リファラル採用を導入検討するにあたり、まずは報酬制度や奨励・禁止ルール、巻き込み対象範囲、フロー設計などの各種制度設計から着手する企業様が多いのではないでしょうか。本記事では、リファラル採用を成功に導くための始め方や重要なポイントをまとめました。
目次
- リファラル採用(友人・知人紹介採用)とは?
- 持続可能なリファラル採用を実現させるために
- 始める~お勧めしたくなるリファラル採用制度設計~
- 推進する~社内プロモーション戦略設計と実行~
- 改善する~改善し、前進させる振り返りとPDCA~
- リファラル採用の報酬(インセンティブ)制度設計時のポイント
- 持続可能なリファラル採用のための制度設計とは(まとめ)
- 戦わない採用を実現するために
リファラル採用(友人・知人紹介採用)とは?
リファラル採用とは、社員のつながりを通して、友人や知人の中から自社の求人案件にマッチする優秀な人材を紹介してもらう採用手法のことです。人材紹介エージェントや求人広告などの外部データを使わない、『信頼できる社員からの紹介による採用手法」であるがゆえに、転職潜在層へのアプローチが可能になり、採用競合とのバッティング・競争を避け、優秀な人材を、低予算でスピーディに採用することが、継続的に可能になる長期的な採用手法として注目を集めています。
欧米ではリファラル採用は社員採用で重要な役割を果たしています。日本でも2023年度のTalentX調査では、大手企業の約54%がリファラル採用を実施しているというデータが有り、自社の主要採用チャネルの1つとして導入・検討されている手法です。また、所属している自社の魅力を友人や知人に語ることが、社員自身のエンゲージメントを高めることに相関するという期待も込めて、リファラル採用制度の運用を開始する企業が増加しています。
持続可能なリファラル採用を実現させるために
リファラル採用制度が安定的に運用され、友人紹介経由で採用が長期に渡って持続していくには、報酬(インセンティブ)制度を決定する事だけでは実現不可能といえるでしょう。
リファラル採用を導入する半数近くの企業がインセンティブを設計したうえで制度の運用を開始しますが、その90%以上の企業において、制度が形骸化してしまい、リファラル採用は浸透・定着せず、期待していた成果を得られていないという状況に陥っています。
リファラル採用制度を開始する際には、社内での禁止事項や通常業務との棲み分けから、社員への展開方法や継続的な紹介を生み出す周知施策の策定、社員フォロー体制の構築、KPIとなる活動データの取得と効果検証など、自社のリファラル採用プロジェクトを成功させるためのPDCAの過程すべてにおいて制度設計が必要です。
持続可能なリファラル採用を実現させるために、TalentXでは自社に合った「お勧めしたくなるゴール&ルール&フロー設計」「従業員のファンをつくる社内プロモーション設計」「成果の背景にあるKPI分析」を実行していくことがポイントだと定義しています。
始める~お勧めしたくなるリファラル採用制度設計~
リファラル採用制度を始める際には、社員が友人や知人に「自社をお勧めしたくなる」制度設計を行うことが重要です。自社の企業文化や組織風土、社員の特性を考慮しリファラル採用を成功に導くための自社にマッチした『ゴール』『ルール』『フロー』の設計が必要になります。
リファラル採用の取り組みを行っていく上で重要なことは、目指すべき中長期的なゴールや目標について自社の社員が認識しており、その共有されたゴールや目標に向かって取り組みを行っている状態といえます。
社員が自発的に自社をおすすめしたくなる組織づくりは、一朝一夕で実現することは難しいでしょう。下記では『ゴール設計』『ルール設計』『フロー設計』のSTEPに分けてリファラル採用制度の設計方法を解説します。
ゴール設計
リファラル採用制度を運用していく上でのゴールや目標は、中長期的で具体性があり計測可能なものとする。
やること
- 中長期の定量ゴール設計
- 中長期の定性的な状態目標設計
