判断する必要があります。削減の対象を検討する際は、まず内的コストの効率化(工数削減)から着手し、外的コストの削減は事業への影響を見ながら段階的に進めるという順序も一つの考え方です。
採用コスト削減による影響② 採用基準の見直しが招く中長期的な組織生産性の低下
コストを抑えるために採用基準を下げてしまうと、短期的には採用決定数を確保できても、中長期的には組織の生産性に影響が及ぶ可能性があります。本来求めていた要件を満たさない人材を採用した結果、育成に時間がかかったり、既存メンバーの負担が増えたりするケースも見られます。
さらに、期待した成果が出にくい状態が続くと、再配置や追加採用の検討が必要になり、結果的に採用コストだけでなく教育コストやマネジメントコストまで膨らむことも少なくありません。カルチャーとの適合性が十分でない状態での採用は、前章で触れた早期離職のリスクにもつながります。
コスト削減と採用基準の維持は、必ずしも相反するものではありません。運用を工夫することで、コストを抑えながらも見極めの精度を維持・向上させることは十分に可能です。ここでは、そのための具体的な取り組みを紹介します。
対策:選考基準の言語化と「構造化面接」による見極め精度の向上
選考基準が面接官ごとに異なると、評価にばらつきが生じ、結果的にミスマッチのリスクが高まります。求める人物像や評価項目をあらかじめ言語化し、面接官全員が同じ基準で候補者を評価できる「構造化面接」を導入することで、見極めの精度を一定に保ちやすくなります。
具体的には、ポジションごとに評価すべきコンピテンシーを事前に定義し、それぞれの評価項目に対して質問例を用意しておく方法が一般的です。たとえば「課題解決力」「チームでの協働姿勢」「学習意欲」といった項目を設定し、それぞれについて過去の具体的な行動事例を確認する質問を用意しておくことで、面接官の主観による評価のばらつきを抑えやすくなります。構造化面接の導入には準備の手間がかかりますが、一度フレームワークを整えれば、面接官の経験に依存しない評価がしやすくなり、採用基準を下げずにコストを抑えるための土台につながります。さらに、採用データを蓄積し「どの評価項目が入社後の活躍につながっているのか」を定期的に振り返ることで、採用基準そのものの継続的な改善が見込まれます。
なぜ「フロー型採用」は限界を迎えるのか
前章までで紹介した具体策は、いずれも一定の効果が期待できるものですが、実行しても採用コストがゼロに近づいていくわけではありません。ここでは、従来型の採用活動そのものに内在する構造的な限界について解説します。
毎回ゼロから集客する「フロー型採用」の構造的なコスト限界
多くの企業では、採用活動が終了すると母集団もリセットされ、次の採用が発生した際には再び広告費をかけて新規の母集団を形成し直しています。このような「フロー型」の採用活動を続ける限り、採用が発生するたびに一定の外的コストが発生し続けることになります。
媒体の見直しやリファラルの強化といった施策は、フロー型採用の枠内での改善にとどまるため、コストを一定程度抑えることはできても、構造そのものを変えることは難しいというのが実情です。
採用のたびに「ゼロから母集団を作る」という前提そのものを見直さない限り、コストの上限は媒体単価やエージェントの手数料相場に縛られ続けることになります。求人媒体やエージェントを利用する企業が増えるほど企業間の差別化も難しくなるため、事業拡大にともなって採用人数が増えるほど、この構造的な制約はより顕著に表れてくると考えられます。
接点を持った候補者を資産化しないことによる巨大な機会損失
一方で、過去に選考へ進んだ候補者や、内定を辞退した候補者、あるいは退職した社員(アルムナイ)は、すでに自社との接点を持っている層です。募集タイミングが合わず辞退した候補者、他社を選んだものの自社への志望度も高かった候補者、当時は採用を見送ったものの経験を積んだ数年後に活躍が期待できる候補者など、継続的な関係があれば再び採用候補となる人材は少なくありません。
