近年、多くの企業では従来から行われてきた一括採用に加えて、通年採用が取り入れられています。
通年採用とは、企業が時期を定めず年間を通じて新卒学生や中途人材の採用活動を行うことをいいます。通年採用は、需要に応じて必要な人材を自由なタイミングで採用活動することが可能です。
この記事では、通年採用が注目される背景と現状、一括採用との違いについて解説し、通年採用のメリットとデメリットをご紹介します。また通年採用を導入するためのステップと、成功のポイントもまとめております。
「通年採用」目次
- 通年採用とは
- 通年採用と新卒一括採用の違い
- 通年採用が注目される背景と現状
- 通年採用を導入するメリット・デメリット
- 通年採用の導入ステップ
- 通年採用を成功させるポイント
- 通年採用を取り入れる企業事例
- 「通年採用」まとめ
本記事では、通年採用の概要から各事項の詳細な内容とともに、実際に一括採用を導入している企業の成功事例についてもご紹介します。また、新卒一括採用との違いについて詳しく解説していきます。
通年採用とは
通年採用とは、企業が時期を定めず年間を通じて新卒学生や中途人材の採用活動を行うことをいいます。
従来の日本企業における人材採用は、新卒一括採用が主流の採用手法であり、卒業予定の学生は毎年3月頃からエントリーを開始していました。その後、6月頃から選考面接が始まり、半年ほどの選考期間を限定して一度に採用活動を行っていました。この新卒一括採用は、日本独自の就職活動のルールであり、学生の本分である学業が就職活動によって支障をきたさないよう、経団連によって定められていたものです。
しかし近年は、海外留学生や海外留学から戻った学生や帰国子女を秋採用で採用したり、中途人材・第二新卒人材を一年を通して採用するなど、採用時期を限定しない通年採用を行う企業が増えています。また、2022年入社以降の就職活動ルールは経団連主導でなく、政府主導で定められていくことが決まりました。終身雇用・年功序列からの脱却や、副業の促進など多様な価値観が日本でも増えている現在、更に通年採用が広まっていくと考えられています。
通年採用と新卒一括採用の違い
新卒学生の採用手法には通年採用と一括採用があります。新卒一括採用とは、毎年決まった時期・期間に新卒学生を対象として在学中に採用選考を一括して行い、卒業後にすぐ入社するといった日本特有の採用手法を指しています。ここでは、新卒一括採用と通年採用の違いについて、「採用時期」と「対象者」の2つの観点から解説します。
採用時期の違い
新卒一括採用と通年採用の違いの1つ目は採用活動時期と入社時期です。新卒一括採用は、同時期に採用活動がスタートする採用手法です。具体的には、3月から各企業の説明会が開始となり、5~6月ごろから面接がスタートするようなスケジュール感です。新卒一括採用の中で内定辞退者が出てしまうと、募集活動の時期が制限されてしまっているため、新たに人員を補充するハードルが高くなってしまいます。
それに反し、通年採用は一年を通じて採用活動を行います。企業が人員を必要としているタイミングで採用活動を行うことができるため、一括採用に比べて、人員補充もしやすいのがポイントです。
対象者の違い
新卒一括採用と通年採用の違いの2つ目は採用の対象者です。新卒一括採用は、一般的に3月に大学を卒業する新卒学生を対象としています。入社時にスキルや知識を学生に求めない分、自社で人材育成していくことを前提としているので、日本で定着している人事制度である「終身雇用」や「年功序列」などと相性が良いといわれています。長期的に人材を育てていく手法として定着しています。
対して通年採用は、新卒者だけでなく、第二新卒を含む中途などの既卒者、海外の学校 を卒業した人、留学生、帰国子女など、対象者が幅広いです。それにより、即戦力人材や、特定のスキルをもった人材などの採用にも力を入れることができるため、選考基準を高く設ける企業もあります。
通年採用が注目される背景と現状
近年、新卒学生の採用手法として、従来の新卒一括採用から通年採用にシフトする動向が見られるようになっています。そのように通年採用が注目されるのは、なぜなのでしょうか?
