労働人口が減少傾向にある昨今、特に介護・福祉業界における人材不足は深刻さを増しており、今すぐ転職したい「顕在層」へのアプローチだけでは採用目標の達成が困難になりつつあります。
医療・介護・保育・教育事業を全国的に展開する株式会社ニチイ学館(以下「ニチイ学館」)様では、この課題に対し、AI採用MAサービス「MyTalent」を導入し、教育講座の修了生や選考辞退者、アルムナイ(退職者)といった「過去に何らかのつながりがあった人材」を資産化し、中長期的な関係構築を行うことで、導入から1年9か月で400〜500名規模の採用成果を生み出しています。
今回は、同社の採用戦略を推進する千石氏に、独自性の高いタレントプール活用の裏側と、成果につなげた秘訣について伺いました。

株式会社ニチイ学館
・従業員 :87,237名(2024年3月末時点)
・事業 :医療関連事業、介護事業、保育事業、ヘルスケア事業
・取材対象者:人財開発事業部 シニアエキスパート 千石友明 氏
資格はあるが働いていない「潜在介護士」へのアプローチとして着目した、「タレントプール採用」の可能性
貴社がタレントプール採用を導入した背景と、当時抱えていた課題をお聞かせください。
千石氏:
ニチイ学館は医療事務の教育講座からスタートした会社であり、「教育から就業までを一貫してサポートする」という独自のビジネスモデルを展開しています。介護領域においても多くの講座修了生を輩出していますが、課題となっていたのは「資格を取得しても現場で活躍されていない方が一定数いる」ということでした。いわゆる「潜在介護士」と呼ばれる方々で、他業界で働いている、あるいは家庭の事情で就業が難しいなど理由は様々ですが、この層への適切なアプローチが不十分でした。
教育講座以外でも、「過去の退職者」や「選考辞退者」など、採用活動で何らかのつながりがあった方へ各拠点で連絡を取っていましたが、情報が分散してしまい、効率的な管理ができていませんでした。そこで、これらの方々を一括してタレントプールとしてデータベース化し、一元管理することで、過去の繋がりを自社の「資産」として活かす仕組みを構築したいと考えたのです。
現在のタレントプールには、どのような属性の方が登録されているのでしょうか。
千石氏:
大きく分けて、「教育講座の修了生」が約4割、「選考・内定辞退者」が約4割、残りが「アルムナイ(退職者)」や「リファラル」「キャリア登録者」という構成です。 一般的な採用活動では出会えない、弊社独自の「講座修了生」や、一度は接点を持ったものの入社に至らなかった方々を含め、広い範囲の方々を「未来の候補者」と捉え、アプローチしています。
▼ニチイ学館様のタレントプール採用導入背景について、詳しくはこちらもご覧ください
URL:https://mytalent.jp/lab/case_nichiigakkan/
累計400名以上を採用した秘訣―「個別最適化された情報」×「人の温度感」で、介護業界の“今”をお届け

タレントプール採用は単にリスト化するだけでなく、その後の関係構築が重要だといわれています。「MyTalent」を活用してどのような情報を発信しているのでしょうか。
千石氏:
介護業界全体の課題の一つに、介護業界に対するネガティブなイメージが一部存在していることが挙げられます。しかし、直近では介護報酬改定による処遇改善や、DXによる業務効率化など、業界が着実に進化を遂げています。そのため、特に潜在介護士の皆さまに対して「介護業界の現在の姿」を正しく伝え、一度は離れた「介護職」という道と再び向き合うきっかけを提供することこそが、我々の責務だと考えています。
「MyTalent」を通じて、具体的には2つの軸で情報を発信しています。1つは、制度や報酬などの「働きやすさの土台(ハード面)」となる情報です。例えば、一度退職しても再入社しやすい制度や、有給休暇に類する特別休暇の付与など、「今のニチイ学館」を事実ベースで伝えます。もう1つは、現場職員の声や復職者の事例といった「ソフト面」の情報です。実際に働いている職員がどのような想いを抱いているか、ハード面とソフト面をバランスよくお届けすることで、働くイメージを具体的に持っていただきたいと考えています。
コンテンツを配信する上で、工夫されている点はありますか。
千石氏:
タレントプール登録者の属性に応じた「情報の出し分け」です。 例えば、教育講座の修了生には「受講後一定期間内の入社で受講料キャッシュバック」といった特典情報を定期的に周知し、アルムナイには再入社制度の詳細を案内しています。情報が錯綜する現代において当社が目指しているのは、「働きたい」と思ったその瞬間に最適な情報が手元にある状態をつくることです。全員に同じ内容を一斉配信するだけではなく、個々の状況に合わせて情報をカスタマイズして届けることが、タレントプール採用の意義だと考えています。
システムによる自動化だけでなく、人の手によるアプローチも組み合わせていると伺いました。
千石氏:
「システムに任せる部分」と「人が介在する部分」を明確に分けるようにしています。 「MyTalent」を活用することで、誰がどのメールを開封し、どのページを見たかという興味関心の度合いが可視化されました。そのデータを元に、熱量が高まっている方に対して採用担当者が電話で直接アプローチをする、あるいはその方の状況に合わせて採用担当者の温度感が伝わるメールを送るなど、デジタルの効率性とアナログの熱量を融合させた運用を行っています。 その結果、導入から約2年で400〜500名規模の採用実績に繋がっています。