実際に、過去の選考辞退者へ改めてアプローチすると、好意的な反応が得られるケースも多く見られます。また、選考時に自社の事業内容や働き方について一定の理解を得ているため、まったくの新規層に比べて選考効率が高くなる傾向もあります。こうした層とのつながりを一度きりで断ち切ってしまうのは、コスト面で見れば大きな機会損失です。フロー型採用の限界を超えるためには、こうした過去の接点を「資産」として捉え直す視点が必要になります。
ストック型採用への転換—タレントプールによる持続的コスト削減
フロー型採用の構造的な限界を踏まえると、次に重要となるのは「外的コストに依存しない採用の仕組みをどう構築するか」という視点です。これは単に人事担当者の工数を削減する話ではありません。採用費をその場限りの支出として終わらせるのではなく、将来の採用力につながる「投資」として積み上げていくという、採用の考え方そのものを転換することでもあります。
その鍵となるのが、過去に接点を持った候補者を採用資産として継続的に活用する「タレントプール」という考え方です。ここでは、その仕組みと導入するメリットについて解説します。
タレントプールとは何か?過去の接点者を「資産」に変える思考法
タレントプールとは、選考辞退者や不採用となった候補者、インターン参加者、イベント参加者、アルムナイなど、過去に何らかの形で自社と接点を持った人材の情報を蓄積し、中長期的に関係を維持していく仕組みを指します。毎回新規で母集団を形成するフロー型に対して、蓄積した候補者群から必要なタイミングでアプローチできる状態を目指すのが、タレントプールの基本的な考え方です。
すでに自社に興味を持ったことがある層へのアプローチは、まったくの新規層への広告出稿に比べて、コストパフォーマンスの面で優位性が期待できると考えられています。タレントプールを構築すること自体が、エージェント費や求人媒体費を段階的に抑えていくための基盤になります。蓄積される候補者数が増えるほど、この基盤としての価値は大きくなっていく点も特徴です。新卒採用・中途採用・アルバイトなど採用区分を問わず、自社と接点を持った人材はすべて対象になり得るため、部門や採用区分を横断してデータを蓄積していく視点が求められます。
中長期的にエージェント依存度をゼロに近づける仕組み
タレントプールが十分に蓄積されている状態では、新たな欠員や採用ニーズが発生した際に、プールの中から要件に合う候補者へ直接アプローチしやすくなります。これらの候補者は自社の事業内容やカルチャーをある程度理解しているケースが多く、初めて接触する候補者よりもスムーズにコミュニケーションを進められる可能性があり、新規の広告出稿やエージェントへの依頼に頼らずに採用活動を進められる場面が増えていくと考えられます。
もちろん、タレントプールだけで採用ニーズのすべてを満たせるわけではありません。特に緊急性の高い欠員募集や、専門性の高い職種では、エージェントの知見が必要になる場面も残ります。それでも、日常的な採用ニーズの一定割合をタレントプールで満たせるようになれば、エージェント経由の採用比率を段階的に下げていくための有効な選択肢になり得ます。専門性の高いポジションはエージェントに、汎用性の高いポジションはタレントプールに、といった役割分担の設計が現実的な選択肢の一つです。
タレントプール運用を仕組み化するには—人事の工数をどう抑えるか
タレントプールの考え方に共感しても、実際の運用まで踏み出せない企業は少なくありません。最大の課題となるのは、候補者情報の管理や継続的なコミュニケーションにかかる運用負荷です。ここでは、こうした負担を抑えながらタレントプールを継続的に運用するための考え方を紹介します。
候補者管理・定期的な接点維持(ナーチャリング)を自動化する設計
タレントプールに蓄積された候補者一人ひとりに対して、人事担当者が個別にメールを送り、関係を維持し続けることは現実的ではありません。候補者数が数百名、数千名規模になると、手作業での運用は限界を迎えます。
そのため、候補者情報の一元管理や、定期的な情報発信(ナーチャリング)を自動化できる仕組みを整えることが重要になります。候補者の属性や興味関心に応じて配信内容を出し分けたり、一定期間アプローチがなかった候補者へ自動的にリマインドを送るような設計にすることで、担当者の工数を抑えながら、タレントプールを継続的に運用できる体制が期待できます。
