急速に変化する社会や技術の進展に対応するためには、企業として柔軟に体制を整え、従業員一人ひとりのスキルを継続的にアップデートしていくことが求められるでしょう。そうした中で注目を集めているのが「リスキリング」です。リスキリングとは、既存の職種にとらわれず、新たなスキルを身につけることで、変化に対応できる人材を育成する取り組みを指します。
本記事では、リスキリングの基本的な考え方から、他の学習概念との違い、導入の効果や実践ステップ、注意点、さらには企業の導入事例まで幅広く解説していきます。自社の成長に向けてリスキリングを検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
- リスキリングとは?
- リスキリングと似た社会人の学びに関する言葉
- リスキリングが注目されている理由
- リスキリングを実施する効果
- リスキリングを導入・成功のための5ステップ
- リスキリングを実施する上での注意点
- まとめ
リスキリングとは?
リスキリング(Re-skilling)とは、技術革新やビジネスモデルの変化に適応するために、新たな知識やスキルなど、業務に必要な内容を学び直すことを指します。
また、リスキリングに関して経済産業省は「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。(経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」より引用)
デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、多くの企業がリスキリングを積極的に取り入れています。2020年のダボス会議で「リスキリング革命」が提唱され、世界的にも関心が高まりました。日本では、岸田政権がリスキリング支援に5年間で1兆円を投じると発表し、企業の取り組みが加速しています。
リスキリングと似た社会人の学びに関する言葉
リスキリング以外にも社会人の学びに関する言葉はいくつかあります。ここでは、リスキリングとリカレント教育、生涯学習の違いについて解説していきます。
・リスキリング
リスキリングは企業が主導し、従業員に新たなスキルを習得させる取り組みです。特に、DX推進や業務の自動化によって生まれる新たな職種に対応するために実施されます。
・リカレント教育
リカレント教育は、個人が主体となり、キャリアアップや転職のために学び直すことを指します。大学や専門学校での学習が中心であり、社会人向けの教育プログラムなどもこれに含まれます。
・生涯学習
生涯学習は、職業スキルに限定されず、自己成長や社会貢献を目的とした学びを指します。語学や文化、趣味など幅広い分野の学習がこれに含まれます。
リスキリングが注目されている理由
近年、リスキリングは企業の成長戦略の中でますます重要視されています。その背景には、急速な技術革新、労働市場の変化、そしてデジタル化の加速があげられます。特に、AIや自動化技術の進展により、従来の業務の一部が不要になるとされる一方、新たなスキルを持つ人材の需要が増加しています。このような環境変化に適応するため、企業は従業員のスキルを再構築し、新しい業務領域に対応できる体制を整える必要に迫られています。さらに、政府の支援や働き方の多様化もリスキリングの重要性を高める要因となっています。
ここではリスキリングが注目を集める背景について、4つの要因を解説していきます。
技術革新とDXの進展
AIやIoT、ビッグデータなどの技術革新により、ビジネス環境が急速に変化しています。これに伴い、従来の業務や職種が変容し、新たなスキルセットが求められるようになっています。企業は競争力を維持・向上させるために、従業員のスキルアップが不可欠となっていることが要因の一つとして考えられるでしょう。
労働市場の変化
少子高齢化や労働力不足が深刻化する中、既存の人材を有効活用する必要性が高まっています。人的資本経営に対して世界中で注目が高まっている中、人材の採用だけでなく、現在の従業員のスキルを再構築し、多様な業務に対応できる体制を整えることが求められています。
政府の政策支援
日本政府は「新しい資本主義」の実現に向け、リスキリングを重要な政策の一環と位置づけています。具体的には、人材開発支援助成金やDXリスキリング助成金など、企業のリスキリング推進を支援する制度が整備されていることも企業が注目する要因の一つであるといえるでしょう。
従業員のキャリア意識の高まり
働き方改革やライフスタイルの多様化により、従業員自身もキャリア形成やスキルアップに対する意識が高まっています。リスキリングは、個人のキャリアパスを広げる手段としても注目されています。
リスキリングを実施する効果
リスキリングを導入し実施することで、企業や従業員にさまざまなメリットをもたらします。企業にとっては、必要なスキルを社内で育成することで人材不足を解消し、業務の効率化や生産性向上を図ることができるでしょう。一方、従業員にとっても、新たなスキルを習得することでキャリアの選択肢が広がり、自己成長や働きがいの向上につながります。ここでは、リスキリングがもたらす具体的な効果について詳しく解説します。
業務効率化と生産性向上
新たなスキルや知識を習得することは業務の効率化につながります。例えば、最新のソフトウェアやデータ分析技術を活用することで、日々の業務を自動化し、作業時間の短縮につなげることができるようになるといった具合です。これにより、従業員の負担を軽減しながら、生産性を向上させることが期待できるでしょう。
イノベーションの促進