通年採用が注目される背景
多くの企業が通年採用に注目するようになってきた最大の理由に、人材不足による人材獲得競争の激化があります。
日本では少子高齢化により労働人口が今後ますます減少していくため、人材を確保することは業界や職種を問わず、多くの企業にとって大きな経営課題となっています。そこで、新卒一括採用だけでは十分な人材を確保できないことから、第二新卒など新卒者以外の既卒者含めて幅広く採用活動を行う通年採用の必要が出てきています。
また日本の大学と海外の大学では卒業時期が異なるため、新卒一括採用では海外の大学を卒業する人材や留学生を採用しにくいことがあります。それに留学経験者や海外の大学で学んだ学生は、グローバルな視点を持った優秀な人材が多いと言えます。そこで世界から優れた人材を集めるためにも、通年採用がより好まれるようになってきました。
通年採用の現状
「就職白書」によると、新卒採用の方法・形態として「通年採用」を行っていると答えた企業の割合は、以下のように年々増加していることがわかります。
2020年卒 17.5%
2021年卒 25.1%
2022年卒 27.0%
出典:
就職白書2021(みらい研究所)
https://shushokumirai.recruit.co.jp/wp-content/uploads/2021/02/hakusho2021_20210216-1.pdf
就職白書2020(みらい研究所)
https://shushokumirai.recruit.co.jp/wp-content/uploads/2020/07/hakusyo2020_01-48_up.pdf?_fsi=urTXuj6U
通年採用を導入するメリット・デメリット
では通年採用を導入すると、どのようなメリットが得られ、デメリットにはどんなことが考えられるでしょうか?通年採用による企業側のメリットとデメリット、応募者側のメリットとデメリットそれぞれについて解説します。
通年採用を導入するメリット
企業側のメリット
通年採用では海外大学卒業者や留学生、帰国子女など、新卒一括採用ではアプローチできなかった層に出会える可能性が高まる点が大きめメリットといえます。
また、一斉に多くの学生に対応しなければならない新卒一括採用と比べて、通年採用であれば企業側は時間をかけてじっくりと選考を進めることができるため、企業が定める選考基準にもとづいて丁寧に選考でき、求める人物像を見極めやすくなることもメリットです。
応募者側のメリット
通年採用では、一括採用とことなり応募から選考の期間が限定されていない分だけ、自己分析やエントリーシートの作成、面接対策などの事前準備をゆとりのあるスケジュールで行うことができるのでメリットとなります。
また、従来であれば、一括採用では時期等の要因で応募することができなかった企業にも、通年採用であれば応募することができることもメリットとなります。
通年採用を導入するデメリット
企業側のデメリット
通年採用では年間を通して求人広告を出し、常に選考が行われるため新卒一括採用に比べ採用コストがかかる点が1つ目のデメリットです。
また、通年採用は常に募集と選考が行われる状態のため、新卒一括採用であれば大規模な会社説明会を小数回行っていたところを通年採用では小規模な会社説明の回数を増やして実施するなど、一部の業務においては採用担当者の負担が大きくなる点もデメリットとなります。
応募者側のデメリット
通年採用の場合は企業側が時間をかけて選考を行うことができるため、企業の求めるレベルが高くなることがあり、一括採用に比べて選考のハードルが上がることはデメリットになり得ます。
また、新卒一括採用では就職支援サイトを利用して各社の情報収集を簡単にできますが、通年採用ではそのようなサイトは存在せず、応募者が、一社ごとに採用スケジュールや募集内容を調べる必要ある点もデメリットといえるでしょう。
通年採用の導入ステップ
通年採用にはメリットがあることをご紹介しましたが、通年採用を導入する際の具体的なプロセスを見てみましょう。
採用計画を立てる
ま通年採用を導入する際には、まず初めに、部署ごとにどのようなスキルや知識・情報を持った人材を、いつまでに、何人採用するべきか、採用計画を立てます。新卒一括採用と違うのは、第二新卒なども対象にする場合、中途採用と同様に入社時期が4月に限定されない点です。中途採用などその他採用種別の状況に合わせて、通年採用での採用計画を柔軟に設計できるとよいでしょう。
採用ターゲット(ペルソナ)を設計する
通年採用による採用計画に基づいて期待する知識や経験、求める人物像などについても明確にして、現場と人事それぞれにて共有しておきましょう。これによって、採用するターゲットの人物像(ペルソナ)が明確になります。