あわせて、候補者がメールを開封したか、採用サイトを閲覧したかといった反応状況を記録しておくと、転職意欲が高まっているタイミングを把握しやすくなり、次のアプローチのタイミングや内容を判断する材料として活用しやすくなります。
媒体費に依存しない「自社完結型」採用基盤への移行ステップ
タレントプールの運用を仕組み化できれば、段階的にタレントプール経由の採用比率を高め、求人媒体費やエージェント費への依存度を下げやすくなります。最初からすべてを自社完結型に切り替える必要はなく、既存の媒体・エージェント経由の採用と並行しながら、タレントプールの比率を徐々に増やしていくアプローチが現実的です。
移行の第一段階としては、まず選考辞退者・不採用者の情報を一元的に蓄積することから始め、次の段階でナーチャリングの自動化、最終的にはプール経由の採用実績をKPIとして追う運用へと段階的に発展させていく流れが考えられます。
あわせて、採用チャネルごとに「どのチャネルから採用した人材が活躍・定着しているか」を定期的に振り返ることで、タレントプールへの投資判断そのものも最適化しやすくなります。タレントプールの構築・運用を自動化し、媒体依存から脱却する取り組みを支援する仕組みとして、『MyTalent Platform』のような採用管理プラットフォームを活用する選択肢もあります。
まとめ
ここまで、採用コストの内訳や高騰の背景、採用の質を維持しながらコストを最適化する具体策、そして中長期的な採用基盤の構築について解説してきました。
採用コストの課題は、単一の施策だけで解決できるものではありません。求人媒体の見直しやリファラル採用の活用といった短期的な施策に加え、選考基準の言語化や構造化面接など、採用の質を維持するための運用改善を組み合わせることが重要です。
一方で、こうした取り組みを積み重ねても、フロー型の採用モデルに依存し続ける限り、外的コストへの依存を根本的に減らすことには限界があります。そのため、過去の応募者や選考辞退者、アルムナイなどの接点者を採用資産として蓄積し、中長期的に活用する「タレントプール」という考え方が重要になります。これは、採用費を一時的な支出ではなく、将来の採用力につながる投資へと転換する取り組みといえるでしょう。
ただし、タレントプールを継続的に運用するには、候補者情報の管理や情報発信、ナーチャリングなどの運用負荷が発生します。既存の採用業務と並行して運用を続けることが難しく、施策が定着しないケースも少なくありません。
こうした課題に対しては、タレントプールの構築・運用を仕組み化できるプラットフォームを活用することも有効な選択肢です。次章では、タレントプール運用を効率化し、中長期的な採用基盤の構築を支援するサービスをご紹介します。
AIネイティブ・統合型タレントアクイジションプラットフォーム
「MyTalent Platform」
TalentXでは、自社の採用をDX化し、データを可視化・分析して未来のタレント獲得につなげられるサービスを提供しています。採用マーケティング、採用ブランディング、リファラル採用、採用管理システムなど、トータルでご支援することが可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
MyTalent Platformへのお問い合わせはこちら
採用CRMサービス「MyTalent CRM」
「候補者リストを資産に変える」採用CRMサービス。過去の応募者や潜在層をタレントプール化し、AIが自動で最適な候補者をレコメンド。エージェントに依存せず、自社の資産で採用を完結し戦わない採用を実現します。

資料ダウンロード:https://i-myrefer.jp/corp/download/221/input
監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
この記事は株式会社TalentXが運営するTalentX Lab.の編集部が監修しています。TalentX Lab.は株式会社TalentXが運営するタレントアクイジションを科学するメディアです。自社の採用戦略を設計し、転職潜在層から応募獲得、魅力付け、入社後活躍につなげるためのタレントアクイジション事例やノウハウを発信しています。記事内容にご質問などがございましたら、こちらよりご連絡ください。





