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2026.06.30更新

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戦略人事の進め方|採用機能を経営機能に変える人事部長のロードマップ

採用計画を立て、求人媒体を選定し、面接を実施する。長らくそれが「人事の仕事」とされてきました。しかし現在では、その役割そのものが大きく変わりつつあります。事業フェーズの変化に応じて必要な人材は変わり、採用の遅れが事業成長のスピードを左右するケースも少なくありません。そのため、多くの企業では採用を単なる欠員補充ではなく、経営戦略を実現するための重要な機能として捉える「戦略人事」の考え方が注目されています。

一方で、「戦略人事を進めたいものの、採用体制をどのように見直せばよいかわからない」「採用と経営戦略を連動させたいが、何から着手すべきか悩んでいる」といった課題を抱える人事部長や採用責任者も少なくありません。日々の採用業務に追われるなかで、採用の仕組みそのものを見直す時間を確保することは容易ではないでしょう。

本記事では、戦略人事の基本的な考え方から、採用体制を経営戦略と連動させるための進め方、実務で活用できる採用改革のロードマップまでを体系的に解説します。採用を「業務」ではなく「経営機能」へと進化させたい企業に向けて、明日から実践できる具体的なポイントをわかりやすくご紹介します。

目次

  • なぜ今、採用は「経営機能」でなければならないのか
  • 戦略人事とは何か—「管理人事」との本質的な違い
  • なぜ「変革しよう」と思っても採用体制は変わらないのか
  • 採用体制を見直す「3フェーズ・ロードマップ」
  • 採用と経営戦略を連動させる「4つの実装ポイント」
  • 人事部長が押さえるべきKPI設計
  • まとめ

なぜ今、採用は「経営機能」でなければならないのか

採用は以前から重要な経営課題とされてきました。しかし、その「重要さ」の意味は、この数年で大きく変化しています。かつては、必要なタイミングで人材を補充できれば十分でした。しかし現在は、労働人口の減少や採用競争の激化により、応募を待つだけでは必要な人材を確保しにくい状況になっています。その結果、採用の成否が事業成長のスピードや競争力を左右するケースも珍しくありません。

こうした環境の変化を受け、採用は「欠員を埋める業務」ではなく、「経営戦略を実現するための機能」として捉えられるようになっています。それにもかかわらず、採用を人事部門だけの業務として運営している企業は少なくありません。

だからこそ今、採用体制を見直し、人事を経営戦略と連動させる「戦略人事」の考え方が、これまで以上に重要になっています。

採用が「経営」と切り離されている組織の共通パターン

採用が経営から切り離された状態に陥っている企業にはいくつかの共通した事象がみられます。

代表的なのが、採用のKPIが「内定数」や「充足率」だけで完結しているケースです。必要な採用数を満たすことが目的になると、「どのような人材を、何のために採用するのか」という視点が薄れ、採用計画も中期経営計画と十分に連動しなくなります。

また、採用に関するデータが経営層と共有されていない企業も少なくありません。採用コストやリードタイム、内定承諾率、定着率といった指標は経営判断にも関わる情報ですが、人事部内だけで管理されることが多く、経営層が採用状況を十分に把握できていないケースも見られます。

さらに、採用活動が担当者個人の経験やノウハウに依存する「属人化」も課題です。スカウトや面接評価、候補者フォローの方法が統一されていなければ、採用成果は安定せず、担当者の異動や退職によって成果が大きく左右される可能性があります。

こうした状態では、事業戦略が変わっても採用戦略は変わらず、必要な人材を適切なタイミングで確保することが難しくなります。

経営と採用が「連動していない」ことのコスト

採用の遅れが事業に与える影響は、想像以上に大きなものです。

例えば、新規事業を立ち上げる際に必要な人材を確保できなければ、事業計画そのものが後ろ倒しになる可能性があります。また、優秀な人材は複数社の選考を並行して進めることが多く、選考スピードが遅い企業は候補者に選ばれにくい傾向があります。さらに、経営層が事業戦略を転換しているにもかかわらず、人事部門では前年と同じ採用基準や手法を続けていると、事業に必要な人材と実際に採用する人材との間にギャップが生じやすくなります。