- 社内を説得するストーリー設計
NGな行い
- 2か月で〇名採用するなどの短期目標
- 目的、目標に具体性がない
- 目標を達成するKPIが明確でない
ルール設計
リファラル採用制度を運用していく上で順守すべきルールは、対象者や順守する事項が具体的、かつ明確であり、自社と自社の社員特性にマッチしたものとする。
やること
- 適用社員の範囲
- 禁止事項や運用ルール設計
- 企業風土に合わせたインセンティブ制度設計
NGな行い
- ルールが不明確である
- 社員の参加ハードルが高い設計
- 短絡的なインセンティブ設計
フロー設計
リファラル採用制度が定着し、友人や知人の紹介採用が長期的に持続されていくためには、社員が負担を感じないような紹介から採用までのフロー設計が重要。
やること
- 心理的負荷を下げる紹介フロー設計
- コミュニケーションプラン設計
- リクルーティング情報の流通設計
NGな行い
- 社員の業務負荷のみにフォーカスし、心理的負荷を踏まえて設計できていない
- 管理と負荷削減のバランスを考えない
- 制度展開のみで求人情報を展開しない
推進する~社内プロモーション戦略設計と実行~
リファラル採用制度の運用が成功するには、従業員の傾向と特性を踏まえ自社のファンになってくれるような社内向けのプロモーション戦略を設計し、実行していくことが必要です。
社員に向けてリファラル制度について「認知」してもらい、「共感」を得て、「行動」を喚起し、「ファン化」を促進することが社内プロモーションを成功させる近道です。
社員が自然と紹介してくれるリファラル採用制度を運用するためには、単なる「イントラネット」や「社内会議」などでの情報配信ではなく、「どういう情報を」「誰を対象に」「どうやって」伝えるかといったプロモーション戦略が重要です。
社員が友人や知人に自社を紹介しやすくなるようなコンテンツの提供やスマホを使って紹介できるようなツールの導入も大変有効です。さらに紹介フロー(社員の負担をどう減らし、紹介しやすくするか)や選考フロー(通常の選考から変更するのか、紹介社員を選考に入れない仕組みをどう構築するか)なども同時に考える必要があります。
下記では『認知』『共感』『行動』『ファン化』のSTEPに分けてリファラル採用のプロモーション設計に関して解説します。
認知
自社の社員に対して、リファラル採用の取り組みを行っている事実が認知されており、採用部門から定期的な社内周知やさまざまな角度の情報提供ができている状態を目指さなければなりません。
やること
- 週一回の継続的認知施策
- 制度情報、求人情報、部門インタビュー情報、入社決定情報など複数の角度からの情報配信
NGな行い
- 1か月に一回程度の周知活動
- 情報設計がされておらず、新鮮味、面白味がない
共感
社員が自社のリファラル採用制度に興味をもち、友人や知人にも伝えたくなるよう「どういう情報を」「誰を対象に」「どうやって」といった視点をもち情報発信を行います。
やること
- Whyから始まるストーリー設計
- 透明性の高い情報流通
- ∟空きポストと採用背景情報
- ∟キャリアパスに関する情報
- 上位役職者への意識づけ
NGな行い
- Whatから始まるコミュニケーション:「紹介制度の報酬は●万円です」等
- 不透明な情報
- 部門の協力を得られにくいコミュニケーション
行動
友人や知人に自社のことを紹介し、リファラル採用に結び付けやすくするためのコンテンツやツールの導入が重要です。
やること
- 声掛けのハードルを下げる情報共有、コンテンツ広報
- 社内イントラ、ツールへの情報集約
NGな行い
- 採用ターゲットが不透明であり、転職顕在層のみへの集客
- イントラ、HP、メールなど情報が散乱しており整備されていない
ファン化
持続性のあるリファラル採用制度を作り上げるには、社員にとって紹介フローや選考フローなどの体験価値が高い状態を目指します。
やること
- また紹介したくなる体験価値設計
- 気まずくならないアフターフォロー設計