通年採用のターゲットはより詳細まで条件を洗い出し、人物像の解像度を高めていくことが重要になります。解像度が低いと人事と面接担当者、現場などさまざまな関係者の中で共通認識をもてず本来であれば採用したい候補者を不採用にしてしまったりすることにつながります。
採用ペルソナとは?採用ペルソナのメリット、設計の流れとポイントを解説
採用・選考方法を決める
次に、通年採用のターゲットに対してどのように求人告知を行うべきか、具体的な採用手法について決めます。どのような求人媒体に掲載するか、説明会やインターンシップの企画、自社のWebサイトへの掲載など、さまざまな採用手法について、費用と効果を考慮しながら検討していきます。
新卒一括採用では大量の求人が集まるために埋もれがちな採用手法も、通年採用では分散するために有効な場合があります。
またエントリーシートや適正試験の実施、面接の方法など、通年採用に適した選考方法についても検討しましょう。
社内の受け入れ体制を整え、内定後・入社後フォローを行う
通年採用では、入社時期にバラつきが出ますが、それぞれの部署や研修担当で受け入れ体制を整えておく必要があります。通年採用による新入社員がスムーズに企業になじみ、業務に集中できるように人事と現場担当者で協力してフォロー体制を構築していきましょう。また、内定辞退に繋がらないように内定辞退防止の施策を検討・実施することも必要です。
下記資料では内定辞退防止に関するお役立ち情報をまとめております。是非ダウンロード頂き参考にして頂けると幸いです。
通年採用を成功させるポイント
通年採用で、希望する人材を採用するためにはどのような点に注意するべきでしょうか?通年採用を成功させる3つのポイントをご紹介します。
人事リソースの確保・体制構築、工数削減
通年採用にすると採用にかかる工数が増加することが懸念されます。
「採用チームを強化する」「採用ツールを活用する」「採用業務をアウトソーシングする」など、通年採用を成功させるためにはリソースの確保や工数削減のための工夫が必要となるでしょう。
採用手法の拡大
通年採用を成功させるためには、リファラル採用、インターンシップなど企業の状況に合わせて採用手法を拡大することが必要になるでしょう。単に母集団の数を追うのではなく、ターゲット層の応募数や承諾率など、より採用に近い数字をKGPIに設定する事も必要かもしれません。
通年採用では企業側・応募者側ともに時間をかけることができるため、リファラル採用やインターンシップからの採用など、よりマッチング精度の高い手法との相性が良い傾向にあるでしょう。
通年採用を行っていることの周知・宣伝
採用媒体や、オウンドメディア、SNS、広告等を使い通年採用を行っていることを求職者に周知・宣伝しましょう。採用広報をうまく活用して、企業のビジネスの本質や、求める人物像や採用ポジション、仕事のやりがいなどを求職者に伝えましょう。
通年採用を取り入れている企業事例
下記で、通年採用を取り入れている代表的な企業をご紹介します。合わせて、通年採用が成功しているポイントもご紹介します。
通年採用事例: 株式会社ファーストリテイリング
大学1、2年生も歓迎しています。また、不合格になっても選考年度が変われば採用に再チャレンジできる環境を設けています。人事面接・キャリアセッションを通過した候補者には「ユニクロパスポート」を発行し、3年以内はいつでも最終面接を受けることができる制度を整えています。
https://www.fastretailing.com/employment/ja/fastretailing/jp/graduate/recruit/?id=tab2
通年採用事例: 株式会社リクルートホールディングス
株式会社リクルートホールディングスでは、2018年から国内グループ9社の新卒採用を統合し、「30歳まで応募可能」「通年エントリー」を設けた「365日通年エントリー」制度を導入しています。
多用な人材を採用し、更にグループ各社の垣根を越えて人材を適材適所に配属することを目的としています。
https://oldrelease.recruit-holdings.co.jp/news_data/release/2018/0117_17824.html
「通年採用」まとめ
若い世代の労働人口が少なくなっていく今後は、労働力獲得の競争がますます激化していくと予想されます。新卒一括採用のような従来の決まりきった方法にこだわるのではなく、通年採用のように柔軟な採用手法に目を向けることで、より良い採用活動をしていきましょう。
監修者情報
監修 | TalentX Lab.編集部
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