また、見落とされがちなコストとして、採用ミスマッチによる早期離職が挙げられます。短期的な充足を優先した結果、早期離職につながれば、採用コストや担当者の工数が再び発生し、採用活動全体の効率も低下しかねません。

こうした課題は、採用を経営視点で設計することで防ぐことができます。

「戦略人事」が求められる背景と人的資本経営の台頭

近年、人的資本経営という概念が急速に注目を集めています。2023年の有価証券報告書における人的資本開示の義務化以降、この数年で多くの上場企業にとって人材戦略を経営にまつわる情報として扱う必要性は一段と高まっています。

これにより、人事部門に求められる役割が大きく変わっています。従来の「採用・労務・研修の管理部門」としての位置づけから、「経営戦略を人材面から支える機能」としての位置づけへのシフトが求められるようになっています。採用はその中核機能です。どんな人材を・いつ・どのように獲得するかという設計そのものが、経営判断に組み込まれることが求められています。

戦略人事とは何か—「管理人事」との本質的な違い

「戦略人事」という言葉は広く使われるようになりましたが、「管理人事と何が違うのか」が曖昧なまま語られていることも少なくありません。概念として理解するだけでなく、「自分たちの組織で何を変えれば戦略人事になるのか」を具体的に把握することが、変革の第一歩になります。戦略人事とは人事部門の役割を拡大する考え方ではなく、経営戦略を実現するために人材戦略を設計し、その実行を担う仕組みです。

管理人事と戦略人事の違いを「3つの軸」で整理する

管理人事と戦略人事の違いは、次の3つの軸で整理するとわかりやすくなります。

時間軸の違い:管理人事は「欠員を埋めること」を目的とした短期視点で動きます。戦略人事は「3年後・5年後に必要な組織をどう作るか」という中長期視点で採用を設計します。採用活動を始める前から、転職潜在層と継続的な接点を持ち続けています。

意思決定の違い:管理人事では、採用に関わる意思決定は基本的に人事部内で完結しています。採用要件も、予算も、媒体の選定も、主に人事担当者と現場マネージャーの間で決まります。戦略人事では、採用計画が経営会議のアジェンダに乗り、経営幹部が採用の方向性を決定する仕組みになっています。

データ活用の違い:管理人事では、採用データは「採用後の記録」として管理されます。戦略人事では、過去の応募者データ・選考データ・市場データが次の採用設計に活用される「資産」になります。データが意思決定を支え、採用精度が継続的に改善されていく仕組みが整っています。

この3つの軸で自社の現状を確認すると、「どこが管理人事的で、どこを変えれば戦略人事に近づくか」が明確になります。

「採用体制の見直し」が必要になる4つのシグナル

以下の状態に1つでも当てはまる場合、採用体制の見直しを検討するタイミングにあると考えられます。

  • 現場から「採用が遅い」「求めている人材が来ない」という声が継続的に上がっている
  • 採用計画が中期経営計画と別のプロセスで作られており、連動していない
  • 人事部が採用の「外注管理」(エージェント折衝・媒体手配)しかしていない
  • 過去の応募者データが次の採用に活用されず、毎回ゼロから母集団を形成している

こうした状況が続く場合は、組織の成長や事業環境の変化に対して、現在の採用体制が十分に対応できていない可能性があります。

戦略人事が機能している組織の特徴

戦略人事が機能している組織には、いくつかの共通した特徴が見られます。

1つ目は、経営会議にて、採用に関するデータの定期報告が行われていることです。採用パイプラインの状況、職種別の充足見通し、採用コストの推移などが経営の共通言語になっており、経営幹部が人材獲得の現状を常に把握しています。