多様なスキルを持つ人材が増えることで、企業内での新しいアイデアやビジネスモデルの創出が活発になると考えられます。異なる分野の知識を持つ従業員が協力することで、業務の効率化だけでなく、新しい製品やサービスの開発につながる可能性が高まると言えるでしょう。
従業員のモチベーション向上
学習機会の提供やキャリアパスの明確化により、従業員の自己成長意欲が高まることが期待できます。特に、自らのキャリアアップにつながる学習機会が用意されていることは、働きがいが増し、職場への満足度向上にも寄与すると考えられます。
人材定着率の向上
企業がスキルアップの機会を提供することで、従業員の会社に対する忠誠心が高まり、離職率の低下にもつながっていきます。特に、学び続ける環境が整っている企業は、優秀な人材が定着しやすくなり、長期的な組織の成長にも貢献するといえるでしょう。
リスキリングを導入・成功のための5ステップ
リスキリングを効果的に導入するためには、計画的なステップを踏むことが重要です。単に研修を実施するだけではなく、企業の目標と従業員のキャリア成長を両立させる仕組みを構築することが成功の鍵となるでしょう。また、業務とのバランスを考慮したり、スキルアップの機会を継続的に提供する必要もあります。ここでは、リスキリングを実施するための具体的な5つのステップを紹介します。
ステップ① 目的・対象の明確化
まず、リスキリングの目的を明確にし、どの職種や業務に適用するのかを策定しましょう。また、企業の成長戦略と連携させることで、より効果的なスキル開発が可能になると考えられます。
ステップ② 現状のスキル把握
従業員の現在のスキルセットを評価し、どのスキルが不足しているのかを明らかにすることも準備として重要です。適切な評価手法を用いてギャップを特定し、リスキリングの方向性を決定していきましょう。
ステップ③ 教育プログラムの設計
次に、具体的な研修やトレーニングプログラムを策定します。オンライン学習、OJT(On-the-Job Training)、ワークショップなど、さまざまな学習手法を組み合わせることで、より効果的にスキルを習得できるようになるでしょう。
ステップ④ 学習環境の整備
また、学習を継続できる環境を整えることも大切です。業務時間内に学習時間を確保する取り組みの発信や、自己学習を支援するプラットフォームを導入するなど、従業員が負担なく学べる仕組みを整えることは非常に重要なポイントと言えるでしょう。
ステップ⑤ 成果の測定と改善
リスキリングの導入後は成果を評価し、必要に応じてプログラムを継続的に改善することも欠かせません。リスキリングの成果を測定し、学習後にどの程度スキルが向上したのか、業務にどのような影響を与えたのかを評価し、その結果を基にプログラムを調整する必要があります。定期的なフィードバックや従業員の意見を取り入れながら、効果的なリスキリングの仕組みを構築していくことも重要だといえるでしょう。
リスキリングを実施する上での注意点
リスキリングを成功させるためには、計画的な導入だけでなく、いくつかの注意点を押さえておくことも重要です。適切な戦略なしにリスキリングを進めると、従業員の学習効果が薄れたり、業務に活かされなかったりする可能性があるでしょう。
ここでは、リスキリングを実施する際に留意すべきポイントを紹介します。
目的とゴールを明確にする
リスキリングは、単に新しいスキルを習得することだけが目的ではなく、企業の成長戦略や業務改革と連携させることも重要です。そのため、どの職種・業務にどのスキルが必要なのかを明確にし、学習のゴールを設定することが不可欠です。漠然とした学習では、従業員のモチベーションが続かず、成果も出にくくなると考えられるため注意が必要です。
従業員の主体的な学びを促す
リスキリングの効果を最大化するためには、従業員が主体的に学ぶ環境を作ることが重要だと考えられます。企業が一方的に研修を提供するだけではなく、従業員自身がキャリア目標を持ち、それに向けて自発的にスキルを習得できるような制度を整えることが求められるでしょう。
現場での活用機会を確保する
新たに習得したスキルが実際の業務に活かせなければ、リスキリングの効果は限定的になってしまいます。学んだスキルを実践する場を設け、現場での活用機会を確保することも大切です。例えば、学習後にプロジェクトへの参加機会を提供したり、スキルを実践できる業務をアサインするなどの工夫をするといいでしょう。
学習の負担を軽減する
リスキリングを進める際は、従業員の業務負担とのバランスを考えることも重要です。業務が忙しい中で学習時間を確保できなければ、スキル習得が十分に行えず、学習が負担になってしまうことも考えられます。業務時間内に学習時間を確保する、柔軟な働き方を取り入れる、オンライン学習を活用するなどの工夫をすることで、従業員の負担を軽減することも重要でしょう。
まとめ
リスキリングは、企業にとって持続的な成長を支える重要な戦略の一つです。適切な計画と実行により、従業員のスキルアップだけでなく、組織全体の競争力向上にも寄与することが期待できるでしょう。今後の変化に柔軟に対応するためにも、リスキリング施策を是非検討してみてください。
監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
この記事は株式会社TalentXが運営するTalentX Lab.の編集部が監修しています。TalentX Lab.は株式会社TalentXが運営するタレント・アクイジションを科学するメディアです。自社の採用戦略を設計し、転職潜在層から応募獲得、魅力付け、入社後活躍につなげるためのタレント・アクイジション事例やノウハウを発信しています。記事内容にご質問などがございましたら、こちらよりご連絡ください。