「農耕型」採用への不安を解消したのは、採用成果や候補者動向の“可視化”による手応え
素晴らしい実績が出ている一方で、「MyTalent」導入当初、「タレントプール採用」という新しい手法への不安はありませんでしたか。
千石氏:
タレントプール採用はいわば「農耕型」の採用活動です。種をまき、水をやり、収穫するまでには時間がかかります。導入当初はどうしても「今月何人採用できるか」という短期的な数字ばかりを追ってしまっていたので、工数をかけて配信コンテンツを作成し、属性ごとに細かく出し分け、配信頻度を上げるという一連の動きが、本当に成果に結びつくのかという一抹の不安や葛藤を抱えていたのは事実でした。
その不安はどのように解消されたのですか。
千石氏:
「MyTalent」を導入してからまもなく2年が経ちますが、タレントプールにご登録いただいてから一定期間経過した候補者様のご入社が増えてきており、また、コンテンツ配信によって候補者の方がメールをクリックしたり求人ページを閲覧する等の動きが可視化されたことで、中長期的に「過去のご縁とつながる」価値や意義を実感できたのが大きいです。応募を待つ「待ちの採用」から、企業側から情報を届ける「攻めの採用」へ転換できたことで、心理的な余裕も生まれました。
さらに、たとえ今すぐ採用につながらなくても、介護業界の正しい現状を知ってもらう「広報活動」としても重要な意味があると捉えています。中長期的な視点で候補者とつながり続けることが、結果として将来の採用へ実を結ぶ。その確信が得られたことで、視座を切り替えることができました。
採用活動は事業推進のエンジン―企業の“リアル”と候補者のタイミングを結ぶ「タレントプール採用」が、事業成長の柱になると信じて
人材不足が深刻な介護・福祉業界において、タレントプール採用はどのような力を発揮するとお考えですか。
千石氏:
採用において、一度は出会いがあったものの、何らかの理由やタイミングの不一致で当時はご縁がなかったという方が多くいらっしゃいます。特に介護業界は、そのような方々に対して企業側から積極的に働きかけなければ、再び関心を持ってもらう機会が少ないのが現状です。人々にとって、働く条件やキャリアのタイミングは日々変化します。それらと当社の状況がマッチした瞬間にアプローチができるタレントプール採用は、現代の採用活動において必要不可欠な機能であると実感しています。
たとえすぐに応募に至らなかったとしても、現在の介護・福祉業界のリアルを直接お届けできるシステムとして育てていくことで、業界全体の発展にも寄与すると信じて運用しています。
最後に、貴社の今後の展望をお聞かせください。
千石氏:
採用活動を、単なる「欠員補充の作業」にしたくないという強い想いを抱いています。採用は、事業を推進するための重要なエンジンの一つですし、事業成長に不可欠なピースを埋める活動として推進してまいります。また、採用というと「将来の入社者」に焦点が当たりがちですが、本質的な土台になるのは、「今働く従業員」がいかに働きがいをもって活躍できているかどうかです。魅力的な組織があってこそ、良い人材が集まります。採用を通じて組織を創り、組織の力がまた採用を加速させる、この循環をつくることこそが、経営と採用が密接に関わる意義ではないでしょうか。
タレントプール採用においても、従業員が活躍し、事業が成長している「ニチイ学館の今」を伝える場として位置づけていきたいと考えています。「中長期的に会社を深く理解して入社した人材は、定着率も高いのではないか」という仮説のもと、今後はタレントプール経由入社者の定着率の分析・改善も強化していく予定です。私たちもまだ道半ばです。新しい手法に対して「食わず嫌い」をせず、まずは「やってみる」。その挑戦の積み重ねが、変化の激しい時代に対応できる「強い採用力」をつくると確信しています。
編集後記
ニチイ学館様の事例で特筆すべきは、自社独自の「資格講座の修了生」という潜在層を「資産」として捉え、「MyTalent」のテクノロジーと人のあたたかみのあるコミュニケーションで再びつながり、活性化させている点です。千石氏が語った「中長期でつながり続けることの価値」は、人材獲得難易度が高まる現代において、非常に重要な示唆です。自社にはどのような「眠れる資産」がいるのか、まずはそこを見直すことから、次世代の採用戦略が始まるのではないでしょうか。
採用候補者との中長期的な関係構築手法や、候補者毎にカスタマイズしたアプローチに関心のある採用担当者様は、ぜひTalentXまでお問い合わせください。
▼タレントプール採用×採用ブランディングの掛け合わせによって自社ブランドを育てる、三井住友海上火災保険株式会社のセミナーレポートはこちらから
記事URL:https://mytalent.jp/lab/report_ms-ins2/
▼タレントプールとは何か、タレントプール採用を導入するために何から始めればいいか気になる方は、以下の「タレントプール採用の教科書」も併せてご覧ください。