2つ目の特徴は、採用要件を事業戦略から逆算して設計していることです。「この事業目標を達成するために、どのような人材が必要か」という視点で採用要件を定めることで、採用活動の目的が明確になります。また、採用担当者も事業の方向性を踏まえて候補者と対話できるようになり、自社への理解や意向形成を促しやすくなります。

そして3つ目は、過去の候補者データの体系的な資産化です。最終選考まで進んだものの入社に至らなかった候補者、一度辞退した候補者、以前は転職意欲がなかった潜在層。こうした情報が蓄積され、タイミングが合えば再アプローチできる仕組みが整っています。

なぜ「変革しよう」と思っても採用体制は変わらないのか

多くの人事部長が「採用を変えなければ」と感じながら、数年後も同じ体制のままでいます。思想や認識は変わっても、組織の構造は変わらない。こうした状況には、いくつかの構造的な理由があります。変革を進めるためには、まずこの理由を理解することが重要です。

停滞パターン①—目の前の採用に追われ、変革が進まない

採用体制の変革が進まない大きな理由の一つは、目の前の採用業務に追われ、改善に取り組む時間を確保できないことです。

欠員が発生すると、求人掲載やエージェントへの連絡、面接日程の調整など、優先すべき業務が次々と発生します。その結果、採用戦略の設計や採用体制の見直しは後回しになり、「今の採用が落ち着いたら改善しよう」と考えていても、新たな採用対応が始まり、結局着手できない状況に陥りがちです。

停滞パターン②—採用の「成果」が可視化されていない

変革が進まないもう一つの構造的な理由は、採用成果が「感覚」で評価されていることです。

採用コストや採用リードタイム、内定承諾率、入社後の定着率といった指標が経営の共通言語になっていない組織では、採用の成果を客観的に評価することが難しくなります。その結果、「採用が良くなった」「悪くなった」といった判断が担当者の印象に左右されやすく、変革の成果を測定したり、投資の必要性を説明したりすることも容易ではありません。

また、採用データが十分に活用されていないと、改善の優先順位も明確になりません。「エージェント費用が高い気がする」「面接通過率が低い気がする」といった感覚的な議論に終始し、具体的な改善施策へつながらないまま時間が過ぎてしまうことも少なくありません。

停滞パターン③—何から始めるべきか決まらない

「戦略人事を進めよう」という方針は決まっても、「何から着手すべきか」が定まらないまま議論が終わってしまうケースは少なくありません。

採用体制の変革では、組織体制や採用プロセス、KPI設計、ツール導入、経営との連携など、見直すべき領域が多岐にわたります。そのため、すべてを一度に変えようとすると、優先順位を決められず、結果として変革が進まなくなってしまいます。

こうした状況を打開するには、影響が大きく、比較的取り組みやすい施策から着手することが重要です。例えば、採用データを可視化し、経営層へ定期的に共有する仕組みを整えるだけでも、改善の方向性を議論しやすくなります。小さな成功体験を積み重ねることが、継続的な変革につながります。

【視点の転換】採用コストから採用投資へ—発想のパラダイムシフト

変革を本質的に進めるうえで、もう一つ欠かせない認識の転換があります。それは、「採用コストをいかに下げるか」という発想から脱却することです。

多くの組織では、採用活動の評価軸が「1人あたりの採用単価をどれだけ抑えられたか」に集中しがちです。しかし、戦略人事の視点に立てば、問うべきは「その採用が中長期的にどれほどの事業貢献をもたらすか」という投資対効果です。

「採用コスト」ではなく「採用投資」という考え方を経営層と共有できれば、人事部長は「経営のパートナー」として人材戦略を本格的に議論できるようになります。戦略人事のロードマップが目指すべきゴールも、この共通認識を組織全体で築くことにあるといえるでしょう。

採用体制を見直す「3フェーズ・ロードマップ」

採用体制の変革を一気に進めようとすると、多くの場合途中で止まってしまいます。変革には段階があり、各フェーズで達成すべきことを明確にしたうえで進める必要があります。一度にすべてを変えようとするのではなく、段階的に改善を積み重ねることが、継続的な変革を実現するうえで重要です。