- 丁寧なフィードバックの仕組化
NGな行い
- フィードバックがなく、再度紹介したいと思えない
- NGになったときに気まずくなるフォロー
改善する~改善し、前進させる振り返りとPDCA~
リファラル採用制度の設計を行い、社内プロモーション設計が完了してリファラル採用の成果が出てくると、次は採用成果を出し続けるための再現性を手に入れることが必要になります。リファラル採用は、制度設計と展開だけでは終わりません。持続可能な採用チャネルとして定着させるためには、成果の背景にあるKPIを分析し、リファラ採用制度の改善をしていくことが求められます。
例えば、リファラル採用制度において採用決定数を最終目標に、応募数のみをKPIと設定したものの、その後の応募数が増えない事例を考えてみましょう。
リファラル採用担当者は目先の応募数を増加させるために手を打とうとしますが、応募以前にそもそも友人に自社を紹介されているのか、応募時のハードルが高くないかなど、応募数を構成する要因やデータを計測する仕組みが無く、応募・決定数を増加させるための本質的な改善策が打てず、リファラル採用制度は形骸化してしまい失敗します。
自社独自のリファラル採用制度を設計し構築した企業の多くで、このような失敗事例が発生していると考えられています。TalentXでは、まずKGI・KPIの再設計を行い計測する組みを作り、現状を正しく把握するところから改善を始めることをセオリーとしています。
リファラル採用制度において計測すべきKPI
採用部門からのリファラル採用制度の推進施策を通じて実現している、協力的な社員の数・割合、求人の職種やポストの理解、友人や知人への声掛けの実態、声掛けからの応募数・応募率など実際に社員が紹介する際の流れをイメージしながら、それぞれの段階におけるKPIを設定し、そのKPIを計測する仕組みを運用開始前に作っておく必要があります。
・協力社員数
社員はどれくらい協力・参加してくれたか?
・求人閲覧社員数
社員はどれくらい自社の空きポストを認知しているか
・一人当たり声掛け数
紹介している社員は一人当たりどれくらい声掛けしているか?
・応募獲得率
声掛けからの応募獲得率は何パーセントか?
自社の経年変化や競合他社とのデータを比較しながら、リファラル採用制度の健康状態を把握し、改善策を策定・実行できるように設計することが大切です。
これらの数値は自社の業種や募集を行う職種、雇用形態などによって大きく変動します。採用部門が設計する際は、同業種や同職種などの実績を参考に決めていくことが望ましいと言えます。
自社のリファラル採用の健康状態を把握するために、協力社員数から応募獲得率を向上させるために各社が実行する一般的な施策をまとめ課題チェックシートとして下記資料にまとめています。
- 協力社員数を増やすための7つの施策
- 紹介社員数を増やすための6つの施策
- 一人当たり紹介数を増やすための6つの施策
- 合格率を増やすための5つの施策
なかなか同業種の情報が手に入りにくい企業様などは下記から確認をいただければ幸いです。
自社課題の把握チェックシートと対応施策集
リファラル採用の報酬(インセンティブ)制度設計時のポイント
2022年における調査(MyRefer利用企業800社のリファラル採用応募・決定・活動調査レポート)によると、MyReferを利用する企業が掲載する全求人のうち、42%の求人において企業が紹介時インセンティブを設定しています。
※「MyRefer利用企業800社のリファラル採用応募・決定・活動調査レポート」はこちら
リファラル採用において重要視されがちな報酬(インセンティブ)設計ですが、実際には金銭を目当てに友人紹介する社員はリファラル採用に成功した社員全体のうち11.3%という調査が有ります。友人や知人を紹介した際の動機を調査すると、その上位80%は「ホスピタリティ(友人の力になりたい、会社に貢献したい)」や「当事者意識(ともに働く人材の選択に関わりたい)」が占めています。 あくまでも報酬(インセンティブ)は目的ではなく、リファラル採用制度の周知や、紹介した社員を賞賛するためのコミュニケーションのきっかけ(手段)として設計する必要があります。