フェーズ1「診断と設計」—現状の採用体制を経営視点で棚卸しする

最初のフェーズでは、現状の採用体制を経営視点で正しく把握することが重要です。「変えていきたい」という認識があっても、現状を把握しないままでは、どこから改善すべきか判断できません。「採用がうまくいっていない」という感覚だけで施策を検討すると、本質的な課題を見誤る可能性があります。

まず取り組みたいのは、採用KPIの棚卸しです。現在どの指標で採用成果を評価しているのかを整理し、「内定数」や「充足率」だけでなく、採用コストやリードタイム、内定承諾率、入社後定着率なども含めたKPI設計を検討しましょう。

次に、採用計画が事業計画とどのように連動しているかを確認します。採用計画の根拠が前年比や欠員補充だけになっている場合は、中期経営計画や事業計画と連動した採用計画へ見直すことが重要です。

このフェーズで目指したいのは、「採用体制の現状診断レポート」を作成することです。採用チャネルの構成比や採用コスト、採用リードタイム、選考通過率、入社後の定着状況などを整理することで、採用プロセス全体のボトルネックを可視化できます。現状を客観的に把握できれば、優先的に改善すべき課題も明確になり、次の施策へスムーズにつなげられます。

フェーズ2「連動」─採用と経営を連動させる仕組みをつくる

フェーズ1で現状を可視化したら、次は採用と経営を結び付ける仕組みを構築するフェーズです。

まず取り組みたいのは、採用データを経営の意思決定に活用できる形へ整理することです。応募数や選考通過率、内定承諾率、採用コストといった数値を共有するだけでなく、「なぜこの結果になったのか」という背景まで分析して伝えることで、採用課題を経営課題として議論しやすくなります。

あわせて、採用戦略を定期的に議論する場を設けることも重要です。月次で採用KPIやチャネル別の成果を確認し、現場責任者と改善策を検討する運用を続けることで、小さな改善を積み重ねられます。経営層の関心が低い場合は、採用の遅れが事業へ与える影響を具体的に示すことで、採用への当事者意識を高めやすくなります。

さらに、四半期ごとに採用戦略の振り返りと次期方針を経営へ報告する仕組みを整えることで、採用は「事後報告するもの」から「経営とともに設計するもの」へと変わっていきます。数値だけを共有するのではなく、その背景や次のアクションまで示すことが、戦略的な採用体制の構築につながります。

フェーズ3「自走化と仕組み化」—CRM(候補者情報を管理・活用するシステム)とデータ活用で採用を資産化する

フェーズ2で採用と経営の連携が整ったら、次はその仕組みを継続的に機能させるフェーズです。

このフェーズで重要なのは、候補者データを「使い捨て」にしないことです。多くの企業は年間を通じて多くの候補者と接点を持っていますが、選考終了後は十分に活用されていないケースが少なくありません。過去の辞退者や不採用者、転職潜在層とも継続的な接点を持つことで、毎回ゼロから母集団を形成する採用活動から脱却しやすくなります。

そのためには、候補者情報を一元管理し、適切なタイミングで再アプローチできる採用CRMの活用が有効です。当社が提供するMyTalent CRMは、統合プラットフォーム「MyTalent Platform」の中核機能として、タレントプールの構築からAIを活用したレコメンド、再スカウトまでを一元的に支援します。フェーズ1・2で採用体制の土台を整えたうえで活用することで、その効果をより発揮しやすくなります。

ただし、本当に重要なのはツールを導入することではなく、採用の仕組みを継続的に運用できる体制を構築することです。担当者が変わっても採用品質を維持できるよう、役割分担や運用ルールまで設計しておくことで、再現性のある採用体制の構築につながります。

採用と経営戦略を連動させる「4つの実装ポイント」

ロードマップの方向性が決まっても、実装の段階でつまずくことは珍しくありません。「採用を経営と連動させる」という方針は、具体的には何をどう変えることを意味するのか。この章では、実装段階で人事部長が押さえるべき4つのポイントを解説します。

実装ポイント①:採用ターゲットを「事業戦略から逆算」して定義する

採用要件を、現場の欠員ベースではなく、事業戦略から逆算して設計することが、戦略人事を実践する第一歩です。

まずは、「会社が今後どのような事業を成長させたいのか」「どのような組織を目指すのか」という経営目標を整理します。そのうえで、必要な組織や人材像を定義し、「今採用すべき人材要件」を明確にしていきます。現場の要望だけで採用要件を決めるのではなく、事業計画と採用計画を連動させて検討することが重要です。

また、採用要件は単なるスキルの条件ではなく、「入社後にどのような成果や役割を期待するのか」という活躍イメージまで具体化することも効果的です。活躍する姿を基準として共有することで、面接官ごとの評価のばらつきを抑えやすくなり、選考の質や候補者への訴求力の向上も期待できます。

実装ポイント②:採用パイプラインを「見える化」して経営層に報告する

採用の進捗を「件数の報告」から「採用パイプラインの可視化」へ切り替えることが、2つ目の実装ポイントです。

採用パイプラインとは、候補者が認知から応募、選考、内定、入社へと進む各段階を可視化し、どのフェーズに何人いるかを把握する考え方です。採用状況を継続的に把握することで、将来的な採用充足リスクを予測しやすくなり、問題が起きてから対応するのではなく、先回りした採用活動につなげられます。

また、経営層へ報告する際は、「事業計画に対する採用充足率」「重要ポジションの充足状況」「職種別の採用リードタイムや採用コストの推移」といった指標を共有すると効果的です。数値だけでなく、その背景や次に取るべきアクションまであわせて伝えることで、経営層も採用を経営課題として捉えやすくなります。

実装ポイント③:過去候補者データを採用活動に再活用する仕組みを作る

3つ目のポイントは、過去に接触した候補者を「採用資産」として扱う仕組みを構築することです。

転職顕在層(今すぐ転職を検討している人材)だけを対象にした採用には、現在の採用市場において明確な限界があります。一方、過去に接触した候補者や転職潜在層に対して継続的にコミュニケーションをとり、意向を醸成するアプローチは、競合他社と直接バッティングしない採用経路として機能する可能性があります。

この仕組みを実装するには、まずエージェントや媒体に分散しているデータを自社に一元管理し、再アプローチの可否と優先度を判断できる体制を整えます。候補者への再アプローチには適切なタイミングと文脈が必要です。「以前選考に来ていただいた方です」という文脈だけで連絡するのではなく、「こういう事業フェーズになり、こういう役割で改めてご連絡しました」という具体的な文脈を添えることで、候補者の受け取り方が変わる傾向があります。再アプローチの成否は、候補者管理の精度とコンタクト時のメッセージの内容によって大きく左右されます。

実装ポイント④:採用ブランディングを経営戦略のメッセージと統一する

4つ目のポイントは、採用ブランディングを経営メッセージと連動させることです。

採用ブランディングが担当者任せになっていると、求人票や採用広報、SNSなどの発信内容に一貫性がなくなり、企業の魅力を十分に伝えられません。その結果、採用活動で積み重ねるべきブランド価値も蓄積しにくくなります。

そのため、経営ビジョンや事業戦略、組織文化を採用コミュニケーションに一貫して反映させることが重要です。経営層が発信するメッセージと採用担当者が候補者へ伝える内容が一致していることで、企業理解や入社意欲の醸成につながりやすくなります。

また、採用ブランディングは採用部門だけで完結するものではありません。面接やカジュアル面談、採用イベントなどを通じて現場社員が候補者と接点を持つ機会を増やすことも、一貫したブランド体験の提供につながります。