報酬(インセンティブ)制度は必ずしも金銭(給与・賞与)で支給する必要はありません。商品券やテーマパークのチケットなどや、社員が利用可能な自社サービスや製品を持つ企業の場合には、自社サービスの割引券や優待チケット等を提供しているケースも有ります。また、近年は体験型のギフトなど、「話題性」「拡散性」を意識した報酬制度を設計する企業も出てきており、「非金銭型の報酬に切り替えてリファラル採用成果が何倍にも伸長した」という事例も発生しています。
大切なのは、自社でのリファラル採用制度の位置づけや導入意義を踏まえ、制度全般にわたって自然なコミュニケーションになる様に設計することです。
また報酬(インセンティブ)制度の設計の際には、法令遵守の観点に留意して検討する必要があります。リファラル採用活動と、社員に対する報酬制度を制定するためには、職業安定法第30条、36条、40条や、労働基準法第11条等を考慮しながら自社の制度を検討・制定します。
上記の法的な観点に配慮し制度設計する方法や、業種・職種・雇用形態ごとのインセンティブ制度の設計例など、リファラル採用の報酬制度設計についての必要となる情報を網羅しまとめた資料がこちらです。ぜひご活用ください。
リファラル採用のインセンティブを設計するうえでの3つのポイント
持続可能なリファラル採用のための制度設計とは(まとめ)
持続可能な自社のリファラル採用制度を設計するために、以上のポイントをまとめますと
リファラル採用制度の設計は報酬(インセンティブ)だけを決めて運用を始めても形骸化してしまうため、運用や展開、従業員コミュニケーション、効果改善を前提とした一気通貫の制度設計が必要です。
KGI・KPIは友人・知人紹介時のフローをイメージした上で設計するべきで、施策の健康状態を把握、解決策を策定・実行できるように状況を計測し、分析できるようにしておくことです。
報酬(インセンティブ)制度は金額をトリガーにするのではなく、周知や賞賛のきっかけとなるように設計すべき。その上で、法令を遵守した制度設計が必要です。
リファラル採用は、採用競合とのバッティングを避け、まだ転職市場に出てきていない潜在層の中で自社のターゲットを低予算でスピーディに採用獲得することが可能な手法です。採用効率が極めて高い一方で、仕組化するまでに工数がかかるため、戦略的なアプローチが必要となる採用手法です。
戦わない採用を実現するために
現在の人材採用市場においては労働人口の減少に反し、企業の採用ニーズは増加の一途をたどっており、人材獲得競争が過熱し続けています。約8割の企業で中途採用は未充足の状態といわれ、今後は更に採用の難易度が上昇して行くと想定されます。この人材獲得競争時代に必要となるのは、労働人口のうち大多数を占める「積極的に転職活動は行っていないが、転職の意向がゼロではない」人々、“転職潜在層”へのリーチです。
“TalentXでは、この転職潜在層にアプローチし採用活動を行うことにより、人材獲得競合に負けないリファラル採用の持続可能な仕組みを作り上げ、「戦わない採用」を実現するサービスを提供しています。
自社のリファラル採用制度の設計を進める際、お困りの事がございましたら、お気軽にTalentXまでお問い合わせください。
監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
この記事は株式会社TalentXが運営するTalentX Lab.の編集部が監修しています。TalentX Lab.は株式会社TalentXが運営するタレントアクイジションを科学するメディアです。自社の採用戦略を設計し、転職潜在層から応募獲得、魅力付け、入社後活躍につなげるためのタレントアクイジション事例やノウハウを発信しています。記事内容にご質問などがございましたら、こちらよりご連絡ください。