人事部長が押さえるべきKPI設計

戦略人事を推進するうえで欠かせないのが、採用活動を適切に評価するためのKPI設計です。しかし、多くの企業では「採用人数」や「採用充足率」といった結果指標だけを見ており、改善につながるデータを十分に活用できていないケースも見受けられます。KPIは成果を評価するためだけではなく、採用プロセスのどこに課題があるかを把握し、改善につなげるための指標です。

結果指標だけでなくプロセス指標も管理する

採用活動は複数のプロセスによって構成されています。「採用人数」という結果だけを見ている場合、成果が出なかった原因を特定することは容易ではありません。応募数が不足していたのか、書類選考の基準が厳しすぎたのか、面接辞退が多かったのかによって、必要な改善策は大きく異なります。

そのため、採用活動をプロセスごとに分解し、それぞれの指標を継続的に確認することが重要です。応募数・スカウト返信率・書類選考通過率・面接通過率・オファー承諾率・採用充足率・定着状況を一つの流れとして把握することで、ボトルネックがどこにあるかを客観的に分析しやすくなります。また、採用チャネルごとの成果を比較することで、同じ採用人数でも品質やコストの違いが見え、より効果的な投資判断ができるようになります。

採用KPIを事業KPIへ接続する

戦略人事では、人事部門だけが見るKPIではなく、経営層とも共有できる指標を設計することが重要です。

例えば、営業組織を拡大する計画であれば「営業職の採用充足率」が事業成長へ直接影響します。新規事業を立ち上げる場合には、専門人材の採用状況が事業スケジュールを左右する可能性があります。こうした採用KPIを事業計画と結びつけることで、「採用が遅延している」という事実だけではなく、「事業計画への影響」まで含めた議論ができるようになります。経営会議において採用状況を定期的に共有する仕組みを整えることで、経営層や事業責任者も採用を共通課題として認識しやすくなります。

中長期視点のKPIも取り入れる

短期的な採用成果だけを追うと、採用の質や組織全体の成長がおろそかになる可能性があります。そのため、戦略人事では中長期的な視点で成果を評価することも重要です。

入社後の定着状況・配属後の活躍状況・将来の管理職候補比率・タレントプール登録数・継続接触している候補者数なども、企業によっては重要な管理指標となります。「採用できたか」だけではなく、「採用した人材が事業成長へどのように貢献しているか」という視点で人材戦略を評価することが、戦略人事の本質に近づく考え方と言えます。

まとめ

この記事では、採用機能を経営機能へと変革するための考え方と、人事部長が実践できるロードマップを解説しました。

戦略人事の本質は、採用を「採用数を充足させる作業」としてではなく、「経営戦略を実現する機能」として捉えることです。そのためには、採用KPIの見直しや経営との連携強化、候補者データの活用といった取り組みを段階的に進める必要があります。

一方で、多くの組織では「変える必要がある」という認識はあっても、何から着手すべきかが明確にならず、日々の採用業務に追われてしまいがちです。まずは採用データを可視化し、経営と共通の視点で採用を議論できる環境を整えることが、変革の第一歩となるでしょう。

また、採用体制の変革は人事部門だけで完結するものではありません。経営や現場を巻き込みながら、人材との接点を企業の資産として活用できる仕組みを構築することが、持続的な採用力の強化につながります。

自社だけで進めることが難しい場合は、採用の仕組みづくりや運用を支援する外部サービスを活用することも有効な選択肢です。採用を経営機能として本格的に強化したい場合は、採用CRMを活用した仕組みづくりもぜひ検討してみてください。

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監修者情報

監修 | TalentX Lab.編集部
この記事は株式会社TalentXが運営するTalentX Lab.の編集部が監修しています。TalentX Lab.は株式会社TalentXが運営するタレントアクイジションを科学するメディアです。自社の採用戦略を設計し、転職潜在層から応募獲得、魅力付け、入社後活躍につなげるためのタレントアクイジション事例やノウハウを発信しています。記事内容にご質問などがございましたら、こちらよりご連絡ください。

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